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2006/07/28

「自分の言葉」ってなんじゃらほい、コンビニで考えた

「自分の言葉」というのを、よく耳にするようになった。自分の言葉というのは、自分の表現ということだろう。それにしても、そんなものあるのか、あるとしたら、どこにあるのか。そして、デハ、むかしはあったのか。というギモンが湧く。

生活や社会を語るのに、消費や産業の言葉をつかい、しかし本人は、生活や社会を語っていると思い込んでいるという場面には、よく出会う。このあいだ下北沢のシンポでも、それを感じ、そのことを指摘してしまったのだが。それほど「消費社会」や「産業社会」が強力に支配的であるということだ。しかし、消費や産業は、生活や社会の、ほんの一部なのだ。

ということから、とにかく、産業化消費化で、自分の表現が、どう失われていくか、いま、コンビニで買い物をしながら、ひらめいたことがあった。

そのコンビニは、ウチに一番近いところにあるのだが、ここにはトマトやキュウリやタマネギ、ニンジンといった生鮮野菜が置いてある。これがイザというときに意外に便利で、ときどき利用する。しかし、このチェーンでは、生鮮は扱ってはいけないことになっているはずだ。本部の受発注システムのコードにはないようだ。買うときは、バーコード入力は不可で、レジでは指先でポチポチ「生鮮」と入力される。この生鮮は、お店が単独でどこからか仕入れて売っているのだ。

本部は、こういうことは原則として許さない。本部では、成功モデルにもとずいて、棚の1センチ単位で利益を計算するぐらい、じつに詳細なシステムをつくっているので、それにしたがって、品物を決められた位置に決められた時間、たとえば搬入された時間から決められた時間以内に陳列しないと、売り上げに影響が出る、というぐあいになっている。だから、その店には、生鮮を勝手におくスペースはない。そこで、どうしているかというと、冷蔵ショーケースの一部に10センチぐらい、無理矢理あけた感じでトマトなどをおき、そのまえの通路に少しだけ突き出したかたちで箱をおき、その上に野菜をおいている。こういう、ちょっとしたデッパリも、微妙に導線を狂わし売り上げに影響することになっていて、マニュアル違反で認められないのが、本来だ。もっとも、チェーンによっては、最近は積極的に生鮮を置くシステムで運営しているところもあるが、ここは、そうではない。

では、ここにナゼ野菜があるかというと、おれがここに越してきた7、8年前は、もっとあったのだ。初めて、ここに入ったときは、ウワーこの店、好き勝手やっているなあ、これじゃあフランチャイズチェーンでやる意味がないだろうと思ったぐらいだ。フランチャイズチェーンの本部は、個人の経験やカンでやるより、本部のシステム通りにやったほうが儲かるということで、そのシステムを利用させロイヤリティを加盟店からとっているのだから。

ところが、加盟店が、加盟前に食料品店だったりすると、とくに歴史が長かったほど、そこの店主は自分の経験やカンを捨てられない。トレーニングやスーパーバイザーの指導で、しつこく言われても、マニュアル通りにしないで、勝手に陳列を変えたり、自分で売れると思ったものを勝手に仕入れて並べてしまう。スーパーバイザー泣かせなのだ。その点、食品以外の商売をしていた人や、若い人のほうが、素直にマニュアルにしたがってくれて、やりやすい。

つまり、この店に、おれが最初に行ったころは、いかにもそういう年季をつんだ融通のきかなさそうなジジイがレジにいて、レジも満足に打てないアリサマだった。そして、いつごろだったか、年輩だが、その息子らしいのがレジに立つようになった。そのころ一度、生鮮モノは一切姿を消したが、また少しだけ復活したのだ。おれも利用するぐらいだから、古くからつきあいのある地元民からの要望もあったのだろう。

それで、おもうに、そのジジイが、そこに生鮮を置いていたのは、彼の表現なのだ。彼と話したことはないが、話したら、彼は野菜や野菜のある生活などについて、彼はアレコレ語ったにちがいないし、そういう知識や言葉を持っていたであろうと思う。それは、彼の生活の歴史でもある。

ところが、店がフランチャイズチェーンに加盟し、店が「産業化」され「消費」と極めて経済効率のよいつながりをつくろうとしたとき、そういう表現や言葉は、むしろ邪魔になった。

こういう関係が、全日本的にありはしないかと、ふと思い、もっといろいろ考えたのだが、とりあえず、これだけ書いておく。

「自分の言葉」といいながら、消費や産業の言葉で表現されているのに、ときどき気づき、気になる。それにしても、「自分の言葉」なんてあるのだろうか。

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