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2005/08/01

食の「風俗」と「文化」

幻堂出版の『ナンザツ7 何の雑誌第七号』に三本美治さんの漫画「ゴミ・ウォーズ」がある。主人公の清掃作業員の「俺」は、この仕事にとても向いていると思っている。その理由の一つが、この仕事をしていても「人々が俺に関心を持っていないので、誰にも気兼ねせず人間観察できるからだ」

そのコマでは、彼が清掃している。そばで、女の子が「新しいビデオ持って来た」、オバサンが「いいの いいのー 借りてー」、別の女の子が「私 スカパーから録った」 つまり、冬ソナブームの光景である。

「そこで俺は ある事に気がついた」
「人はコミュニケーションをとらないと生きていけない」
「ブームとは人の経済活動を円滑にする為のツールでしかない」

「だからそれを 過度に評価するのも」と。このコマでは、テレビの「くめ」という名らしいキャスターが「韓国の文化が 正当に評価される事は素晴しいです」

「批判するのも どこかズレている」と。このコマでは、先ほどのビデオを借りたオバサンが見ているそばで、その亭主が「恥ずかしくないのか 何がヨン様だ」と怒っている。

つぎのコマで「お父さんが 同僚誘って女のコ居る店に行くのと同じ事である」と。
そしてつぎのコマで、「特に意味は無い」と、俺は自転車に乗って家へ帰っていく。

「人はコミュニケーションをとらないと生きていけない」「ブームとは人の経済活動を円滑にする為のツールでしかない」「だからそれを 過度に評価するのも」「批判するのも どこかズレている」「お父さんが 同僚誘って女のコ居る店に行くのと同じ事である」「特に意味は無い」

この話しは、80年代のグルメブーム以後の、食べ歩きや飲み歩きの「外食ブーム」と、本質的に同じだ。ようするに、とくに近頃の「B級グルメ」といわれる、安物外食ネタの分野も、けっきょく、安いうまいよい飲食店はドコにあるか、知っているということである。それは、よく玉の出るパチンコ屋はどこにあるか、とか、可愛いオンナのコがいるヘルスやキャバクラはどこか、外見からよいオンナのコがいる店を判断する方法といった、風俗ネタと同じであり、それ以上でも以下でもない。

そして、そういう本というのは、「エッセイ」という体裁をとっているにせよ、ほとんどが「風俗」の視点のものである。本によっては、風俗ガイドとしての要素をとったら、まったく体裁をなさないものも少なくない。

ようするに安物外食ネタは、最近では、受けのよさで「経済活動を円滑」が期待できるものとして、存在する。「食文化」の視点で、実態や本質に迫ろうというものではない。そして読者も、食文化の実態や本質より、本の情報をネタに、自分の「外食体験」との共感あるいは反感のコミュニケーションを楽しめばよいのだ。これは、近頃ハヤリの下町ネタについても、いえるだろう。下町ブームで、下町文化が「正当に評価」されたわけではない。

ほかに「特に意味は無い」

食の文化としては、ほとんど意味は無いし、無かった。実際に、80年代のフラメシに始まり、イタメシ、エスニック、ラーメン、カレーライス、そば、さぬきうどん、大衆酒場、立ち飲み……ようするに経済効果が期待できそうな分野を追い掛け回してきただけである。この動きは、食の文化とは、なんら連動しない。

しかし、モンダイは、「食」について発言しながら、発言者自身が、「風俗」の視点と「文化」の視点を混乱することだ。その結果、「お父さんが 同僚誘って女のコ居る店に行くのと同じ事である」つまり「自分の好きなモノがある店」の話が、ドえらい「食文化」の話になってしまう。やれやれ。ま、日本は「食文化」を意識しだして、まだ30年ぐらいの黎明期だから、仕方ないだろう。ようするに、安直にエラソウに知ったかぶりしないことだな。

しかし、こういう三本美治さんの漫画が載る「ナンザツ7」は、なかなかのものだ。
また、三本さんは、「ドイツ三本」の芸名で、紙芝居芸などに取り組んでいるらしいが、なかなかのものらしい。見てみたい。

「ナンザツ7」は、こちら。
http://homepage2.nifty.com/entetsu/siryo/nanzatsu0507.htm
この三本美治さんの漫画『テロル』、見たいなあ。
http://mimi33.com/star/0001mitsumoto/

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コメント

暑いですね。夏眠から目覚めつつあるのですか。ワタクシは喪中です。家頁ってHPのことですな。ま、ガツンとやってください。

投稿: エンテツ | 2005/08/07 22:38

エンテツさん、暑いですね。少しずつ夏眠から目覚めつつある幻堂です、まず手始めに6年間ほったらかしていたHPを作成中! 今月末にはお目見え予定、ブログの時代にアナクロな家頁ですよーっ。
三本美治さんの漫画はもっともっと評価されてしかるべき作品なのだ。パワーで押し切るドイツ三本紙芝居芸もいかがわしくて見事。本当に「テロル」は傑作ですよ。

投稿: 幻堂 | 2005/08/06 21:38

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