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2009/10/19

「ミシュラン」の黄昏 1。白金の憂鬱。

054_2では、2009/10/14「万盛庵のカレーうどんと漬物。」に約束したように、「ミシュラン」のことについて書こうと思う。

先日の「商店街ぶらぶらロケハン」では、正午のころ「町屋のときわ食堂」へ行った。「町屋のときわ食堂」というと人気店有名店であり、たいがい、京成線沿いの、そこのことである。が、おれは、姉妹店の、町屋地下鉄駅ビル地下にある「ときわ」へ同行の2人を案内した。それにはワケがあるのだが省略。そこで飲食が終わってから、イチオウ「町屋のときわ食堂」の前へ行った。この最初の画像が、それ。

055ときわ食堂は変わりがなかった。変ったのは、前の京成線の景色だ。高架の下にあった造作が、きれいさっぱり消えて、金網が張りめぐらされた。そうなのだ、おなじ京成線の日暮里と新三河島のあいだの高架下にあった竹屋食堂も追い立てをくらい退去して、そこも同じような有様になっている。なんとまあ、せちがらいというか、大らかさを失っていく東京の姿である。都内に近年ふえた風景の一つというと、このように鉄道の高架下をキレイにし、金網で囲ってしまうことだ。こういうことの先に、どんな未来があるというのだろう。東京は、高架下があっての、活気ではなかったか。「下層」を大事にしない文明は滅びる。と、誰か、って、おれがいまいった。

東京は変ったのである。とうのむかし「浅草の灯は消えてしまった」と、「消えた劇場の戦後史」で森秀男さんが書いたのは、『東京人』1986年秋、創刊4号だ。

050225matiya_tokiwamaeこの最後の画像は、2005年2月、ときわ食堂の前の京成線高架下だ。画像の左手に古本屋があったと記憶していた。高架下の古本屋なのか、住人がいるかいないかわからない高架下の住居の軒先を借りての営業だったか、確かなことは知らないが、そこも当然なくなっていた。

そして、ちょうどその前あたり、ときわ食堂の並びで町屋駅へ向かう方向、キレイになった高架下を撮影しているあたりの道路沿いの狭い隙間に、箱や本棚を置いて、これはどう見ても露天の古本屋が営業していた。おれは、高架下にあったのが、ここに移って営業しているのだろうかと思いながら、その箱をのぞいた。すると、『東京人』1986年秋、創刊4号があった。250円で買った。

1986年というと、いわゆる「バブル景気」の始まりのころになる。「私のなかの東京」というテーマで、何人かの著名人が書いている。古井由吉さんの「白金の憂鬱」を読んだ。古井さんは、かつて「白金」に住んでいたが、いまの地名の「白金」はあまりにも違って見当を狂わせられると書いたあと、こういう。

「しかし旧町名復活の声には、私はほぼ与さない者である。地元の住人たちがその暮らしの中から叫ぶのなら、耳を傾けたいが、たいていの場合、じつのところ、その声を聞くだけでも憂鬱になる」

「変ったのは町名だけではない。土地も変った、暮らしも変った、人も変った。四十年あまり前の戦災のせいよりも、それよりもはるかに多く、ここ二十何年にもおよぶ狂奔のせいである。しかもその狂奔の元には、すこしでも豊かな暮らしをもとめる、是非もない衝動があったと思われる。つまり、元が貧しかったということなのだ。そして貧しい者たちの殺到は、いったん走り出したら、程々のところで停めるというわけにはいかない」

「狂奔の流れがようやく滞りかけて、われわれは立ち止まり、あるいは立ち止まされ、身辺の荒涼に唖然としている、というところがここ五年ばかりの現状だろう」

確かに、そうだと思う。そして、そうだと思うと同時に、その狂奔は、「グルメ」に関していえば、「一億総グルメ」が流行語になった、そのころから、ますます荒れ狂ったのだった。「その狂奔の流れがようやく滞りかけて、われわれは立ち止まり、あるいは立ち止まされ」、人によっては「身辺の荒涼に唖然としている」のが近頃なのではないかと思う。

この話は、「ミシュラン」の黄昏の、ほんの露払いのようなもので、まもなく午前2時になるいま、眠いし、明日もいろいろあるので寝ることにした。つづく。

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