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2006/12/22

なんだかオカシイ「食糧自給率」報道

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http://www.asahi.com/life/update/1221/020.html

食糧自給率「低い」7割 6年前より17ポイント増
2006年12月21日23時01分

 日本の食糧自給率が「低い」と感じている人は大幅に増え、7割に達したことが、内閣府が21日に発表した「食料の供給に関する特別世論調査」で分かった。国際情勢の悪化によって輸入が不安定になる恐れがあることなどから、4人に3人は将来の食糧供給への不安を感じている。

 調査は、11月に全国の成人3000人を対象に実施、1727人(57.6%)が回答した。

 日本の食糧自給率は、98年度から8年連続40%と横ばいが続く。この数値が「低い」「どちらかというと低い」と答えた人は合わせて70.1%で、6年前の前回調査に比べて17.3ポイント増えた。逆に「高い」「どちらかと言えば高い」は、計5.6%で、前回(10.8%)から半減した。

 「外国産の方が安い食料は、輸入する方がよい」と考える人は7.8%で、調査を始めた87年以降で最低を記録。逆に「高くても国内で作る方がよい」という人は86.8%で過去最高だった。

 将来の食糧供給に「不安がある」という人は76.7%。不安の理由は「国際情勢の変化により、輸入が大きく減ったり止まったりする可能性がある」が61.6%と最も多く、前回より約18ポイントも増えている。農林水産省食料企画課は「北朝鮮の核問題やイラクなど中東情勢への不安のほか、急速に経済成長する中国に食糧が多く買われていることを反映しているのではないか」と分析している。


……以上は、記事の全文。

「食料の供給に関する特別世論調査」って、なにを目的の調査か、名称からは判断つかない。この記事からすると、ようするに「意識」調査らしいが、内閣府と朝日新聞が、この調査結果をもとに、なにをやりたいのかは、なんとなく伝わってくる。「将来の食糧供給への不安」を煽り、「高くても国内で作る方がよい」という方向へ世論を導きたいということが見え見えだ。つまり、より高負担を消費者に強いる、高負担も仕方がないと思わせる世論づくり。

こういうふうに「食糧自給率」を利用してよいものだろうか。そもそも、この調査では、食糧自給率が高すぎるか低すぎるかの基準をどこにおくべきか、といったことについては質問をしてないだろう。バクゼンとした不安を、数値化したにすぎない。そのことによって、不安はより顕在化し深刻になる。すくなくとも、この記事ではそうだ。

だいたい、「外国産の方が安い食料は、輸入する方がよい」「高くても国内で作る方がよい」といった回答を用意するなんて、あたかもそのへんに食糧自給率の改善の分かれ道があるかのような誘導でもある。このように「質問」「回答」という形式のなかで、一つの方向をPRしてしまう悪賢いことは、さまざまな調査でよくやられる手だ。

調査をした内閣府も、報道する朝日新聞も、そのようなことで「食糧自給率」をコントロールできるとマジメに考えているとしたら、まったくおかしい。いや、もしかしたら不安を煽り、強固な「保護」というタテマエの統制経済をひいて、食糧自給率のコントロールが可能だと考えているのだろうか。

食糧自給率の数値だけを取り上げて、不安を煽っても、よいことなどない。なんども書いてきたように、食糧の輸出入は、それだけで成り立っているのではなく、他の貿易や金融の需給とも密接で、たとえば東京などはガスの輸入がとまったら食糧はあっても食事のしたくができなくなってしまう状態で日々の生活をしている。食糧自給率さえ上げれば食生活は保障されるという考え自体がマチガイなのだ。そして、おそらく、「国際情勢の変化により、輸入が大きく減ったり止まったりする可能性がある」としたら、食糧だけではなく、大混乱になるだろう。それに日本の農産品だって、より高い収益のあがる市場を目指してきているではないか。

食糧自給率の数値は、それ自体が低すぎるか高すぎるかではなくて、その数値を危機にしてしまわない方策を追求することが重要なのだ。不安を煽ることは、まちがった選択、まさに「外国産の方が安い食料は、輸入する方がよい」か「高くても国内で作る方がよい」かといった、現実的ではない選択肢のなかに陥ってしまうことになる。

