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2010/04/16

山﨑邦紀監督は、希望である。

きのうは、感慨の多い一日だった。

山﨑監督のお誘いで、監督の最新作を現像所の試写会で観た。それは東京都調布市国領にある東映の現像所、東映ラボ・テックであった。

ここ東大宮から新宿に出て、京王線柴崎駅。16時半の待ち合わせだったが、早く出た。柴崎駅の一つ手前がつつじヶ丘駅で、急行から各駅停車に乗り換えるために降りた。つつじヶ丘は、1962年の春、上京したときに最初に住んだところだ。そこは、かつては「金子」という駅だった。おれが小学校に上がる前まで、そこに母方の祖母の家族が住んでいて、よく行ったりしたところでもある。

各駅停車に乗ろうとすると、ちょうど山﨑さんとバッタリ。柴崎に着いたら、16時ぐらいで、ほかの人たちが来るまで、駅前の喫茶店に入った。あれこれオシャベリをした。山﨑さんと同じ「旦々舎」の浜野佐知監督は、40年前から東映ラボに通っていると聞いた。40年間、この間に、映画は産業として急激に斜陽化した。浜野さんは、そういう時代にピンク映画を撮り続け、かつそれだけで終わらず、近年話題の尾崎翠映画を撮っているのだと、あらためて思った。

この試写会に先立って、先日映倫と配給会社の試写があって、そこで配給会社のひとに、配給会社というのは映画製作のカネを出しているのだが、「なんでこんなものにカネを出しているかわからん」といわれたと、山﨑さんは静かに笑いながら言った。まいどのことながら、「こんなもの」というのは、「こんなエロでないもの」という意味だろうが、山﨑さんは「おれは、これがエロだと思っているのだけど、なにがエロかはそれぞれだからね」と、また静かに笑った。

山﨑さんの映画は、フツウの映画館で上映できそうなものだし、フツウの映画館で上映される、ろくでもない映画より、はるかに内容的にも映像的にも価値があると思うのだが、そういう映画にピンク上映館に配給する配給元がカネを出し、出しておきながら、「なんでこんなものにカネを出しているかわからん」と言い、制作したひとは「おれはこれがエロだと思う」という、なんだか渾沌な関係は、なんだかおもしろい。世の中、こういうものではないか。

その映画は、すごくおもしろかった。どうおもしろかったか書きたいのだが、うまく書けない。とにかく、2008/02/10「理屈っぽいピンク映画と泥酔記憶喪失、雪の夜路上に死す。」に書いたが、「とにかく山崎さんは理屈っぽい。ブログもそうだが。ボクはああでもなくこうでもなくだからこうでああで、ではヤルゾという感じでからみパコパコする。モノローグ10分に3秒のからみパコパコ早漏という感じである」と書いたけど、今回は違うのである。ソクラテスもニーチェも出てこない。

かといって、まったくリクツがないわけじゃなく、「尻子玉」っていう宇宙観的キーワドのリクツがいちおうあるのだが、それに関する哲学的吐露のようなものはわずか。「モノローグ10分に3秒のからみパコパコ早漏という感じ」ではなく、モノローグとからみなど性的場面は、それでも6対4か7対3ぐらいだろうか、「尻子玉」が愉快な牽引役となって、わりとクルクル軽快に展開する。軽快かつコミカルなのだ。笑えたし、最後は爆笑でありました。山﨑監督独特の、フェチといいたいほど、こだわった画面づくりは、いうまでもなく感心ものだった。おもしろいもの見たな~、で終わった。上等なコメディ映画としても通用しそうなものだ。エロコメディ=エロコメという分野はあるのだろうか。

ぜひ多くの人に見て欲しいのだが。そのタイトルが「美尻エクスタシー 白昼の穴快楽」というもので、中身なんぞまったく関係ない、ピンク映画館用のタイトルがついている。山﨑監督だって、タイトルを覚えていないぐらいだ。しかし、以前に見たものもそうだけど、このタイトルにカネを出して映画館で見たひとは、どういう気持になるのだろうか、おもしろい。

もちろん浜野監督も来ていたし、以前にも出演の映画を観たことがあり上映会あとの飲み会でも挨拶ぐらいはしたことがある、出演女優の1人、里見瑶子さんもいた。このあいだ、1人で東大宮まで来て「ちゃぶだい」あたりで飲んだ多田さんのほかに、南陀楼綾繁さんも来ていた。

みなさん旦々舎で打ち上げをやるということだったが、きのうはえらく寒いこともあってか、おれはチョイと風邪気味がひどくなりそうだし、いま寝込むわけにはいかないので、用心深く遠慮し、南陀楼さんと柴崎駅へもどる。

帰りの電車で南陀楼さんと、あれこれオシャベリ。やはり山﨑監督の上映会をやりたいねえという話になる。いま、出版不況だ、やれデジタルだ電子書籍だと騒いでいるけど、映画は、もう長年不況の斜陽を続けている、そのなかで、山﨑さんのような生き方があるのだから、これはすごいですよね、希望だよねと。

南陀楼さんも、またナニゴトか始めるようで、チラシをもらった。そのことは、またあらためて書く。

近頃のメディアをめぐる騒動は、カンジンな議論が欠けているような気がする。ま、ブームというのは、そういうものだが。

南陀楼さんのブログで詳しい紹介があります。
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20100415

海外からの招聘が多い、旦々舎。もっと国内の人たちに観てほしい。
http://www.h3.dion.ne.jp/~tantan-s/
山﨑邦紀さんのブログ
http://blog.7th-sense.sub.jp/

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コメント

試写会、ありがとうございました。ほんと、おもしろかったです。「尻子玉」は傑作。いろいろつかえそう。

めずらしく体調不良で、打ち上げは参加できず残念でした。飲み会をやりますので、そのときは連絡します。

きょうも、ただいま二日酔い。

投稿: エンテツ | 2010/04/17 13:32

鼻声のなか、調布まで来て頂きありがとうございます。今回はわたしのフェチ性を優先したため、喜んでいるのはわたしだけではないかという懸念があったのですが、試写が終わって振り返ったら、エンテツさんの素晴らしい笑顔があったので、安堵の胸を撫で下ろしました。
配給会社も「なんでこんなものにカネを出しているかわからん」とまでは、さすがに言ってないのですが、「尻子玉って一体なんだ?」「バカげたことに大真面目に取り組んでいて、しらけた」「どれぐらいの人がエロを感じるか疑問」といった声が相次ぎました。
毎回のことではありますが、わたしは今回の企画を通してくれただけで万々歳なので、嬉しく批判を聞きました。次があるかどうか分かりませんが、スタッフや役者が睡眠時間1~2時間で3日間取り組んだ甲斐があったと思っています。
打ち上げは残念でしたが、機会があったらエンテツさん関係の飲み会に参加させてください。

投稿: ヤマザキ | 2010/04/17 06:39

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