« 欧米型の食生活って、なんじゃらほい | トップページ | はあ、やれやれ泥酔記憶喪失疲労困憊 »

2005/10/18

東京に暮す

ガイジンが見た日本あるいは日本人に関する本はたくさんある。なかでも、キャサリン・サムソンさんの『東京に暮す 1928-1936』(大久保美春訳、岩波文庫94年)は、なんど読んでもオモシロイ一冊だ。

谷根千あたりに住み、日本人が気づかない日本のよさを知っているフリをし、浪曲も知らないで能や歌舞伎だけで日本文化をオシャベリし、ヤキトンも食わずに寿司や懐石料理や茶だけで日本料理の美しさハシをあやつる所作の美しさをオシャベリし、あろうことか、ハシの持ち方の悪い日本人は下品な人であるかのようなオシャベリをし、能のすばらしさがわからん日本人は愚か者であるかのようなオシャベリをし、職人のシゴトをもっと大事にしなさいなどと、日本人にむかって説教くらわすガイジンどもの書いたものとは、かなりちがう。

1928年は昭和3年だから、このころの「食欲」がてんこ盛りの林芙美子の『放浪記』と同時代だ。キャサリンは、イギリス人1883年生まれ。1909年結婚し長男長女を育てる。ところが、どうやら不倫か? 27年離婚し、外交官だったジョージ・サムソンの赴任地日本に来て、28年東京の英国大使館で結婚式をあげるのだね。地球を駆け実る恋、といったところ。そのへんから、もうこの方は、ちがうのです。

とにかく、第二章は「日本の食事」だ。
「 お百姓さんがご飯をかき込む姿は、戸を一杯に開いた納屋に三叉(みつまた)で穀物を押し込む時のようで、大きく開けた口もとに飯茶碗を添えて、箸をせわしく動かしながら音をたててご飯をかき込みます。これがご飯をおいしく食べる唯一の方法なのです。ご飯というのは体中の隙間を埋めつくす位たくさん食べておかないとまたすぐにお腹がすいてしまいます。労働者とそれ以外の日本人との間に食べ方の違いはありません。誰でも同じように食べます。その時には、イギリスのポートワイン鑑定人のような非常な集中力が必要とされます。話に気をとられてはいけません。私は今までマカロニを上手に食べる人が一番見事な食べ手と思っていましたが、迅速にきれいに食べるという点ではとても日本人や中国人にはかないません。」
ま、彼女は、必ずしもこういう日本人の食べ方をほめているわけじゃないが、上品下品の価値観をあいだにはさむことなく、異文化をよく観察し公平に述べている。
そして、こんなことも書いている。
「 田舎の小さな食事処で簡単に食事を済ませたい時に知っておくと便利な食べ物があります。一つは親子丼で、もう一つはこってりとしていてとてもおいしいうな丼です。胃腸が丈夫ならご飯の上に鰻の蒲焼をのせたうな丼ほどおいしいものはありません。」
おおっ、ぶっかけめし礼讃!うな丼が、いまほど高級品ではなく、上流の伝統的な日本文化は、丼ものを下賎のものとしていたころの話だ。キャサリンさんも丼にかぶりついてガシガシ食べたのか。

このような女性と結婚したジョージ・サムソンさんは、楽しい人生だったろうなあと思う。

それから、これは、日本が戦争へむかってすすみ、しだいに日英関係もギクシャクするころの話なのだが。けっきょく日本は国際相互理解のチャンスを次々とつぶし戦争へ向かったのだな。そういうビョーキは、まだ直っていないから、またおなじ繰り返しさ。

|

« 欧米型の食生活って、なんじゃらほい | トップページ | はあ、やれやれ泥酔記憶喪失疲労困憊 »

コメント

ま、小泉もいっているように、日中関係は靖国問題だけじゃないはずだし、もちろん尖閣問題だけじゃないわけで、あたかもそういう「点」に問題があるかのごとき煽りをするメディアの報道にイチイチ過剰な反応をし、右往左往しないほうがよいような。

投稿: エンテツ | 2005/10/20 08:05

>靖国参拝を見る限り、「一方的」ではないような。

>そんな気がした(笑

ん?
てことは「靖国」に関して中国側が国際相互理解や日中友好のために
何か妥協してるってわけですかね...

そんな気はしませんけど...うふふふ。

投稿: 吸う | 2005/10/20 06:14

>今も日本側だけが一方的な「日中友好」や「日韓友好」なんて国際相互理解

靖国参拝を見る限り、「一方的」ではないような。

そんな気がした(笑

投稿: ブッシュドクター | 2005/10/19 22:55

そんな気がしただけ。

今も日本側だけが一方的な「日中友好」や「日韓友好」なんて国際相互理解
やってるから竹島乗っ取られたり、尖閣諸島も取られそうになってるんすよ。

そんな気がしますな。

投稿: 吸う | 2005/10/19 22:45

>pfaelzerweinさん

キャサリン・サムソンさんが祖母だったら、私は、このようなうまい文章を書く、もうちょっと上品な人間になっていたかも知れませんなあ。

彼女の父親は、登山家としても有名だったらしく、彼女も登山を好み、この本の第12章は、「日本アルプス行」です。

投稿: エンテツ | 2005/10/19 11:14

>あの当時、国際相互理解なんてやってたらフィリピンやインドネシアみたいになってましたよ。

あらまあ、その断定、お詳しいようだけど、その根拠は?

投稿: エンテツ | 2005/10/19 01:03

あの当時、国際相互理解なんてやってたらフィリピンやインドネシアみたいになってましたよ。

投稿: 吸う | 2005/10/18 16:14

キャサリン・サムソンって、エンテツ・サムソンさんのお婆さまでいらっしゃいますか?

上の文章も訳も素晴らしいですね。「ポートワイン鑑定人のような非常な集中力」、我武者羅に食べる。上海は、ご存知なのかな?この辺の差も指摘されているともっと面白そうです。

「体中の隙間を埋めつくす位」、この方はご自分で実行していたのでしょう。

投稿: pfaelzerwein | 2005/10/18 15:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30930/6455407

この記事へのトラックバック一覧です: 東京に暮す:

« 欧米型の食生活って、なんじゃらほい | トップページ | はあ、やれやれ泥酔記憶喪失疲労困憊 »