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2009/10/06

うまいものにこだわる「窮屈至極な食べ物の世界」と「農業ブーム」。

2,3日前のことになるが、「書評のメルマガ」に連載の「食の本つまみぐい」の原稿を書いて送った。隔月連載で前回の8月は取材で忙しかったから休んだ。「書評のメルマガ」は今年で幕を閉じるので、あと今回の10月と、来月の12月だけだ。ま、だからといって、どうということはない。

取りあげたのは、1992年11月発行の別冊宝島『もっと食わせろ!』JICC出版局だ。「日本で最も美しい村」連合の取材のとき、いわゆる「農業ブーム」は約20年前ごろからの変化と関係するのではないかとピンとくることがあった。「そのころから顕著になった、日本の食と農が直面する大きな問題を、「胃袋ビジネスの裏のウラ」とセンセーショナルな書き方でチョイと分析のおかしいところもあるが、大雑把に総花的に知るには、本書は好都合だ」ということで、これにした。

タイトルは「「農業ブーム」の根にあること」ってことで書いた。一部を抜書き紹介すると、こんなことを書いた。以下。


本書の「まえがき」に相当する「たかがメシの話から」の書き出しは、こうだ。「うまいもんが食いたい! そう思って本書を開いても、ここには「究極の味の店」の紹介もなければ、「食が危ない! もっと安全な食べ物を!」と叫ぶ声もない。この両極端ともいえる「食」への関心のはざまに、われわれの「日々の食」はあるのだ」(略)

いまだって都会では、細分化された「専門」に特化した「グルメ談義」と「安全・安心・健康」のはざまで、「日々の食」「たかがメシの話」への関心は、きわめて低レベルといわざるをえない。人間だからなのか、日本人だからなのか、にっちもさっちもいかなくなってからでないと自ら変れない、手を打てない。「日々の食」「たかがメシ」もグルメネタになってしまうグルメ談義のほうが盛んで、反比例するように農業の衰退が続いたのち、行きづまった現実が目の前になって、農業政策の「転換」が始まった。「小泉改革」というと郵政が注目されるが、むしろ農政だった。(略)

「日本社会は、どうやらまだまだ幻の"うまいもの"を、忘れものを探すように、生真面目に追い求めている」「その窮屈至極な食べ物の世界に、ジャーナリズムが大きな風穴を開けるのはいつの日のことになるのだろうか」とライターの一人、林巧さんは「現代ニッポン人の味覚の指向を決めた男たち」で書く。(略)


以上。いまだ、「日々の食」「たかがメシの話」より、「名店」だの「名品」だのを「生真面目に追い求めている」人たちが、少なくともメディアでは大勢であるようだ。では、それと「農業ブーム」は関係あるのか?

日本の「うまいもの談義」は、都会の「インテリ旦那芸」という伝統芸をシッカリ受け継いでいる。自分は畑を耕すことなく、毎日の「義務」として台所に立つ必要もない、好きなときに好きなものを食べ書に親しむ、余裕のあるインテリ旦那芸である。

それはそれでインテリ旦那方の趣味や娯楽としてはよかろうが、そんなものを「食」の手本にするとなると話はちがう。それでは、いつまでたっても「食」について「気兼ねなく本音など吐ける道理もない」。そんな状態が、延々と続いている。偉大なる惰性というしかない。

「生真面目」ほど、困ったものはない。「生真面目」の前では本音を語れなくなるだけでなく、「生真面目」には、排除がつきものだからだ。そもそも、自分の舌や感覚が絶対と思っているひとには、他者を理解する余裕がない。味覚の多様性など理解できないのである。日本の「グルメ」は、まるで思想闘争か政治闘争のようなアンバイだ。これじゃあ、まっとうに本音で農業を語ることもできない。みんな「無農薬有機栽培」礼讃論者になってしまうのである。食べ物のことが、ゆきつくところ「国粋主義」なのである。じつに窮屈至極だ。

「名店」「名品」をふりかざす連中をのさばらせてはならない。民主主義の崩壊につながる。って、これまた「生真面目」であるな。なにごとも、イイカゲン、テキトウ、がよいのだ。

ま、そのうち発行になる「書評のメルマガ」を読んでください。

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