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2010/07/16

ジャンク、パンク、先駆。気取るな!力強くめしをくえ!『大衆食堂の研究』15周年。

15周年というのが、どういう意味を持つか知らないが、『大衆食堂の研究』発刊15周年だということを、今朝の夢かうつつかのまどろみのなかで気がついた。

そう、『大衆食堂の研究』の奥付にある発行日は1995年7月31日だが、書店に並んだのは、それより少し前だった。この本が、おれの「出版デビュー」作で、「フリーライター」という肩書への転機になった。

なにも感慨はない。あるとすれば、よくまあ売れないものだ、ぐらいのものだ。15年かかって、新刊の『みんなの大衆めし』まで何冊もなく、ことごとく売れない。とはいえ、この内容あるいは書き方では、そう簡単には売れないだろうなあと思っているから、気にはならない。

『大衆食堂の研究』が出た前後から、大衆食の分野は「ブーム」といえるほどの状況に現在もあるのだが、おれはザ大衆食のサイトに「あたふた流行の言説にふりまわされることなく、ゆうゆうと食文化を楽しみたい」と書いているように、消費主義的な「ブーム」とは距離をおいている。ま、コツコツなのだ。

しかし、ほんのわずかだが、ありがたくも、書くチャンスを与えてくださる方がいて、新聞やら雑誌やら、あちこちに書いたものも、15年もたつと、けっこうある。

ふところは豊かにならないが、「気取るな!力強くめしをくえ!」と、気取ったキレイゴトに酒臭い息を吐きかけるように、いかがわしい空気をまきちらし、意気は衰えない。ジャンクでパンク、ニヒルでアナーキーは、お気に入りである。もちろん偏屈である。偏屈には、育ちの悪さに加え、老齢化の磨きがかかってきた。

まだまだこの調子でやりたいと思うのだが、本を出してくれる出版社や、安い原稿料でもよいから使ってくれる編集者がいないと、やれない。はて、これから、どうなりましょうか。

ともあれ、『大衆食堂の研究』、いま読んでも容色あるいは妖色おとろえず、なんら反省するところなくおもしろい。

ついでだが、『ぶっかけめしの悦楽』も、とくに『汁かけめし快食學』は、これからますます意味を持つのであり、理解する人が増える内容であると確信している。

ってわけで、初版でおわる売れないライターでも、懲りずに自信満々なのだ。こんなばかなおれの著作をご愛顧くださっている、ごく少数の貴重な皆様方、どうもありがとうございます。

それでは、、『大衆食堂の研究』から。

 食堂でめしをくう。それはたんに安いめしをくうのではない。ただ安いだけならガストもある、スタンドの丼屋もある。コンビニの弁当だっていいかもしれない。
 じゃあ、健康栄養か。ちがう。栄養素なんてごくささいな記号にすぎない。痩身美容健康長寿ちゃんちゃらおかしい。食堂のめしってのはそんなもんじゃない。食堂のめしはもっと生存の根源にかかわるめしなのである。
 栄養や料理や食文化については、うるさいほど騒がれた。しかし、生存について語られることがどれだけあっただろうか。語られるのは、あいかわらず、歴代上流階級・欧米上流階級を崇拝模倣する、「上品」で「文化的」で「芸術的」な、見栄ライフ、快楽シーン、物知り顔なウンチク。
 七〇年代あたりから饒舌になった、こういうグルメ・食文化もどきは、同じことを言う。日本は、やっと、食の文化を考えられるゆとりができたのだ、と。それまでは、くうだけで精一杯だった、と。ようするにくうことの心配がなくなったから、グルメ・食文化がやれる、ということである。これはほんとうだろうか。もちろんデタラメのウソだ。すくなくとも、料理評論家だ食文化評論家だというやつらが、「フード・ビジネス」にくわせてもらえるようになったのは確かだろうが。
 ようするに、七〇年代以後の華やかなグルメ・食文化ブームは、エサの心配がない生簀の魚にはグルメも文化もあるが、川や海で生きている魚にはグルメや文化はない、という理屈なのである。これを「生簀文化論」と呼ぼう。
  この生簀文化論の特徴は、生簀がなくても生存はあるし、生存があれば、そこにグルメも文化もある、というところは考えないのである。

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『東京定食屋ブック』は企画協力と一部原稿の共著。

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