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2006/03/04

こんな時代だから 本を読もう

今日は、古本屋の野出書店の入口に、模造紙に「こんな時代だから 本を読もう」という手書きポスターが貼ってあるのを見て、おもわずおかしくなり、入って古本を買ってしまった。

いまおれが住んでいるところは、さいたま市浦和区、JR京浜東北線北浦和駅から、徒歩15分~20分のところだ。バスに乗れば、三つ目の停留所だが、9割以上は歩く。それも、なるべくルートを変えながら。

駅を出て、まず、まっすぐ行くか右に曲るかの選択になる。そこで右に曲れば、すぐ野出書店だ。駅ホームから見える線路沿いにある。

二階建て独立店舗。面積にすると6畳間ぐらいか、入口左が半間の煙草売場になっていて、その外側の腰のへんからすでに本が積まれている。半間の入口にも本が積まれ、身体だけ通る隙間から本の洞窟のような店内に入ると、煙草売場を背にオヤジが座っている。おれと同じぐらいのトシだと思う。そのすぐ前に全体の10分の1ていどをエロ本が占める。ほかは文庫、新書、文芸書が中心。実用書は、あまりない。棚の半分近くを隠すように、床から平積み。売る気のない倉庫のようだ。2階は美術本などの稀覯本らしいが上がったことはない。

この北浦和に引っ越して、たぶんまもなく7年だと思うから、上京以来おなじところに住んだ記録としては、二番目タイになるのではないかと思う。そして、どこでも近所に古本屋を利用してきたが、利用といっても見るだけが多く、しかし野出書店では比較的よく買っているほうだ。ま、一年に10冊もいかないが。近所で古本屋に入るのは生活であって、購買は二の次で、どうでもよい。

たしか今年になって、その野出書店の隣にあるビルの地下、そこはマルエツというスーパーがあって出て行ったあとなのだが、100坪ちょいぐらいの広さか、そこに名前は覚えていないが、ブックオフのような店ができたのである。野出書店にとっては、初めての脅威なのではないだろうか。「こんな時代だから」は、そういうことなのかも知れんなあと、手書きポスターを貼ったオヤジの胸中を思った。それに、いまの「古本ブーム」の底にある心理を突いているようにも思った。なかなか、いいコピーじゃないか。

しかし、古本がブームなんて、ろくな時代じゃないってことだ。さっさとこんな時代はなくなって欲しいが、古本ブームは、まだまだこれからのようだ。不吉だが、不吉な時代なのだ。

共感や称賛や同情というわけじゃないが、なんとなく、『夫婦茶碗』(町田康、新潮文庫)、『剣客商売 庖丁ごよみ』(池波正太郎、新潮文庫)を買ってしまった。400円。酒代に換算すると……

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コメント

黒田さま

コメントありがとうございます。あのキャッチフレーズは、ほんとによいです。そのまま貼り続けるなり、看板にしてほしいところです。

野出書店さんには、ときどき寄っています。これからも寄るでしょう。エロ本はミゴトだと思いますが、以前とくらべると少し控え目になったような気がします。以前はレジ横の棚をエロ本が占めていたのに、近頃は少々高めの本が鎮座して、もしかしてご主人は「やる気」を出したのかと思いながら眺めています。

ナニワトモアレ、こんな世だろうと、どんな世だろうと、力強くめしをくって力強く生きるのみ。

投稿: エンテツ | 2008/04/14 19:54

2年前のあなたのブログですが、(2006.3.06)。
北浦和の≪野出書店≫に書いてあった『こんな時代だから本を読もう!』という手書きのフレーズ今日野出書店の主Mr.野出氏が小生の所にこのブログのプリント持って来ましたよ。
娘さんが見つけたそうです。
あれは、小生が野出さんに『何かキャッチフレーズを出したら?』と言ってそそのかしたんです。古本が今尚、残っているのは本当に退潮した時代ですわ。
新しい思潮がないから、アンシャイン レジデンス。形だけの改革何とかがもてはやされて、
メディアは時の政権の提灯持ち。とてもデカダンが通じる時代ではないですわ。それで、インテリジェンスは引き籠り、古きあの時の書物に回帰してるのかねー。
破壊と創造があるとすれば今が創造の時代だとは思いませんか?
本も物も売れない時代だけど、当たり前の物は絶対に売れないわね。ちょっとした物はいくらでもあるんだものね。
毎年、毎年ヒット作やら商品が出るわけないのに、皆急いで結果ばかり出したがる。出るわけないのに。
五年十年でやっと一つ出てたのに、今は何だろう、すぐに結果出る世の中になっていると思っているんだから、世話はないです。

ちなみに、小生はリストラされて(?)以来、気ままに自営しています。普段はフーテンの寅さんみたいな仕事をしていて、常に明るい貧乏人です。ライフワークが上手くいけば良いんだけどね・それも確かに運が60%。
北浦和行ったら、野出さんに寄ってね。新鮮なエロ本積み上げて店番しています。
小生も『こんな時代だから、勝手に生きて行きます!』ごめんなさい。

投稿: 黒田文夫 | 2008/04/14 15:56

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