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2003/08/07

コロッケ傷害事件5

 吉行淳之介の「贋食物誌」は昭和48年(1973年)12月11日から翌年の4月10日まで「夕刊フジ」に連載された。ちょうど100回分。山藤章二のイラスト。74年10月新潮社から単行本になり、78年新潮文庫。

………
 あの二十五円くらいのコロッケは、うまい。なまじ、値段が高くて肉の多いものは、私の趣味には合わない。ジャガイモが大部分で、ときどき肉ともおもえぬ小さなコリコリした粒が歯に当たるものあよい。
 この小型判のコロッケに、ソースをだぶだぶかけて、熱いめしのオカズにする。
 ソースはウスター・ソースにかぎる。トンカツ・ソースとかいう、甘くてドロドロしたものは戦後の産物で、昔はああいうものは存在していなかった。
 私がそういう見解を述べると、ある食通(とくに名を秘す)が反対意見を出した。
 「そんなのはダメだ。コロッケというのは、まるくふわっとフクラんで、中身がとろりとしたものでなくちゃ、食べられたものではない」
 そういうものに旨いのはあるが、私が問題にしているのは「コロッケ」のことで、その食通のいうのは、しいていえば「クロケット」とでもいうものか。
 こちらが塩せんべいの話をしているときに、生クリームを使ったケーキを礼賛しているようなもので、だから食通は困る。
………

 吉行淳之介は、こう述べる。しかし、それから20年以上もたって、まだ佐藤隆介氏は「そもそもコロッケはジャガイモで作るものと思うほうが、私にいわせれば間違いである。本来は安上がりの庶民のおかずどころではなく、非常に手の込んだ本式フランス料理の一品なのだ」というのである。「こちらが塩せんべいの話をしているときに、生クリームを使ったケーキを礼賛しているような」愚がくりかえされる。

 佐藤隆介氏は池波正太郎を「師」と呼んではばからない人だ。そして、………「気に食わないものが出たら、お膳をひっくり返せ。さもないと一生うまいものは食えないぞ」と、池波正太郎は教えている。その教えを早いうちに実行した………とまでいう。すでに述べたが、この引用の仕方は、間違っている。そんな「教え」は佐藤隆介氏の勝手な解釈にすぎない。

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