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2007/05/30

日本そば:中華そば:ラーメン

……身の程もわきまえず、人を裁くようなことばかりしているグルメは、食文化を貶めるだけ。
……やはり食べ物の話に興じる日本人はバカがおおいということさ。

けっきょく、かなしいかな、そういう結論になってしまった。ことわっておくが、そば屋で一緒に飲んだおれの連れは、なかなか食べ物にウルサイが、「グルメ」が大嫌いなのだ。「あなたはグルメですね」なんていわれようものなら、「おれをあんなバカドモと一緒にするな!」と血相を変えて怒る男だ。あんたもう65歳なんだから、あまりカッカするなよ。

眠くて中断した夜中の「女と日本そば」の話を続きを書こう。あまり愉快な話ではない。隣の席の、女にふられた話もあまり楽しいものじゃないが。

ようするにおれの連れが、顔見知りのラーメン屋へ行った。するとそこのオヤジがこんな話をしたというのだ。

このあいだ、冷しラーメンを注文した客がいて、つくって出したら、見るなり「これは冷し中華じゃないか」といわれたので、それなら食べなくてもいいよとスグひっこめた。客は帰って行ったが、ものには言いようがあるだろう。ウチはもう30年以上もこれを冷しラーメンでやっているし、知り合いの札幌のラーメン屋は、もっと前からこれが冷しラーメンだ。ああいうことをいう客がちかごろ増えたけど、どういうわけかね。思っていたのと違うといわれたら説明してやるけど、頭から「これは冷し中華じゃないかだよ」、そんな決まり、だれがつくったんだ、国語教育審議会かい。だいたい食べ物は食べてみて、うまいかうまくないかで判断してもらいたいね。

その話から、むかしは「中華そば」で、ラーメンとはいわなかったよな。そういえば、「そば」といえば中華そばで、いまフツウにそばと呼んでいるものは「日本そば」だったぞ、「そば屋」は「日本そば屋」と呼んでいたぞ。というような話になったのだった。

もともとゴチャマゼのものを分類しようなんて無理があるよ。だけど、そういうことをして偉そうにしたがるのがグルメというやつらでね。やつらは人様を採点し裁くことに夢中で、現実から学ぼうという姿勢がない。しかし「国語教育審議会」とは、うまい表現だな。偉そうなグルメは、方言や土着のもの、店や地域ごとの独自の歴史的発達を認めようとしない御用学者とおなじようなものではないか。そんなところに食文化が開花するだろうか。食文化こそ、それぞれの人びとの作り方しだいの自由なものでなければ。だけど、そういうココロザシのないものがグルメじゃないの。知ったふりして威張りたいだけの低脳の見本みたいな。

そんな話。

ちなみに、あてにならないWikipediaの「ラーメン」には、「呼称の変遷」という項があり、こう書いてある。引用……

昭和20年代までは「支那そば」という呼称が一般的で、「チャンそば」(チャンは中国の意)、「南京そば」(南京は「中国の」あるいは「外来の」程度のニュアンスで、都市としての南京を指すものではない)、あるいは単にそば、汁そばなどと呼ばれることもあった。

戦後、一般にも食べられるようになり支那そばや中華そばと呼ばれるようになった(ラーメンという言葉もあったが、中華そばの方が一般的だった)。この為、戦後の一時期、日本では「そば」「おそば」というとラーメンを指し、蕎麦は「日本そば」と呼称していた時代がある。現在も地方の高齢者の中にはこの呼び方をする人が多く、蕎麦屋を起源としているわけではないのにラーメン屋の店名に「そば」の字がある店も存在する。また、一部の中華料理店では長年「五目そば」とも呼ばれてきた。なお北海道では中華そば、支那そばという呼び方はほとんどされない。

1958年(昭和33年)に日清チキンラーメンが発売され爆発的ヒットして以降は「ラーメン」という呼称が標準的となったが、地域によっては中華そばのほうが通りが良い場合や、ラーメンと中華そばを区別して認識される場合もある。

近年ではラーメンの多様化を受けて、懐古的な意味合いから昔風のラーメンを支那そばと呼ぶ店も増加している

……引用おわり。

おれの体験は、ここに述べらていることに同意する。

また「冷し中華」については、「茹であげた麺を冷やし、酸味を利かせたタレをかけるのが一般的。夏限定で出される事が多く、風物詩ともなっている。なお北海道で「冷やしラーメン」と言うとこちらの方を指す。また、西日本で「冷麺」と言った場合も「盛岡冷麺」ではなく、こちらの方を指す。」とある。ラーメン屋のオヤジがいっていることは、これに即している。

冷しラーメンについては、「冷やし中華とは異なり通常のラーメンを冷たくしたもの」と解説しているが、しかし、冷し中華と冷しラーメンの区別も、かつてはこのように「厳密」ではなかった。

さらに気になるので、手近の本にあたってみた。

『B級グルメの基礎知識』(文藝春秋編、文春文庫ビジュアル版1989年)。「横浜中華街のツウになる基礎知識」「その五 午後の中華ソバがうまいというフシギ」では、「ところでこの街のラーメン事情はどうなっているのだろう」と書き出し、こう述べている。

「ただし、これらが厳密な意味では"ラーメン"と呼べないことを断っておく必要があろう。"ラーメン"といえば具のシナチク、チャーシューが必携品であり、時によってはナルト、ホウレン草、海苔などを伴う、いわば日本帰化食である」と言い切っている。著者は中島るみ子さん。

これに対しては、一例をあげておけば、こと足りるだろう。ごぞんじ、「中華そば」にこだわる荻窪の春木屋の「中華そば」は、そのラーメン必携のシナチク、チャーシュー、海苔入りなのだ。おれの記憶にあるほどんどの「中華そば」はこれであり、1962年に上京してのち、いつのまにか「ラーメン」というようになった。

「日本そば屋」の呼称は、70年代でも、そう呼んでいたような記憶がある。ということは「中華そば」が広く通用していたということか。

「厳密」という言葉を知っていても、「本質」ということを知らなくては意味ないだろう。細かく定義しても本質を欠いたら陳腐なだけだ。「厳密」とは「本質」に忠実になることではないかな。

とにかく、「そば屋」を、ワザワザ「日本そば屋」といわなくてすむようになったのはよかった。

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