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2008/07/22

「グルメ」といわずに「スノッブ」といおう。

わが「文壇高円寺」ブログの荻原魚雷さんが編集の「吉行淳之介エッセイコレクション」ちくま文庫全4巻のうちの1巻目に、「スノッブについて」という掌編がある。

きょう、コツコツ仕事の合間に読んだのだが、なぜ読んだかというと、「dankaiパンチ」8月号のパンチ図書館で、中上哲夫さんが「クローズアップ 不滅の人気作家・吉行淳之介」というのを2ページも書いていて、そこに写真入りで、「オススメ吉行本5冊」つうのがある。そのうちの4冊が、このエッセイコレクションで、もう1冊が「原色の街・驟雨」新潮文庫なのだ。

それで、おおっ、そういえば、この5冊はあるぞ、ほかに吉行本というと「贋食物誌」新潮文庫を持っているだけだ、と思い出し、この1巻を手にしたのだった。

そりゃそうと、吉行さんは、その書き出しで、「スノッブとは、簡単にいえば「上品ぶる俗物」とか「いなか紳士」とかいう意味である」と述べる。

おお、そうか、そのようであるな。ま、イコール、「教養ぶる俗物」とか「知ったかぶる俗物」とか「知識情報ひけらかし俗物」とか、コンニチふうに「オシャレぶる俗物」とか、「アートぶる俗物」とか、いろんな言い方が、どどどどど~と脳から浮かんだ。

そして吉行さんは、翻訳を手こずったという、イギルスの作家キングスレー・エイミスの「酒について」を持ち出す。「このエイミスの書物が、アンチ・スノッブで一貫していて、それも酒について語りながら人生全般に対する姿勢という趣がある」というぐあいなのだ。なんだか、アンチ・グルメのおれのことのようだなあ~と、ぎゃははは、そうは思わなかったが。

で、「たとえば、エイミスは「ワイン・スノッブ」という言葉を使って、これをからかう」と。この場合の、「スノッブ」というのが、どうやら昨今の「グルメ」とイコールのようであるのだ。

以下引用…………………………………………

 ところで、エイミスの言う「ワイン・スノッブ」というのは、その実体はどういうものか。
『良いぶどう酒というのには、あきあきしたよ。むしろ、悪いぶどう酒というやつのほうが、私は好きだね』
 という言葉が、本場でもある。
 これは禅問答のような言葉だが、くだいて言うと、
『良いぶどう酒というやつは、いろいろ講釈がついてうるさくて厭になる。むしろ有名でないぶどう酒を余計なことを聞かずに飲んだほうが気分がいい』
 と解釈してよいだろう。
 別の言い方をすれば、飲食物というのは、その個人個人の、それもその日の気分によって大きく左右されるものだから、余計なことを傍から言うのはよくないということになる。
 エイミスもそういう見解の上に立って物事を見ているが、そのエイミスでも「あっ」と驚いた話を聞かされた、と書いている。
 ある田舎の老夫婦が、グリルした鰈を食べながら、ペパーミントの甘い酒を飲んでいた、という話しを聞かされたときである。私がその感じを想像しても、胃のあたりが鬱陶しくなってくるが、エイミスは驚きながらも、
『その酒が小瓶であったことを、私は祈りたい』
 というような言い方をするだけの柔軟性を持っている。

…………………………………………引用、おわり。

じつは、この1巻は、おれとは無縁どころか、おれが嫌いな「紳士」がテーマなのであり、だから、この引用の最後のところが、書き出しの「スノッブとは、簡単にいえば「上品ぶる俗物」とか「いなか紳士」とかいう意味である」との関係で生きてくる。まっこと、エイミスは紳士なのである。そして、そういう意味では、なるほど、見渡したところ「グルメ」に、紳士は、あまりいないよなあと思う。「グルメ」って「スノッブ」なんだよなあと思う。

この引用のところの、「ぶどう酒」を、ハヤリの「焼酎」でも「純米酒」でも「スイーツ」でも「モツ」でも、あるいはほかの食べ物や「大衆酒場」や「立ち飲み」や「下町」や「昭和}など、はたまたナチュラルライフな雑貨や本などに置き換えてみよう、いまや「スノッブ」だらけなのだ。

と、かくいう「アンチ・スノッブ」も、「アンチ・紳士」も、頑なになると、おれのようなアンチなだけのスノッブになるというのが、引用のところの含蓄でもある。

ですがね、わが「飲み人の会」は、このように主張している。「「ザ大衆食」のサイトを主宰するエンテツの楽しく飲む人たちの会。よい店よい酒よい料理にこだわることなく、楽しく飲む人間をみがく。なんてね。」

「よい店よい酒よい料理」なんてものは、「いろいろ講釈がついてうるさくて厭になる」、「むしろ有名でない」店や酒や料理を「余計なことを聞かずに」楽しんだほうが「気分がいい」。と、こういうわけだから、おれは、やっぱり、エイミスさんのような、ホントウの紳士なのかもしれない。

うふふふふふ。紳士は、みずから紳士ぶらないものである。「紳士、大嫌い」といったりする。控えめなのだ。

そんなわけねえか。おれは野蛮人だよ。おまえと一発やりたいだけだ。文句あるか!

いや、ほんと、おれは安くてマズイ飲食店が好きなのさ。「良い飲食店」なんか、あきあきしたよ。

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