« コロッケ傷害事件3 | トップページ | よってくだんのごとし »

2003/08/02

コロッケ傷害事件4

セドドーはコロッケが山盛りの大皿を、モクドーが原稿を書いている机の上にドンと置いた。

「うーん、たまんないねえ、これだよこれこれ」モクドーは素早く一個をとってほおばる。

コロッケの表面には微妙に焦げ目がついている。強いバターの匂い。バターをタップリひいたフライパンでコロッケを焼いたものだった。

セドドーはヤマザキの食パンの袋とウスターソースを持ってきていた。その食パンの袋を無造作に破り、一枚にコロッケをのせ、ウスターソースをたっぷりかけ、もう一枚をかぶせると、アングとかぶりついた。

「それでだね、コロッケのこの食べ方だよ、冷たいコロッケをあっためて食べるのね」モクドーが口をモクモクさせながらいった。

「それは、五木寛之もやってましたね」とセドドーもモグモグ。
「そうそう、吉行淳之介の贋食物誌のコロッケのとこに出てくるよね……五木寛之のエッセイを読んでいて、思わず笑い出したことがある、ってやつさ」
「テレビ局から電話がかかってきて、私の得意料理というようなタイトルの番組に出てくれといわれる」
「そこで五木は”得意な料理はあります”と答えるね」モクドーは三個目のコロッケをとる。
「どういうのでしょうかとテレビの人にきかれて、五木は説明する。テーブルの上にトースターを出す。その前に、前の晩にコロッケを買っておかなくてはならない」
「一晩おいて冷たく固くなったコロッケを、両の掌のあいだで、トースターに入れられる厚さに押しつぶす。それをトースターに入れ、レバーを押しさげる」
「こういう話、いまのオーブントースターを使っている連中にわかりますかねえ」
「わからんだろうねえ、でも、とにかく、そうやって焼くということがカンジンなんだよね」モクドーは五個目のコロッケをとる。
「焼きあがったコロッケを皿にうつし、ソースをかけて食べる」
「あっ、セドドー、おまえペースはやすぎるぞ、いくつ食べたア」
「そんなことありませんよ~、社長こそ」
アヤシゲ新聞の社長モクドーと専務セドドーのコロッケ上に暗雲ただよう。ああ、なんとあさましき新聞社なのでありましょうか。(つづく)

|

« コロッケ傷害事件3 | トップページ | よってくだんのごとし »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: コロッケ傷害事件4:

« コロッケ傷害事件3 | トップページ | よってくだんのごとし »