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2006/05/26

健康の増大、幸せの縮小

厚生労働省の下請け団体に「財団法人 日本食生活協会」なるものがある。日本食生活協会のサイトの「日本食生活協会のあゆみ」を見てもらえばわかるが、「昭和31年に厚生省大磯栄養課長の指導を得て、日本食生活協会に所属する「栄養指導車」8台の建造が実現し、10月10日、日比谷公園で盛大な出発式を挙げました」とあって、その始まりから「食生活」をうたうが、「栄養課」の指導によるものであり、このあたりにすでに、食生活を健康と栄養に矮小化する考えと動きがみられる。

この考えの特徴は、日本食生活協会の松谷満子会長の挨拶にハッキリあらわれている。つまりそれは 「私たちが幸せな生活を営むためには、何よりもまず健康でなければなりません」と始まるのだ。

「幸せ」とは、そういうものだろうか。

まず健康でなければならない。しかし、それは「幸せな生活を営むため」というのである。この、「幸せな生活を営むため」を掲げなくては「健康」を主張できない点に、すでにこの論理の破綻があるのだが、そしてまた「幸せな生活」は「健康」に矮小化される。

いったい、この人たちは「幸せ」について、それだけしかないのだろうか。不健康、たとえばなにがしかの持病があるひとは、すなわち不幸な生活しかないと思っているのだろうか。

ともあれ、健康で長生きであれば幸せ、という価値観とはいえないような尺度というか、たとえば「生きがい」や「自由」を奪われても、健康なら幸せであると、そういう考えを持てということであるらしい。それは牢獄のような生活でも麦飯を食べれば健康によく幸福であるというのと同じではないか。家族一緒に食事ができないような過剰な長時間労働の生活でも、粗食な食事であれば健康で幸せであるということにもなる。

こう書くと、イヤそこまでは言ってないというだろう。しかし、では、「幸せ」についてどう考えているのだと聞き返せば、やはり「何よりもまず健康でなければ」と答えるはずだ。だってさ、そう言っているのだ。

この、「幸せ」を掲げながら「健康」を「幸せ」の上におくペテンの論理は、生活を生理でしか考えない、それゆえ牢獄のような生活でも健康であればよいという考えにつながる。人びとを「奴隷」あつかいにする考えであり、たしかに健康な奴隷を欲しいひとは、いくらでもいるのだ。

もともと日本は食生活に関する関心が低く、食を文化として見直したりや、「男子厨房に入るべからず」から「男子厨房に入ろう」が生まれるのは、やっと1970年代後半のことだ。その間に、食生活を支配してきたのは、こういう考えだったし、いまでも支配的であるといえるだろう。

しかし、生身の人間は、そうはいかない。不健康がわかっていても「幸せ」のために働くこともある。不健康がわかっていても「幸せ」のために飲むこともある。健康だけじゃ幸せでない生活は、いくらでもある。「食べる」ことは、健康だけではなく、それらすべてに関わるのだ。

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コメント

昭和30年ごろのことは、よくわからないのですが、とにかく、こういう得体の知れない団体が、たくさんあって、今回の食育でも、予算=税金をむしりとっているんですねえ。

いまや「健康」は巨大な利権が動くところであるようです。助産婦の団体のボスが法務大臣になる時代ですから、栄養士の団体のボスも代議士や大臣をねらっていてもおかしくないし。

好きなもの作ってもらって食べて飲んで寝る、毎日それだけで幸せと思っているのだけど、不幸な日々です。刑務所で麦飯をくう生活が幸せに思えます。って、わざと無銭飲食する野宿者もいますね。こういう人は長生きしそう。

投稿: エンテツ | 2006/05/26 15:33

なるほど、得体の知れない財団法人ですね。昭和30年ごろの社会状況から、その設立状況があまり理解出来ません。食糧事情は問題なく、食中毒が頻繁に起きたことぐらいでしょうか?しかしまだトイレ水洗化の時代ですね。

一種の国民運動と指導と見ましたが、「国庫補助事業」と云うのが人を馬鹿にしていますね。一体どういった存在価値があったのか?211,077人栄養士元締め、学校給食利権?

「男子厨房に入ろう」、「牢獄に入ろう」、健康ならば不幸せだって。

「私作る人、あなた食べる人」、「私教える人、あなた従う人」、これ長寿の秘訣です?

投稿: pfaelzerwein | 2006/05/26 13:45

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