それに、資本主義という市場経済で生きていくには、それなりの不安やリスクはつきまとう。ま、どんな社会になったところで、不安やリスクはなくならないだろう。そんなことはトウゼンという考えをシッカリ持って、よりよい現実的な選択のために、さまざまな調査や立案の手法も開発されてきたのに……。もっと、知恵や知識や技術を生かすことで、不安やリスクをすくなくしていこう、ということにならないのかね。

しかし、この朝日新聞の報道は、まったくヒドイなあ。これを「客観的」というのだろうか。「食育」もそうだが、ひとの不安を煽って稼いでいるニンゲンが多すぎる。

●追記…読売新聞の記事。全文。

YOMIURI ONLINE 読売新聞
ホーム>政治
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20061221i311.htm

「将来の食料供給に不安」が7割以上…政府世論調査
 内閣府は21日、食料供給に関する世論調査の結果を発表した。

 7割以上の人が日本の現在の食料自給率40%を「低い」とし、76・7%の人が将来の食料供給に不安を感じていることが分かった。

 食料自給率は65年度の73%から、おおむね低下傾向が続いている。40%を低いと感じる人は70・1%で、2000年の前回調査より17・3ポイント増えた。望ましい将来の食料自給率は、「80~60%」と考える人が49%、「50%程度」が20・4%だった。

 将来の食料供給を不安と考える理由を複数回答で尋ねたところ、「国際情勢の変化で輸入が大きく減ったり、止まったりする」(61・6%)、「長期的に見て地球環境問題の深刻化などにより食料増産に限界がある」(56・5%)などが多かった。

 調査は11月、全国の成人3000人を対象に行い、1727人が回答した(回収率57・6%)。

(2006年12月22日9時51分 読売新聞)

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コメント

近藤...

投稿: 吸う | 2006/12/23 23:24

はてさて、どうなるか。
おとなしく紳士的にのみましょうね。
三味線ひいたり踊ったりしないように。
ぐふふふふふ

投稿: エンテツ | 2006/12/23 10:16

近藤さんに浅原のおっさんに、エンテツのおっさん...
癖悪いご機嫌ちゃん野郎ばっかりじゃないっすか...うへっ!

投稿: 吸う | 2006/12/23 09:45

食糧自給率は、それ単独では、
危機管理の指標にはならないでしょうね。
無能な政府にとっては食糧自給率40%は「危機」だ、
と云いたいのだと思っておけばよいような。

食糧廃棄率ってのも、よくわからない数値だけど、
ようするに供給過剰ってことじゃないのでしょうか。
これも無能な政府は消費者に責任を転嫁したいわけで、
そのために食糧廃棄率を利用する。

そういえば一時「食糧備蓄」が叫ばれたことがありましたが、
最近は聞きませんね。どうなったのだろう。
あれは「余剰米」を政府が買い上げる口実だったのか。

むかしから国家による保護を前提とした農政は、
気まぐれ殿様のように、いきあたりばったり。
農業政策はあっても食糧政策なんかないのですよ。

投稿: エンテツ | 2006/12/23 08:31

自給率は危機管理の指標になるのでしょうか。
現状では贅沢すれば自給率は下がる構造なわけで、自給率が低い一方で食品廃棄率は高い状況ですよね。
自給率というモノサシではなく、危機の時には最低限どれだけの食料が必要かという量をはじき出しておくことが必要なのではないでしょうかね。
もっとも、農水省は攻める農政とやらで輸出促進とかも言っておるようで、わけわからんが…

投稿: FEED | 2006/12/22 18:33

そもそも誰かが保障してくれる「絶対安全」なんてないんだよな。むかしの飢饉による餓死だって、広い交易があったら被害はすくなくすんだといわれているし。だんだん広い交易のなかで、たくさんのひとが食べられるようになってきて、交易が広がると新しいリスクも生まれる、それでも必要だから広がっているのに、日本の農政と農業は鎖国保護政策みたいなのが長く続いたから、ちょいと広い交易に対して過剰反応ヒステリー気味じゃないかね。

そりゃともかく、コンドウさんも誘って、来るからね。

投稿: エンテツ | 2006/12/22 15:15

自給率を上げると米不足ん時みたく凶作になった場合に困るんすけどね。

投稿: 吸う | 2006/12/22 09:55

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