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2005/03/10

悩ましい「優秀な経営コンサルタント」

ときどき、というか、ちかごろ増えているように思う。いわゆる下町の大衆食堂で出すものが手づくりの「家庭料理」ではなく近所の店から買ってきたものや冷凍調理品であると、ガッカリする人がいるようだ。そういうひとは、もちろん、大衆食堂にとっては「新参者」だが。

これはどこか筋違いカンチガイというものだろう。そんなに手づくりの「家庭料理」がスバラシイ食べたいものならば、いわゆる下町の大衆食堂まで出かけるカネとヒマで、自分の家庭でつくればよいのではないかと思う。いわゆる下町の食堂まで出向いてそれを求め、ないからと食堂を非難するのは、おかしい。その食堂は、これまで、そういう「手づくりファン」に支持され生きのびてきたわけではないはずだ。

いわゆる下町というのは、昔ながらの手づくりの家庭料理の味を続けているというイメージを描くのは勝手だが、それは必ずしも事実ではない。「外食」と「中食」また「惣菜屋」が古くから発達していたのが、いわゆる下町で、「手づくり内食」の伝統は「山の手」のものだ。それは、ちょいと戦前や明治大正の話を読めばわかることだ。

それからたとえば、最近は、にわかホッピーブームだが、あれは、むかしたとえばおれが1962年上京して初めて飲んだころのホッピーはそういうものだったが、最初からジョッキに注ぎきりで出てくるのがフツウだったのだ。ひどいときは、ぬるい状態のこともあった。それが「戦後昭和」というものだ。

それが最近の「昭和レトロ」とかで、いわゆる下町の大衆食堂でホッピーを飲み、ジョッキに注ぎきりのホッピーが出てくると、懐かしがらずに文句を言ったり嘆いたりするひとがいる。「レトロ趣味」といいながら、それをよろこばない。

昭和レトロを求めながら、いまふうにマーケティングされた商品やサービスを求める。これは大いなる矛盾だと思う。しかし、「昭和レトロ」ブームそのものがマーケティングされたものである現状があるから、それも当然なのだろう。

問題は、本人が、マーケティングされた行為をしているのに、そうは思わずカンチガイして、自分はよい趣味をしていると思い込んでいることだ。そういう思い込みによって、せっかく残っていた地域性や「昭和レトロ」は、ナマケモノとして非難される。どうやら下町の人間は、すごい職人仕事をやる人でなければいけないらしい。

そういうイメージをうえつけたメディアも悪いが、近年の、いわゆる下町ブームの食べ歩き飲み歩きは、そのほとんどは「B級」といわれるものだが、歴史的社会的視点に欠け論理的思考を怠ける、「典型」ともいえる日本人の姿が顕著であるように思う。

前にも書いた。チンで仕上げたおかずが出ると文句をいうひとがいるが、昔から大衆食堂でめしをくってきたものにとっては、チンが導入されただけマシなのである。ナニゴトも、そのように歴史や社会の地域性のなかで呼吸している、その呼吸に、もっと思いをはせるべきだろう。

いわゆる下町酒場や大衆食堂を、「優秀な経営コンサルタント」の視線で食べ歩き飲み歩く姿は、いかにも悩ましい。そうなのだ、みんな経営コンサルタント、飲食店経営コンサルタントの「先生」になってしまったのだ。

こういうこと書くと嫌われて、本が売れなくなるから、なるべく書くなといわれたことがあるのだけど、書いちゃいました。オリコウなイイ顔していてもしょうがないもんな。ああ「先生」、あなたはエライ!

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