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2006/02/22

「栄養学批判序説」の序の幕下の前座のふれ太鼓

ある記者に、遠藤さんは栄養学を天敵と思っているのですか、と聞かれたことがある。『汁かけめし快食學』を読んで、そして飲みながらおれの話を聞いて、そう思われたらしい。

おれは、ドキンとし、すぐ答えることができず、チョイとでれどろと考えた末に、「うん、そういえば、天敵のように思っているかも知れませんね」と言った。

「天敵」など、考えたこともない言葉だが、おれが、たまたま食や料理に仕事で関わることになって、そしていまでも食育にシツコク「抵抗」するのは、もう何度か書いたが、そのシゴトで関わることになった「当時、なにかとクライアント指定の料理学校の先生と仕事をしなくてはならなかった。これが悩みのタネだった」……と、『汁かけめし快食學』にも書いたように、「料理学校」で料理や栄養を教える有名な、しかしトンデモナイ先生たちの存在に驚き、マットウな料理の先生を探して江原恵さんと出合ったわけだから、栄養学やその先生たちには並々ならぬ疑問を持っているのは確かだろうと思うのだ。

正確には、その先生方というより、その背景にある「栄養学」や「家政学」のとんでもなさに、最初は、ただただボーゼンとしたものである。こんなことがあるのか、こんなことがあっていいのか。それが、おれがいまにいたるまで食や料理に関心を持ち続ける源であることは、確かだろう。

とりあえず「栄養学」にしぼるが、それはいま食育基本法によって政府のお墨付きを得たカタチで「国民運動」として拡大増幅されようとしている。なんとまあ、どうして、こうなってしまうのか。いったい、これだけ義務教育以上の教育を受けた人たちがいて、と思うのだが。しかし考えてみたら、学校教育では給食を含め、その「栄養学」をもとにしているのだから、かなり「洗脳」されていてトウゼンか。

それから一方、学者や研究者たちのなかには、はなから栄養「学」や家政「学」など、あんなものは「学」じゃないよ偏差値が低い連中の集まりさと相手にするのもバカバカしいという態度もあってだろう、ちゃんとした批判が加えられてこなかった。そして似非文学がはびこるように、と、ここで文学を持ち出すのだが、言葉と論理の使い方において、似非文学と似非科学や似非学問である栄養学は似ていると思うのだが、それがはびこった。

とはいえ、栄養学に対する批判は、「自己批判」も含めて、まったくないわけではなかった。

江原恵さんは、それを「栄養素学」と的確に表現し、かつ「栄養食餌学」であるとした。これは食文化の成長を妨げるものとしての栄養学批判であるといえるだろう。つまり食の文化的な成長のためには、栄養学は批判されてしかるべき歴史があるという指摘をしている。

日達やよいさんは、『イマーゴ』1993年9月号「特集 食の心理学」のなかの小論「漂流する栄養学」で、その歴史を、時代を追って考えながら、栄養学者の発言とその問題点を検証した。そこでは、こんにちの、食育基本法を錦の御旗に栄養学がのさばるアブナイ面を予知している。それは、科学としての独自性を確立してこなかったがゆえに政治と癒着しながら存続を図る栄養「学」の姿でもあるが。最後にこう結んでいる。「日本の栄養学が本当に実践的科学として自力航海しているのか否か、見極めが必要な時期にきている」

食育基本法によって、いわば表舞台に登場したカタチの栄養学に対して、厳しく向かい合う時期にきたといえる。

そして、それを考えるときに、去る2月14日にちょっとだけ触れているが、家政学会の重鎮だった児玉定子著『日本の食事様式 その伝統を見直す』に見え隠れする、栄養学者のあいだの「農林グループ」と「厚生グループ」の暗闘は、無視できない。今回の食育基本法の施策として作成され配布されている「食事バランスガイド」には、じつに驚くべきことだが、その構図が、きわめて明快に整理されている。

って、ことで、江原さんの著書、日達やよいさんの「漂流する栄養学」、児玉定子さんの『日本の食事様式 その伝統を見直す』と「食事バランスガイド」から、「日本の栄養学が本当に実践的科学として自力航海しているのか否か、見極めが」できるように思う。

今日は、ここまで。

日達やよいさんの「漂流する栄養学」については、当ブログで前に一度ふれている……クリック地獄

栄養学批判は、「栄養知識」の必要を否定するものではない。栄養素の知識をこえて、栄養で美しくなったり頭が良くなったり健康になったりすると主張する、つまり「美しさ」や「頭のよさ」や「健康」などの価値判断をしたがる傾向、それを「科学的」とする栄養「学」に批判が必要なのだ。

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