悩ましい「味」と「味覚」
拙著『汁かけめし快食學』では、「旨み」と「コク」が、汁かけめしを把握する大切なポイントになっている。
5月16日の日記「積み木の選び方」にも書いた、『汁かけめし快食學』を教材にしている学生さんからの質問にも、「旨み」について質問があって、ほかの方からも質問のメールをいただいている。
「コク」は味覚の表現だから、あまり問題はないのだが、「旨み」は、長いあいだ味覚表現として使われてきて、かつ最近10年ばかりのあいだに「味」として不動の地位を獲得している。つまり「旨み」は、「味」と「味覚」の両方を表現しうるヤヤコシイ言葉になってしまったのだ。
しかも、いま「コク」は味覚の表現だから、あまり問題はないのだが、と書いたが、近年は「コク」と「旨み」が非常に密接な関係で表現されるようになったので、「旨み」を理解することが「コク」の理解にも欠かせなくなっている。
とにかく、いまだ食の本を書いている人たちのあいだですら、「味」と「味覚」のちがいが自覚されてないというか認識されてない状況もあるなかで、この一つの言葉で、「味」も「味覚」も両方表現できるというのは、かなり困ったものなのだ。
とりあえず、「旨み」を「味」として整理し、かつ「味」と「味覚」のちがいを図式的に整理しているWebページをごらんいただき、「旨み」は「旨み」という「味」なのであるという理解をしておいていただきたい。日本うま味調味料協会なる団体まであるのだ。
http://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/index.html
なお、この図表では、「おいしさ」の味覚に占める、「食習慣・食文化」が過少に評価される危険があるので注意していただきたい。
おれはこの説に全面的に賛成という納得をしてないので、『汁かけめし快食學』ではファージーに、「味覚」と「味」を包括できるように、アイマイな説明にしている。
『食の文化』シリーズ(味の素食の文化センター発行、農山漁村文化協会発売)の、いずれの巻かで、「旨み」を「味」とする詳しい論文があったように記憶している。いま手元にないので確かめられないが。
http://www.syokubunka.or.jp/doc/kouza/index.html
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