ヒゲと情報社会
午前1時をすぎた。この時間に酔ってパソコンに向かっていると不吉末吉で、よからぬジケンにつながりかねないのだが、思いついたときに書いておこう。
おれが企画会社に就職した1970年代前半は、ヒゲの是非が大問題になっていた。長髪も問題になったが、ヒゲほどではなかった。企画会社のクリエイティブの社員(まだ「クリエイティブ」という言葉も一般的ではなかったが)ですら、ヒゲをのばしていると、上司やクライアントからダメが出る、喧嘩を覚悟しなくてはならなかった。実際、それでゴタゴタした場面を、なんども見た。
それは、いわゆる管理社会、もっと正確には工業社会型の管理体制に反逆し自由を主張する、つまり「反体制」の意志として警戒されていたような気がする。まぎれもなく「個」の主張で、ヒゲをのばすには「個」で闘わなくてはならなかった。
が、しかし、いわゆる情報化社会あるいは情報社会になって、そこはガラリかわる。広告や出版もちろん、情報社会の花形メディアの業界では、ヒゲが、やたら幅をきかすようになった。
自由であたたかで優しそう、そして知的そう、個性を尊重しそうな個性的そうな、ヒゲづら。それは情報社会が人間らしさのフリをしているように、人間らしさのフリをした仮面のようである。ヒゲは情報社会の管理文化として体制化したといえそうだ。工業社会の体制のように居丈高なカタイ管理ではなく、仲間風のソフトタッチの管理、そんな管理文化として。あるいは、ややもすると、優柔不断と無能のカモフラージュ。
ヒゲをのばし、うわべと口先はソフトに変わったが、中身とやっていることは、かつての73分けの管理者と、たいして変わらない。やり方がヒゲ的に巧妙になっただけ悪質のような気もする。
いや、べつにヒゲをのばしているひとにウラミがあるわけじゃないですがね。ヒゲは自由でも個性でもなくなったということです。かつてはクセのある貧乏くさいやつがヒゲをのばしていたが、いまじゃ、ジェントリーな管理職がヒゲをはやしている。
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