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2006/02/02

東京のトンネル工事現場で汁かけめしはコワイ?

きのうの「ヤマ人の汁かけめし「忌み」」のコメントで、トンネル工事のことを思い出した。ついでに、メモしておこう。

1966年ごろになるのかな?ウヘッ22歳3歳? 東京は荒川区熊の前というところにあった飯場にいた。そこは、江東区砂町の下水道用トンネル工事を請け負っていた建設会社の下請け組の飯場だった。出稼ぎなどの人夫が寝泊りし、砂町の現場まで、マイクロバスで往復するのだ。おれのシゴトは現場シゴトではなく、ま、居候のようなものだったのだが、何度か用があって現場へ行った。

トンネル工事というと、いまはシールド機をつかうのがフツウだ。シールド機というのは、自動掘削機のことで、トンネルの径にあわせた機械の先端に掘削用の刃をつけ、これを回転させてガリガリ削り掘り、その機械の周縁部では、掘ったところにセグメントという、ま、ブロックなようなものをはめこみコンクリートを注入しながら進む機械だ。

しかし、砂町の現場では、たしかまだシールド機はなかったのだと思うが、まず露天で掘り下げて、それから横にトンネルを掘るか、露天で掘り下げて型を組みコンクリートを流し込む方法だった。その最下部は、たえず流れ出る地下水が溜まって、水の中で作業しているようなものだった。

しかも、工事は、元請、二次請け、三次請けというぐあいに下請け発注されていて、おれのいたところは三次請けなのだが、三次請けの人夫が、その一番下の水浸しのあたりを担当するようになっている。水浸しのうえ、上の方で工事している二次請けの人夫は下に落ちるのなんか気にしないで、鉄材などをボンボン投げたりして、それがときどき落下するから、とても危険なのだ。

そういう状態なのだが、トンネル工事でコワイのは、とにかく水。とくに地下水脈に当って、ドッと水が出たときの恐怖は、よく話で聞いた。

後年、ゼネコンのシゴトで、大型シールド機をつかう現場に何度か行った。たしか、大田区あたりの、幹線共同溝ではなかったかと思う。都内の環状7号線だったか8号線だったか。その下あたりには、巨大なトンネルがあって、ま、地下室が続いているようなものだ。幹線共同溝は、下水のほかに、ガスや電気などの幹線を通す。

地上から工事用エレベーターでくだり、巨大な地下ホールのようなトンネルをかなり歩いて、切羽というシールド機が作業しているところへ着いた。すると、たまたま小さな水脈にぶつかったとかで、シールド機の先端部分では、ゴウゴウ水があふれていた。その程度の出水はアタリマエらしく対処していたが、初めて地下でそんな光景をみると、やはりコワイと思った。

だから、トンネル工事の関係者が、めしに汁をかけて食べるのを、頭から水をかぶるようで、縁起悪く思う気持は、なんとなくわかる。

しかし、この砂町の下水道工事も、東京都の黒い霧ジケンの一角で、役人とゼネコンが税金をつかって私服を肥やしていたのだが、いまでも、「官製談合」なんての平気でやっている有様。ま、経団連の加盟会社だって、天下りを積極的に受け入れている状態だし、国民だって、またかという感じで怒りもしなくなった。エヘラエヘラ、ガハハガハハ、もう慣れっこ。

これは、あくまでもウワサね、ウワサで聞いた話だから、本気にしちゃいけないし、最近は知らないけど、元請の大きな工事現場の所長は、一件で一軒家が建つほどピンハネしていたとか。発注側の国や都や区の、工事局や建設局の幹部も、もちろんね。工事が終ると、お役人の検査が入る。トンネルの完成した一角を崩し、設計どおりの鉄筋が入っているか、設計どおりのコンクリートの厚さになっているか、など検査があるわけだけど、それがチャントやられているなんて、誰も信じちゃいなかった。

誰もが信じていたことは、地下水が湧く地べたで働く人夫がいる一方で、工事の受発注が右から左へ動くあいだに、税金から自分の財布に、人夫が何年間働いても手に入らないカネが転がり込んでくる人間がいるということか。

これはまあ、おれの一つの「東京風景」でもあるわけだが。

そういや、あの耐震ナントカ事件は、どうなったのだ……。ありゃりゃ、なんの話だ? 汁かけめしも、コワイという話か?

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コメント

東京の地下は、おもしろいですよ~。巨大な池もありますし。ガスパイプや電気ケーブルなどの幹線は、すごいビックリする太さのものです。それが、大きなトンネルのなかをはしっています。最近は、シールド工事の現場見学もできるようだから、見るチャンスはあるかも知れませんよ。

そうだ、シールド工事の現場で、エロ薔薇映画のロケをやるっての、どうですかね。工事現場とエロバラ。さいこ~。映画の脚本を書くんで、ということ理由に、見学させてもらえないのかなあ。

投稿: エンテツ | 2006/02/04 13:06

非常に感銘を受けた「東京風景」です。「三次請けの人夫が、その一番下の水浸しのあたりを担当するようになっている」というストレートな構造と、地下工事の出水が、ご飯に汁をかけることへのタブーにつながる飛躍。目を瞠ります。地下水脈とその爆発的な出水は、想像しただけで興奮してきますが、わたしが目撃する機会は一生ないでしょう。以前、TVのドキュメンタリーで、地下鉄の工事現場を写していましたが、大小の管が重なり合って、延々と続いている地下の様子も、なぜかわたしをエキサイトさせます。

投稿: ヤマザキ・クニノリ | 2006/02/04 01:12

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