酒粕と粕汁
11日夜の万盛庵では、粕鍋が出た。ま、粕汁であるが。タラを一匹内臓ごと丸切りし、鍋にほおりこんで煮た、野趣あふれる鍋だ。タラの内臓が、うまい。酒のツマミに最高。わざわざ高い金だして、アンコウの肝を食べることはない。
万盛庵が粕鍋につかう酒粕は、高千代の酒粕だ。高千代の酒粕は、伝説的な評判を生みつつあるようだ。たとえば、ある人は、高千代の酒粕を見ただけで、高千代の酒のよさがわかる、それぐらい高千代の酒粕はちがうのだという。それも素人の話ではない、全国をまわっている酒醸造の機械メーカーの営業の人が、高千代の酒粕を見て、ここはいい酒をつくるところだと言ったという。高千代とは関係ない六日町の町中の人のあいだで、そういう話を聞いた。
12日は、高千代でも粕汁を食べさせてもらった。これは、野菜を入れただけの粕汁である。粕汁というと関西のイメージがあるが、むかしから酒蔵のある町で、冬の粕汁はアタリマエなのだ。野菜がタップリ入った粕汁を食べて、ガキのころを思い出した。
高千代の醸造所のなかを案内してもらっていると、「搾り」という工程で、仕込んだ原料酒が搾られ清酒と酒粕に分離するわけだが、その機械のそばに袋詰めされた酒粕が置いてあった。最近は、酒の生産量が落ちているから、酒粕は品薄になっている。そこへ、みのもんたがテレビで、酒粕は健康によいと言ったとかで、さらにこの冬は品薄になっているとのことだ。
値段も上がっているらしいが、高千代さんは、うちは酒粕で商売する気はないので、そのままです、と言った。おれは、小さい酒蔵が生き残っていくためにも、儲けてくださいよ、と言った。でも、そうはできないのだよなあ。
消費者は、生産者の善意に惨い仕打ちをすることが、めずらしくない。有名人の言葉にふりまわされたり、見た目のイメージで商品を選ぶ。最近は、酒粕をよく見せるために、漂泊し白くして売っているところもある。みのもんたの話で酒粕を買うような人たちは、白い色にだまされて買うような気がする。
腹の底からしぼるように出た声が聞こえる。「見た目だけで、ラベルだけで選ばれるなんて、おかしいじゃないですか、悔しいです」
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それゆけ30~50点人生。
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