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2008/02/15

小麦値上げのジレンマ。

先日も書いたが、最近の食品の値上げの激しさは、ここ数十年なかったことだ。30数年ほどまえのそれは、まだ経済が虚像にせよインフレ右肩上がりの成長だったが、今回は、「失われた10年」どころか不況からの脱出口は見えていない中でのことで、その影響の予測はつきにくい。

しかも、政府はまたもや、小麦価格を30%値上げするようだ。一挙に3割だ。この値上げ幅の大きさは、昨年2度にわたる値上げのあとのことだけに、どう取り繕っても取り繕いようがない経済破綻の広がりを感じる。

「食生活を支えているものは、(1)栄養、(2)嗜好、(3)経済である」(2005/02/01「社会を考えられなくなった末の栄養、グルメ談義」参照)とする理論にもとづくなら、その「経済」の大きな変動であり、食生活の動向になんらかの影響をおよぼすことになる。

一部では、すでに「生活防衛的」自炊の拡大、つまり外食の切り詰めがみられるらしい。また「コメ回帰」の現象も、たぶんに期待的観測のように思うが、あるらしい。

この小麦価格は、以前からいわれていたことだけど、大変な矛盾を含んでいる。下記の読売の記事は、サラリと「政府は市場価格に、国内農家への補助金の財源分などを上乗せして、製粉会社に売り渡す」と書いているが、つまりある種の「統制経済」であり、その矛盾は、もし小麦値上げの影響が小麦製品の消費の縮小へむかうと、「国内農家への補助金の財源分」への影響まで懸念されるジレンマな構造だ。もちろん、小麦製品の値上げで、需要がコメに傾けば、米作への補助金の財源の軽減がはかられるかもしれず、そこで吸収バランスされる、という考えも成り立つだろう。

でも、それほど、コメにとってシアワセな事態でもないのだ。食品販売の現場からすれば、コメの販売価格は、もう限度ギリギリ、前にも書いたように一部では「クズ米」が炊飯用に売られている事態だ。食費トータルの膨らみはありえないなかでの、財布のうばいあいが激化している。

すでに「新値ごろ感づくり」なる言葉もうまれ、コスト高への対応がすすんでいる。「新値ごろ感」は、あからさまな言い方をすれば、値上げしても「お得感」の演出でカバーしたり、売価をすえおいて材料の変更や削減で利益確保をしても消費者にはマイナスを感じさせないナミダグマシイ演出など、ある種の新たな「虚構」づくりだ。

いずれにせよ、のんきな緊張感のないリッチと、イライラな展望のないプアのみぞを埋めていた、大衆的な「グルメ」は、そろそろ限界をむかえるだろう。平和でモノはあふれているのに買えない、多数を占める貧乏人たちは、どこへ向かい、どんなマーケットが生まれるのだろうか。

大衆的な「グルメ」マーケットは、「グルメ」というが、たぶんに食料価格の動向が背景にあってのことで、「嗜好」のことより実態は「経済」だった。となれば、ますます、コスト高を吸収しやすい経営力やチェーン店を舞台にした「グルメ」になるだろうと想像がつく。さあ、「グルメ評論家」たち、さらに経営力やチェーン力にむらがれ。ま、ラーメンだうどんだといっても、政府から小麦を購入する大会社の力によるもので、彼らの販売促進の手のひらで遊ばせてもらっているにすぎなかったのだ。

しかし、農水省って、ほんと、いらないな。…2008/01/23「農水省がなくなればよくなる。」

輸入小麦価格30%値上げ方針、パン・めん類に波及か
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080215-OYT1T00091.htm?from=top
 農林水産省は14日、政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を、4月から現在より30%引き上げる方針を固めた。

 自民党の了承を得たうえ、15日に正式決定する。世界的な小麦価格の高騰に伴い、値上げ幅としては、農水省に記録がある1970年以降、73年12月の35%に次ぐ2番目の水準になる。

 小麦の売り渡し価格は、2007年4月、10月にも値上げされた。パンやめん類など小麦粉を主な原料に使う食品メーカーは昨年末以降、製品値上げに踏み切っているが、再値上げの可能性が高くなった。

 日本は小麦需要量の約9割を輸入小麦に依存している。政府がほぼ全量を輸入している。政府は市場価格に、国内農家への補助金の財源分などを上乗せして、製粉会社に売り渡す。今回の値上げは、価格を算定する対象期間(07年6月~08年1月)に、海外の小麦相場が約60%上昇したことを反映した。

 この間、政府が輸入した小麦(主要5銘柄)の価格の加重平均をもとに価格を算定すると、4月からの売り渡し価格は40%弱値上げされる計算だが、農水省は、影響を緩和するため値上げ幅を30%に抑える。

(2008年2月15日03時01分 読売新聞)

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