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2007/12/11

言葉の変化と食の変化の摩訶不思議関係。

言葉と食の関係はオモシロイ。

当ブログでは以前に、料理の構造と言語の構造について、構造主義に寄った恰好だが、アルシーヴ社の佐藤真さんの論文風エッセイを紹介しながら、書いたことがある。

2003/02/24
料理とは

2003/02/25
料理とは2


出版社の未来社のPR誌『未来』12月号、絵本、童話作家の長谷川摂子さんの連載「ことば・ことば・ことば」が、「「正しい日本語」というユーレイ2 クソババア一家の愛」というタイトルで、これがオモシロイ。

言葉の地域差と社会の階層による格差の話をしている。「同じ社会のなかでの日常の言葉の境界線はいつの時代も、どこの国でも社会階層に即して上中下の縦割りであるらしい。つまり、富裕層、中間層、低所得者層の縦割りである。また、中央集権国家の設立以来、この上中下以外の構造として、方言もからんでいた。」そして、社会階層の格差は、地域差ほど単純ではないという。

「変化は社会も我が家も同じこと、「やべー」のように、たいてい下からやってくることが多い。そこで上から下に苦情が出る。親から子どもに、教師から生徒に、文化人から非文化人へ「ことばがみだれとる」と、苦情が出る。その苦情にはたいてい規範が伴っている。自分のものさしが言語の規範なのだ。」

で、ここで、田中克彦という言語学者の『ことばの差別』(農文協)から引用する。「言語は、規範から外れるという、この誤りなしには決して変化しない。だから、言語の歴史は誤りの歴史である以上、どの言語も誤りのかたまりのようなものだ。」

だから「つまり、「やべー」がいつの日か上層に立つ人の規範的な位置にたつ言葉になりうるということだ。」

という長谷川さんは、「やべー」「こえー」は我が家に入ってくるし、自分も場所柄をわきまえず思わずつかいそうになる、だけど、どうしても我が家に入ってこない言葉に「クソババア」があるという。しばらく、その「クソババア」の話が続いて、これがまたオモシロイ。が、省略。

最後に長谷川さんは、こうまとめる。
「どんな言葉も言葉それ自身には罪はない。同じ言葉が人間関係のありようしだいで暴力にもなるし、複雑な情愛を伝えたりもする。「クソババア」でさえそうだ。しかし、私の母語のなかに「クソババア」は今のところ生理的に入らない。これは仕方のないことだ。私は私の母語を生きるしかない。だが、世の中には上にも下にも私が入れない海があって、その違和感を拭い去ることはなかなかできない。しかし、その違和感をもとに自分の言葉を他者に対して規範にしてはならないと思う。言葉自体として「美しい言葉」とか「正しい言葉」は存在しないのだ。すべてその言葉を使う人間と人間の関係のありようで美しくも醜くもなる。そのことは肝に銘じておきたい。」

これ、「言葉」や「言語」を「料理」や「食」におきかえると、じつにオモシロイ。「食育論者」のバカバカしさもあらわになる。

それに、絶対的にうまいものなどない「うまいまずいは人間関係である」と言ってきたおれの主張と、ほとんど重なる。「マズいという感覚をもったとき、マズいと切り捨てるのはあまりにも人間的に幼稚すぎる。まず、その食堂の人間関係におもいをはせてみる必要があるのだ。そのことで料理や味や人間社会の複雑さを、リアリティーをもって理解を深めることができるはずだ。」と書いたのは、1995年。こちらザ大衆食「大衆食堂の楽しみ方」…クリック地獄

それにそれに、蕎麦やすしや天ぷら、いまじゃカレーライスや丼物の汁かけめしも、かつては貧乏人の「やべー」ものだったしな。魚谷常吉さんは『味覚法楽』で、「貧乏人の食通」について「現今高等料理に使われるものは、ほとんど全部これらの人々の発見、工夫したものであるといってもよい」と言っているしな。…クリック地獄

いやあ、ははは、なんてオモシロイのだろう。

で、もうチョットつけくわえれば、自分がより「上」の人間でありたい願望のために、あるいはその陶酔のために、「美しい(美味しい)料理」「正しい料理」を知るグルメであるかのごとき装いをしたがる人間が少なからずいる。ま、人間だれしも「上」に立ちたいものらしいが、その手段として食が手っとり早い。そしてその人たちのために、さまざまなグルメ雑誌やグルメ本があるというわけである。ごくろうさん。

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