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2006/08/28

「安くておいしい」と「おいしく食べる」のあいだ

どうも「大衆食」などを名のっていると、「安くておいしい」ものや「安くておいしい」店を知っているものと思い込まれて、そのテのことを聞かれることが少なくない。それは、とても困ったことなのだ。

椎名誠さんは、かつて「書評誌「本の雑誌」の編集長をやっているのでよく「いま面白い小説はなんですか?」と聞かれる。そういわれても即座に「ハッ、いま面白いのはコレとコレであります、ハッ」というふうにこたえることができない。自分が面白がって読んでいる小説が誰が読んでも面白いとは絶対言えないからである。うまいラーメン屋についての評価とすこし似ていて「こってり味」の好きな人が「さっぱり味好み」の人に「これはうまいですよオー」と大絶賛紹介して失望されるムナシサみたいなの、よくあるでしょう」と書いている。(『むははは日記』角川文庫「活字荒野に夕日が沈む」)

といいつつ椎名さんは、「ところが一冊だけこってり派もさっぱり派も極辛派もギトギト派も包含してまず95%の確立で絶対面白い、といわれるだろう小説も知っている」と、アーサー・ヘイリー『ホテル』(新潮文庫)をあげている。これはまあ、1980年代前半時代の話だが。当時を、ふりかえっても、そのように『ホテル』を評価することについては、おれは首を傾げてしまうから、やはり、「絶対面白い」というのは、難しいものなのだなあと思う。

それは、一つには、それぞれのもつ「ストライクゾーン」ちかごろよくいわれる「ツボ」にも関係するだろう。それぞれの「ストライクゾーン」や「ツボ」が狭く小さいならば、場所や位置のちがいもあるし、「安くておいしい」対象は、かなり限定されてくる。その上、それぞれの好みの方向性を加味すれば、合致はかなり困難なはずだ。しかし、一方では自分と同好の仲間が欲しくてたまらないという状況もあるようだ。

それから、もう一つは、街には「安くておいしい」という尺度にあてはまらないで成り立ってきたモノやコトが、たくさんある。それは、人間には、「おいしく食べる」という文化があるからなのだが。マーケティングと消費主義は、そのことを忘れさせる力を持っている。

しかし、ことによると、「おいしく食べる」学習によって、「安くておいしい」モノや店が発見されているのかも知れない。となれば、「安くておいしい」モノや店を評価して歩くのもよいだろうが、それをするニンゲンの「おいしく食べる」学習能力も評価の対象になってよいはずだ。

Hatagaya_sankouenともあれ、きのうチョイと書いた、幡ヶ谷の山幸園の画像を掲載する。クリック地獄で拡大。こういう食堂をキチンと紹介するようになりたいと思うのだが、思いつつ努力もせず10年以上すぎてしまった。ここは、「安くておいしい」店ではない。と、書くと、モンダイであるが、「おいしく食べる」ことを知っている人たちによって支えられてきたのだろうなあという印象を、最初に入ったときに感じた。そういうことを感じさせる小さなコトがあった。そして、やはり、また2回目も入ってしまい、それから気になっているのだ。「街的」にみれば、こういうことは、めずらしいことではない。「安くておいしい」を尺度に「おいしく食べる」を捨てていくと、街は、どうなるのだろうか?

山幸園の画像、1階のガラスに見える灯りは、向い側からの写りこみで、実際は真っ暗だった。道路の先5分ほどの位置に京王線幡ヶ谷駅があり、おれが立っている背中には、銭湯。

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コメント

ありゃりゃりゃ、もう、その時間から酔っているのかあ。

ふあああああ、今夜は初めての店に入って、マズイもの食って、楽しく飲んできたぜ。

街は、おもしろいよなあ、いろんな店があって、いろんな人間がいて。メディアになんかのったことのない店が圧倒的に多いんだからさ。そういうとこにも客が、常連が、ちゃーんといて、成り立っているんだからさ。みんな、それぞれ、うまい飲み方しているよ。でははははは

投稿: エンテツ | 2006/08/29 01:12

>「安くておいしい」≠「おいしく食べる」

おお!おいらが思うことはまさしくそれ!さすがは先生様。痒いところに手が届くようなこと書くなぁ〜まあ、おいらの場合は「おいしく呑める」だけど。
よく、おいらも「お前は安い良い店知ってるだろ、教えろ」と言われるんすよね。んでも同じ趣向にあると判ってる人にしかお薦めしない。
おいらは「酒が好きと言うより、酒を呑む場=酒場が好き」と常々言うんすけど、どんな安酒でも呑む状況によって旨く呑めるわけで、高級な物が無くとも旨く呑ませる旨く喰わせてくれる店が好きなわけで。甲類焼酎だけど、冷やしてあるとか、変な店員や常連客がいて面白いとか。
まぁ、あくまで、自分にとって、と言うことだけど。

投稿: 吸う | 2006/08/28 19:29

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