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2011/02/18

「食べ物」と「食べる」のあいだ。

木村衣有子さんの新刊が出る。

タイトルは『あのとき食べた、海老の尻尾』と決まりました。
3月15日、大和出版より刊行予定です。
『味見はるあき』を気に入ってくれた編集者が編んでくれた食べものエッセイ集です。はるあきの続編、いや、続編にしてはずいぶんたっぷりした本になります。

…と、「木村衣有子の野営〜観音うらメモ」にある。
http://mitake75.petit.cc/banana/20110217142509.html

そういうわけで、3月20日の日曜日、木村さんのトークライブがある。その相手を、おれがつとめることになった。えーと、場所は聞いたような気がするけど、忘れた。時間は、また決まってない。とにかく、後日くわしい告知をするから、3月20日、予定しておいてちょーだい。

ところで『味見はるあき』だが、2010/07/25「神田神保町「路地と人」のち鬼子母神通り「みちくさ市」泥酔帰宅。」に、買ったことを書影を載せ書いたまんま、詳しい紹介も感想も書いてなかった。

016_2ほかの文章でも、木村さんが「食」を語るとき気になっていたのだが、『味見はるあき』を読んで、やっぱりね、と思ったことがある。

じつは、「食べ物」と「食べる」話は、みなよく書くのだけど、「食べ物」と「食べる」の区別がついている文筆家モノカキは、少ないように思う。文化人類学系とか社会学系などの「学者」さんは別として、いわゆる文学系や文芸系というのかな、とくにそういう傾向がある。かなり混乱している例は、めずらしくない。

ある著名な料理人が、本に書かれている料理だったか食べ物だったかの話は、半分ぐらいはウソだと言っていたと思うが、そういう発言が出るのも、一つには、「食べ物」と「食べる」の激しい混乱に原因があるように思う。

木村さんの場合、いわゆる文筆家であるけど、「食べ物」と「食べる」と、そのあいだが、見えている。見えているな、という感じがしていたのだが、『味見はるあき』を読んで、やっぱり見えていると確信したのだった。

このリトルブックには、「食べものエッセイ集」という肩書がついている。では、「食べ物」のエッセイ集かというと、そうではない。大部分は、「食べる」に関わる話なのだ。とはいえ、それでも、習慣的には「食べものエッセイ集」になるだろうし、「食べ物と食べるエッセイ集」なんてするのは、みっともない。

そして、たいがいの文筆家は、そのまま混乱を本文に持ち込むのだが、木村さんはちがうのだな。

たとえば、それぞれの掌編のタイトルのそばに、小さく肩書に相当するものがついている。最初の「うなぎはごちそう」には、「食べる」である。つぎの「れんげ愛」には、「食べるための道具」といったぐあいで、ほかに登場する肩書は、「本を読む」「ひとり暮らし」「食べられないもの」「ふたり暮らし」「甘味」といったぐあいだ。

もちろん、たいがいは「食べ物」に関係するのだけど、それは「食べる」なかに、キッチリ位置ずいている。つまり、「生活の中の料理」あるいは「生活の中の食べ物」というのは、そういうものだろう。

仮に非日常的な食べ物にせよ、街や暮らしから離れてありえない。ところが、大雑把に3つばかり、情報として、大きく離れる場合がある。

一つは、文学あるいは芸術の中の食べ物。
一つは、広告の中の食べ物。
一つは、栄養学の中の食べ物。

その情報によって、ますます混乱は深まってきた。が、ここまで混乱が深まると、その現実に疑問を抱くひとも、一方には生れる。最近、そういうひとや企画に出あう機会が増えた。

木村さんの場合、そういう疑問から発したものではなく、なにをみるときでも、まるで据物切りをする剣術家のように、対象を見据えることによるものだろう。

大勢としては、まだ「売れている」ゆえに「売れる」と判断される食べものエッセイは、たいがい上の三つの枠組みになる傾向があり、いまのところ『味見はるあき』のような傾向は、まだ端緒的かも知れない。それが、『味見はるあき』を、出版社の刊行ではなく、リトルブックの私家本として出さざるを得なかった根っこにある問題と、想像できる。

でもね、これからは、どんどん違ってくると思う。「『味見はるあき』を気に入ってくれた編集者が編んでくれた食べものエッセイ集です。はるあきの続編、いや、続編にしてはずいぶんたっぷりした本になります」というのは、とても希望が持てる、うれしい話だ。

と、この件を突っ込んで書いていると長くなるからやめよう。もしかすると、トークライブで、そういう話ができるかも知れない。

ともあれ、だから、木村さんと食べ物や食べることについて語り合えるだろう3月20日のトークライブは楽しみなのだ。たぶん、泥酔しながらになるだろうけど。

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