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2008/10/28

シンドイしんどい「ゲーム感覚」のグルメとアンビテンデンツ。

きのうのつづき。

「ゲーム感覚のグルメ」なる表現がマスコミで使われたのは、いつごろだったか。とにかくラーメンやカレーライスといった「B級グルメ」が騒々しい90年代後半以降のことだったとおもう。

この「ゲーム感覚」って言葉の意味なり意図は、かならずしも明快ではなかった気がするが、流行のパソコンゲームをやるような感覚がイメージされていたようではある。

それは、野田正彰さんが「新・都鄙問答のすすめ」で書いていることにちかい、っていうか、こういうことだろうとおもう。

そこでは「ゲームの勝利の快感に条件づけられ、快感を味わうために常に競争に没頭するようになる」

勝利するとは限らないが、勝利の快感に条件づけられた脳糞は競争に没頭し、競争そのものに快感するようになる。飲食店に「勝負」をしに行き「何軒くいたおした」といったことを口にする、「至高」「究極」といった高水準の得点を快感する。グルメ同士の競争、「勝負」。『美味しんぼ』などは、そういう先陣をきっていたのだが、「カレー勝負」だの「ナントカ勝負」だの、ゲーム感覚モロだしストリップではなかったか。

そんなゲーム感覚のグルメ脳になった背景は、意外に、野田さんが指摘する戦後の日本社会と密接だ。たしかにラーメンやカレーの食べ歩き、その他の単品グルメ、立ち飲みや居酒屋飲み歩きツアーにしても、やけに日本的な現象のようだ。

「新・都鄙問答のすすめ」では、日本の近代化は、コンプレックスを熱源としていたが、「敗戦によって決定的に打ちのめされ、次には生き残ることが精一杯の社会状況になった」と。「しかし朝鮮戦争の特需を契機に、死活の意識はなくなり、追いつき追いこせという経済戦争の社会に変った」

「そこではコンプレックスのような熱源によって動くのではなく、ゲームの勝利の快感に条件づけられ、快感を味わうために常に競争に没頭するようになる」

と、「アンビテンデンツを落差のエネルギーとして動く社会」を解剖してみせてくれる。野田さんは食やグルメには触れてないのだが、「グルメ現象」や「B級グルメ現象」に、そっくりあてはまりそうだ。そもそも、「グルメ」なるものが社会現象になるのは、この「新・都鄙問答のすすめ」の3年ほど前からである。

「こうしてモデルとすべき社会を喪って、アンビテンデンツをエネルギーとする複雑な状況に私たちは投げ込まれている」

「複雑な状況」は「迷走」といってよいだろう。消費の迷走、生活の喪失。これほど、ラーメンやカレーやおでんや、イタリアン、さぬきうどん、スィーツ、あるいは立ち飲みや居酒屋や、そのほか細分化された仔細な「至高」「究極」は話題になるのに、モデルとすべき食については、「うまいもの好き」に没頭な人たち、あるいはなにやら食の「研究家」や「評論家」という人たちの口から、話題になる注目に値する提唱はない。

メディアを見ると「うまいもの好き」であふれているようだが、そこからはモデルとすべき食は見えてこない。そして、一方で、食の不安や安全がいわれ、栄養と健康に偏向した食育基本法なんてものが生まれ、官製の現実的ではないモデルが押し付けられる状況だ。

「今、東京は、社会の変化を経済の視点からのみ語るエコノミストの花盛りである。彼らの論評には、どんな人生を生きようとするのか、どんな社会を作ろうとするのか、問いかけがない」と野田さんは指摘しているが、食の分野にもあてはまる。

残念ながら、食の分野では、この「エコノミスト」に匹敵するような人物すらいない。ただただ東京を日本を世界を食べ歩いたというだけの「ゲーム感覚」グルメが「ライター」や「研究家」や「評論家」の肩書だったりするが、せいぜい「消費のリーダー」、ようするにグルメや栄養や健康に偏向した食の語りばかりで、「彼らの論評には、どんな人生を生きようとするのか、どんな社会を作ろうとするのか、問いかけがない」

拙著『汁かけめし快食學』や『大衆食堂の研究』などは、そういう問いかけをしているが、いま「食」に関心がある人たちにとっては余計なことらしい。

一方で食は、日々大騒ぎの大きな「社会問題」になっているのにねえ、出口は見えない。快食快便というわけにいかず、迷走便秘の日々だ。ビチビチビチ糞すら出ない。ブリッ。

いったい未来への想像へ結びつかない「食べる」という行為は、なんなんだろうか。まさに、消費、なのだ。ひたすら、追い立てられるように、消費する。そして脳糞は能書きとデータでぶくぶく膨らむ。

野田さんは、そんなアンバイの東京や大都市に対して「地方は大都市に何を呈示できるか」を語っているけど、きょうは、ここまで。

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