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2006/02/11

レモンクラブ、三匹のアウトロー

表紙に18未満禁止マークのある「レモンクラブ」3月号が、漫画屋の性器画修正工芸家にして嫌われ芸の大家である塩山芳明さんから送られたきた。例によって、ヤマザキクニノリさんとナンダロウアヤシゲさんの文章を読む。今日は、これで評論家風に遊んでやることにした。キーワードは「アウトロー」。

ヤマザキクニノリさんは書いている。「エロの周辺をめぐる、大変ちゃちなアウトロー人生ではあるが、わたしは先日、東北の実家に帰って大雪と格闘しながら、いつから自分はこれほど粘り強くなったのか、首をひねってしまった」

雪かたづけという雪国においてはトウゼンの作業に、彼はこのように感慨深く自分を振り返る。「わたしは老親の住む家の周囲の雪の山を掘り崩しながら、以前のチャランポランなわたしなら、到底こうした作業に耐えられなかったろうと思った」「何が私を変えたのか?」それは「ピンク映画の撮影である。いまや3日間で、1時間の劇映画を撮り上げなければならない。当然、深夜労働はもちろん、徹夜も珍しくないのだが、だからといって限られたスタッフなので、逃げ出すわけにもいかず、まして自分が監督だったら、仕事を放棄することもできない」と。50歳代初老男のボッキ時の述懐である。

この文章に、50歳代初老ボッキ不全男の塩山編集長がつけたタイトルは、「失業エロ労働者の寒い親孝行!?」である。そして、内容とは直接関係ない写真のキャプションに、「自衛隊に入隊して根性を鍛え直せっ!!」と。そして、その写真は、鬼が牙をむいている鬼瓦の写真なのだ。

がははははは。これは、長いあいだ「エロの周辺」という、けっして中心性や標準性を持ち得ない、あらかじめ周辺性を約束された分野で生きてきた、それゆえアウトローである50歳過ぎの二人の男が、レモンクラブという誌面で自虐と加虐のマグワイする姿と見てよいだろう。

ナンダロウさんは、神戸のちんき堂という古本中古レコード屋?店主戸川昌士さんの『やられた!猟盤日記』(東京キララ社発行、三一書房発売)の書評紹介だ。あまりおもしろくない。塩山編集長のタイトル「広すぎる世間は人をめくらに!?」も、あまりおもしろくない。本の写真のキャプションに「他人の悪口のない日記も、射精なしオナニーのように退屈」とあるが、これも、おもしろくない。ボッキないなあ。

他人の悪口を日記に書かないやつは、どうせどこかで尻尾つかまれないように悪口いっているに決まっている。日記に他人の悪口が書いてないならば、そのように想像してみれば、すぐわかる。けっして登場しない人間は、カゲで悪口を言われているに決まっているのだ。直接書いてあるかどうかは関係ない。

もともと、日記などは、おもしろいものじゃない。そういえば塩山編集長は『嫌われ者の記』という日記本があったな。あれは日記としてより嫌われ芸でおもしろかった。たいがいの日記は、いかにも本当らしさを繕った、ホラ日記よというウソであり、ようするに何の工夫もないシロモノである。芸のないナマケモノが書くものだ。実際、ナンダロウさんも、「おもしろい日記本の条件は(1)たっぷり長いこと、(2)固有名詞がバンバン出てくること、(3)本人を知らなくても読めること、の三つに尽きる」と書いている。ようするに長い索引集じゃないか。と、おれが日記本にケチつけてどうするのだ。モンダイはアウトローだ。

ナンダロウさんは、ミニコミや古本が周辺であったころは、アウトローといえたが、いまや違う。ミニコミや古本は、情報化と循環型という、メジャーな動向が形成する市場にとりこまれつつある。そもそも、ミニコミや古本は、商業主義の外縁部にあって、それでいながら、文化的政治的には中心性や標準性と気脈を通じていたのである。アウトローであるかどうかは、本人が、金はいらなくはないのだが、日本の現実であるところの商業主義の責任を、どの程度負うか、あるいは負いたくないかの違いだった。かつてのフォークやロックの歌手も似ている。

エロは、もっとも正しく商業主義の仕事をしながら、つまり商業主義の責任においては中心性や標準性を持ちながら、しかし文化や政治の中心性や標準性から排除されていたがゆえに、周辺に追いやられ、そこで生きるものはアウトローとしての道しかない。

この違いが、ヤマザキさんと塩山さん、それとナンダロウさんとナンダロウさんが取り上げた『やられた!猟盤日記』の著者とのあいだにある、アウトローの違いだろう。前者は、そのままその仕事をしているだけでアウトローである。後者は、商業主義からのアウトローである。後者は商業主義の厳しさは無縁、とまではいかないだろうが、ま、希薄である。と、おれは深く考察したのだった。

塩山さんは二人の異なるアウトローを自分が編集する誌面に書かせ、自分が最も厳しい群馬の下仁田ネギ水呑み百姓アウトローである、おまえら呑気すぎやしねえか、うらやましいなあ、このバカヤロイと舌打しながら、サドマゾなオナニーにふけっているのだ。それがまあ、見てもさっぱりボッキしないエロ漫画のレモンクラブを見る楽しみで、ある。

もっとも、いまここで、みなまとめてアウトローにしてしまったが、それは今日の遊びの都合によるものであって、アウトローを明言しているヤマザキさんを除いては、ご本人はアウトローだと思っていないかも知れないので、念のため。

かつて、「食通」というのは、命がけのアウトローだったのだが……。

漫画屋ホームページ
ヤマザキクニノリさんブログ
ナンダロウアヤシゲさんブログ

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