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2006/02/19

檀流クッキング 萩昌弘解説メモ

16日のタイトルは「食品商業3月号、家事労働、炊事、女と男」だったが、食品商業の内容については、ふれてない。翌日17日に、書こうと思ったが、食品商業3月号の「売場ですぐできる「食育」の心得と演じ方」という小特集を見て、頭が暴発し、食育をめぐる「不安煽りビジネス」のことになってしまった。

ま、みな食べていくために食育ビジネスに「必死」なのだということにしておこう。と思うのだが、しかし、肥満や糖尿病や残飯の増大や、食糧自給率の低下を、数値をあげ、食育の必要性の根拠としておきながら、食育基本法の施策目標には、肥満や糖尿病や残飯や食糧自給率、あるいは地産地消などの目標数値をあげてない。

もちろん、あげられっこないのだ。そういう無責任が、この法律にはある。そのおかしさに、気づかずに、「昨年7月の「食育基本法」制定により、あらためて私たちは、「食の大切さ」「食の楽しさ」を再認識するべき時期にきたと言えよう」などと大上段にふりかぶっているのだろうかと、やっぱり首をかしげてしまうのだ。

やはり、とくに企業にとっては、食育はビジネスチャンスにすぎないのだ。しかし、こういう法律を大上段にふりかぶったやり方というのは、混乱と頽廃をもたらすだけだというのは、これまでの、とくに農政ですでに立証済みなのではないか。

とにかく、それで、食品商業の「食のこころ こころの食」は、「家事労働、炊事、女と男」というテーマだった。つぎの4月号のテーマは、「食を支える仕事の誇り」というので、これまでのテーマとちがって、わりと「職業」寄りだ。でも、おれは「仕事の誇り」はないほうがよいという考えなので、そのように書き仕上げ、例によって、明日締め切りに余裕をもって送った。いやあ、じつは、売れないライターとはいえ、ほかにドンドンやらなきゃいけないことがあってさ。

ふと思ったのは、食育をビジネスチャンスと思っている人たちの言うことや、このブログにやたらトラックバックをぶち込むだけで自分の考えは述べない「食育論者」より、檀一雄さんの「檀流クッキング」それも萩昌弘さんの解説と合わせて、こっちのほうが食育になるなあと思ったのだった。

ってことで、備忘のため、萩さんの解説をメモしておく。「檀流クッキング」中公文庫、1975年。

 男性は、この日本で、非常に不便な複合観念に縛られきっており(だからこそ今、女性たちから、ことごとに差別の罪を言いたてられるのだが)、「食」の欲望や感覚におもいをひそめ、工作をおこない、子孫に語りつたえる作業とは、ぜんぶ女性の固定的役割であり、男がそれに参加し介入することは「恥」なのである、とする愚かな思考だけをみずからに言いきかせつづけてきた。二、三の例外を除いて、料理の専門外の文人や知識人たちが、味覚のよろこびを讃美する文章の発表に踏みきったのは、ホンの近年のことにぞくする。それも、他人が生産し創造した味を嘆賞する次元だけにとどまって(じじつ、それ以上面倒なことは、したくもできなかったのだろうが)、みずから味をつくる、つまり「調理の実践の内幕」を外へもらす、などということは、自嘲以外、まったくといっていいほど、ありえなかった。ブリア・サヴァランはおろか、ロートレックも、その点では日本に存在しなかった。

 「檀流クッキング」は、読まれる通り、「食通」の自己陶酔などでは断じてなく、味という感覚を通じてくりひろげられる美文のエッセイですらない。徹底的に、市井一般市民のための、タダの家庭調理実作の指南書である。が、結果は、二重の意味において、他に類のない、そしてかけがえのない、手順の指導という以上の啓蒙の役割を、これははたすことになっている。一つは、いうまでもない、あらゆる家庭の生活人に、日常の食卓の料理は、みずからの手でつくりうるものなのだ、また、そうでなけれぽいけないものなのだ、という自信と自覚の手がかりを与えたことである。そして第二、さらに重要な成果として、みずから食い味わうものをみずから「つくる」ことには女も男もないのだ、それをかんがえ、工夫し、語ることは、男にも「恥」などでないことは勿論、当然として誇るべき人間作業なのだ、という正論を堂々と市民権としてみとめさせたこと、が挙げられなければならない。この一冊を、特殊な食通の、異常な道楽の告白、つまり檀一雄氏はオカシな珍事にマメすぎる執着を燃やしている奇人なのだ、と読みとることほど、事の本質をとりちがえた大きな誤読はない。

……引用オワリ。
これから、やっと30年というか、まだ30年というか。外食本ばかり見てないで、『汁かけめし快食學』読んで、自分でやってみろよな。

食育の法化のための自民党食育部会は、男役員によって、女議員だけが集められ始まった。現在、担当大臣は小泉チルドレンの女議員。食育ビジネスで、大いに張り切っている女もいるが、食と子育てこそ女のチャンスとばかり張り切るのは、男の政治の手のひらで踊らされているように見えないこともない。

って、また食育批判になってしまったか。しつこいな、おれも。がははははは。まだやるよ。

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