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2005/12/20

アルコール添加の清酒

清酒の原材料表記に「醸造アルコール」があるものを、「アル添酒」という。これは、純度の高い醸造アルコール、無色無臭の甲類焼酎のようなものと思えばよいと思うが、それを清酒の製造過程で10%以下の割合で添加したものだ。たとえば、原材料名に「米・米こうじ・醸造アルコール」とあるのがそれで、「米・米こうじ」だけの「純米酒」と区別される。正確には、「純米酒」の原料米は、精米歩合が70%以下、つまり玄米の外側30%を削り落として精米したものでなければならない。また「アル添酒」は、糖類などを添加したいわゆる「三増酒」とも区別される。

アル添酒は、最近の純米酒ハヤリの傾向のなかで、あまり評判がよくない。純米であればよい、アル添はニセモノという風潮もある。ここにも短絡日本人の知ったかぶりが露呈していると思うのだが、ようするに大部分は、よくわからない急ごしらえの「純米酒派」なのであり、そのことについては、今日はふれない。おれは、三増酒については清酒からはずして「混合酒」「混成酒」「合成酒」など、つまり清酒風飲料酒が妥当であり、アル添酒については清酒でよいと思っている。

このことについて書いていると長くなるのだが、マニアックな仔細にこだわった分類は、現実的ではない、つまり生活においては意味がないということだ。ところが、近年の傾向だと思うのだが、狂いウシ病モンダイにしてもそうだが、仔細なマニアックな情報だけが飛び交い、それでYESかNOを決めたがる。では、その仔細さに応じた総合的な生活的な判断力が育っているのかというと、そうではない。ただただ仔細な情報にはまり振り回され動きがとれなくなる、隘路をほじくるようなマニアックなオシャベリだけが活発なのだ。そして時間が過ぎていく。そこには、あたかも、絶対美味があるかのような、絶対ホンモノ、絶対安全があるかのような、現実離れした生活感覚が存在する。生活に関してまで、生活感覚を捨て、マニアになっている人たちがいる。牛肉情報マニア、食育情報マニア……そこにあるのはマニアックな情報であって、生活ではない。それは、過剰な余剰人員化した高学歴知識層と、過剰な余剰化したメディアによって、もたらされたのではないかと思う。

おっとととと、このことは今日はいいのだ。資料を見ていたら、アル添酒の歴史について、学者のあいだにもくいちがいがあるのだ。そのことをメモしておきたいだけなのだ。

1991年発行の吉澤淑さんの『酒の文化誌』(丸善ライブラリー)によれば、アルコール添加の方法は、「酒質の軽快化と雑菌汚染防止にあり、江戸時代に既に開発された優れた方法であることにご留意いただきたい」である。アルコール添加については、「増量」が主眼ではないと見ている。

1992年発行の小泉武夫さんの『日本酒ルネッサンス』(中公新書)によれば、「「アル添酒」はまず日本酒を造っておいてから、これにアルコールと水を加え増量するものである。この方法はすでに昭和17年、もろみに商工省燃料局生産のアルコールを添加することが承認されていたのが(戦後)よみがえったもので、終戦直後から全国の酒造業者の間に少しずつ広まり、昭和23年には大半の酒造家が取り入れた」。また「アル添酒、三増酒が日本酒の堕落につながるのか、また将来にわたっても存在する必要があるかどうかについては意見の分かれるところであるが、少なくとも始められた理由が戦時物資欠乏による統制のためであったことを考えると、今日すでにその目的は完全に達せられたのであるから、ここは一度振り出しに戻って、消費者が納得できる方向に修正すべきであろう」とアル添酒も三増酒も一緒に論じられている。

吉澤淑さんは、1933年生れ。東京大学農学部農芸学科卒業、1989年より東京農業大学農学部醸造学科教授。農学博士。

小泉武夫さんは、1943年生れ。東京農業大学卒業、農学博士、東京農業大学教授。専攻=醸造学、発酵学。

ついでに、最近まで純米酒は高級酒であったし高級酒であるが、紙箱入りの普通酒なみ価格のものも多く出回るようになった。

アル添酒がモンダイになっても、古米でつくられた「新酒」はモンダイにならない。狂いウシ病をモンダイにし、タバコの煙をモンダイにし、食育をウンウンしても、アスベストの追求はされないし、死人が出るまで松下の温風暖房機はホッタラカシ、年に1回の年末掃除をしてみれば、発がん性煤煙がベッタリ、層をなしている。そんなもんだべ、日本は。

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