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2005/01/28

ウソつき主婦

おれは、あまり本を買わないし持ってない。おれの個人史でいうところの第一婚期、つまり1回目の結婚生活の25歳ぐらいから40歳ぐらいの時期は、本をタップリおける空間のある家を持っていたし、めちゃくちゃ買って読んだ。しかし、その生活にオサラバしたあとは、身軽。

一冊の本を何回も読む。そのなかに川上行蔵さんの『イモめし時代の雑記帳』がある。1982年、健友社発行。古書店によく安く出回っている本だ。この本は軽いエッセイなのだが、食文化について示唆に富んだ内容で、いまもって新鮮である。ということは、そのあと食文化研究の分野ではロクな学者が出てないということだが。

川上行蔵さんは、食文化史上、地味だが大きな功績を残している。本でいえば彼の編著である『料理文献解題』ということになるが、この書は、彼が主宰した料理書原典研究会の成果であり、彼の大きな功績とは料理書原典研究会を主宰することで、その道を開いたことだ。

『イモめし時代の雑記帳』で「巻末によせて」を書いている平田萬里遠さん、有名人では「なべや」の福田浩さんなど、地味だが日本食文化史研究上欠かせない料理書原典研究の人材が育ったのも川上さんの功績だろう。江原恵さんも、独学で漢文を勉強し原典を解読していたが、やはり川上さんに直接会って教示を得ている。

最近また、『イモめし時代の雑記帳』をパラパラ見ていたら、おもしろい話があったので思わず笑ってしまった。「食習慣の転換」のなかで、「食事というのはとかくみえを張りたがるものである」「栄養研究の必要上の調査をしようと思って、奥さん方に聞いても、教養ある奥さん方は笑いにまぎらして自分の家の常食についてはお話にならぬ。教養のない奥さんは事実以上の高価な献立を申し立てられるのであって、結局栄養調査というのはできないのである」

食のマーケティングで、主婦の購買意識や行動などの調査分析をしたことがある人なら、このテのことは誰でも経験しているのではないか。

こまったものだ、主婦はウソをつく。直接の面接調査でも、堂々とウソをいう。データは、まったくあてにならない。が、それでひっこんでいては、マーケッターはウソつき主婦に負けたことになって商売にならないから、いろいろなテで真相にせまる。

おれが1970年代から長いあいだ組んでやっていたマーケッターは、いまではリッパなコンサルタントになっているが、1970年代のかけだしのリサーチャーのころは、ゴミ収集の日に出るゴミ袋を収集車が来る前にクルマに積んでとってきて、あけて調べることまでしていた。彼だけではなく、ほかのリサーチャーもやっていたが。それで、あるていど調査結果のデータと実態とのあいだの「誤差(つまり主婦のウソつき度)」に見当つけることをしたのだ。

「ふだんどこのスーパーで買い物しますか」という類の質問には、ウソつき主婦は、実際にふだん利用しているスーパーよりワンランク上の店舗で多く買い物しているかのような回答をする。ところが、そのゴミ袋に入っているスーパーの買い物袋は、その回答とは違う実態を示す、というようなことがあるわけだ。

とにかく、プランニングのときは、得たデータや情報のなかに真相があるのではなく、ちがうところに真相があると考え、そのポイントを見つけるのが腕のみせどころ。「偏差値」というのも、似たような考えのデータで、得たデータを、そのままつかうのではなく、母体の平均値や傾向値との偏差を求める。

NHKの言っていることがホントウか、朝日新聞の書いていることがホントウか、読売新聞が書いていることがホントウか、なんていう議論はじつにオカシイ。それぞれデータや情報がくいちがっている場合は、そのなかのどれが正しいかではなく、どれもウソで大事なことや真相は別のところにある、発表されてないところに目をつけるのがジョーシキだろう。ましてや、政治家やマスコミなんて、ウソつき主婦以上に信用ならない連中なのだから。どっちが正しいかなんていう議論そのものがウソにハメられる道である。

と、話は、おもわぬ方向へ転がってしまった。

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