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2006/08/10

書評のメルマガ 上方食談 錦市場探訪 そしてサブカル

ふう、はあ、今月末に講演する某スーパートップセミナーのレヂュメ、今日締め切りで、なんとか作ってメールで送った。

きのう、「書評のメルマガ」vol.275が発行になった。8月5日「なぜ「食文化」がないのか」に書いたように、石毛直道さんの『上方食談』小学館から「錦市場探訪」を取り上げた。あらためて思ったが、これはやはり食文化研究あるいは食文化エッセイの端緒というにふさわしい。もっともっと多くのひとに読んでもらいたい一文だ。これを読めば、まだまだ30年以上たっても昨今に続く、うまいもの話やうまい店話が、いかに内容のない陳腐なものだかがわかるだろう。

飲食にからめて、ブンガク的ブンカ的なペダンチックな装飾を弄し、ようするに飲食をダシにして、どうじゃ自分はブンガク的ブンカ的なんじゃゾ偉いんだゾと見せたがるだけで、さっぱり飲食に迫っていない、それでいてブンガク的ブンカ的にも、どうってことない平凡である。あっちこっちの文献から寄せ集めて並べただけの知識で、深い斬新な考察もない。

これは、もともと飲食は道楽でしかなかった男に多いのだけど、たいがい恥さらしをしているようなものだ。ま、もっとも、何かを書いて公表するということは、自分の恥をさらすようなものだけど、そういう自覚も、このテの男たちにはない。でも、そういうものが売れるということは、まだまだ食文化に関する認識が低いということでもあり、ま、仕方ないんだね。なんども書くように、まだ「食文化」が意識されて30年かそこらだから。でも、それほど悲観することではなく、いまあげつらねた愚かしい男たちの食談義が続く一方で、そういうものとは一線を画すものが、ガイドブックらしいガイドブックも含めて、どんどん生まれている。

そりゃそうと、関係あるのだが、その「書評のメルマガ」vol.275には、大阪の「ちょうちょぼっこ」の次田史季さんが、『東京大学「80年代地下文化論」講義』(宮沢章夫、白夜書房)を読んでのことを書いている。これがとてもおもしろい。おれは、その本のことは知らないし、とくに文化論に興味があるわけじゃないのだが、次田さんの、この指摘は、日ごろ感じてきたことであり、ものすごく共感してしまった。

以下引用……

「サブカル」という語をあまり聞かなくなった原因は、ハイカルチャーとサブカルチャーの境界があいまいになってきたからというのもあるけれど、「サブカル」というジャンル自体のおもしろさが少なくなってきたからとも言えそうである。また、この講義中によくでてくる「かっこいい」という言葉を使わせてもらうと、「サブカル」=「かっこいい」ものではなくなってきているような気配を感じる。「サブカル」というジャンルがなくなること自体はしょうがないのかもしれないが、周辺やはみだすものをいったりきたりできるところがなくなって、メインか細部(≒「おたく」)のどちらかしかないという状態にはならないほうがいいんじゃないかと思う。

……引用おわり

江原恵さんなどは典型だったと思うけど、70年代から80年代前半の食文化ブームは、サブカル系の人たちによって支えられていた。男たちが語る飲食も、それまでの食通文士たちが中心の、文学趣味や、いい気な男の道楽や、権威主義をのりこえる内容と気迫があった。

ところが、80年代後半から90年代の食文化はグルメブームに飲み込まれ、メインに吸収されていく。その過程で、ガラリ変わるのだ。そして昨今は、先に述べたように、またかつての食通文士たちをアコガレのモデルにしたような、だが違うのはオタクっぽく、だけどオタクにもなりきれない、細分化する消費社会を反映してか、マニアックな仔細な情報や知識にコダワルみっともない男たちがメディアを足がかりに這い上がるためのネタになった。

けっきょく、サブカルは、周辺やはみだしでもいいサブカルの魅力に生きたい、ということではなかったのだな。立身出世はしたかったが、当時の立身出世の「型」つまり管理的な組織のなかで地味に努力するのが嫌だった、気分的な「はみだしもの」にすぎなかったのだ。と、全部が全部を、そう決めつけるわけにはいかないが、グルメがブームになりメディアを舞台にメインへの足がかりが開けると、もうサブカルもへったくれもない。とくに食文化周辺にみられる昨今の現象は、じつに、「かっこいい」とは正反対の、飲食の仔細を知ったかぶりして得意になったり、いっぱしの仕掛人ぶったりと「みっともない」サブカルのなれのはてが目につく。

もっとさ、アウトサイダーでもいい、有名にならなくてもいい、かっこよくやろうぜ。いまのメインなんて、みっともないじゃないか。気どるな、力強く、汁かけめし快食やろう…って。

とか、おれのようなジジイがいっても、しょうがないんだよなあ。おれのようなジジイは、本来、アウトサイダーに走りたがる連中を諌めて偉そうに呑気にしていられる立場のはずが、先を争って飲食をネタにメインに走りたがるおれより若い連中があまりにも多いから、こんなイヤミや皮肉をいうことになる、ああ、イヤだねえ、こういう姿もみっともないねえ。ああ、イヤだイヤだで自己嫌悪におちる前に酒を飲もう。

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