« 3月20日、木村衣有子×遠藤哲夫トークショー。 | トップページ | これが木村衣有子『あのとき食べた、海老の尻尾』だ。と、発刊記念トーク×エンテツ。 »

2011/03/09

素晴らしい料理の世界。太田尻出版、『レシピとそのレシピ』。

Otajirike_recipe1経堂の太田尻家が、店で出す料理から、いくつかピックアップしてまとめた料理本を、自らの手でつくり、出版した。

このあいだも、おれと太田尻家の家長は兄弟かと聞かれたが、ちがいますよ。なんだか雰囲気が似ているらしい。ボーとした感じが?

おれはボーとしていて、その顔のままズボラで大雑把でモノグサだけど、家長は繊細で器用でマメで、なんでも上手にこなしてしまう。結婚ン回も、おれより若くして達成。そして、04年、経堂に「太田尻家」という一膳飯屋のようなバーを始めた。太田尻家のヨメは、智子さんで、おれの初めての本『大衆食堂の研究』の表紙・本文のイラストと装丁をやっていただいた(当時は、太田智子さん)。

という話は、ザ大衆食「太田尻家」を見てもらったほうがよい。
http://homepage2.nifty.com/entetsu/sin/ootajirike.htm

とにかく、夫婦揃って、物づくりが好きで得意である。家長の料理は、店を始める前からうまかった。というわけで、そのまわりには、家長もこの本の「ごあいさつ」でいうように、「類は友を呼ぶ」で、好きなひとたちが集まり、この本に至った。

Otajirike_recipe2いまはやりのように見えるアートフルな手製本は、本の「物」としてのアートに凝ってはいても、内容とのバランスにチグハグを感じることが少なくない。だけど、この本は、ちがいます。

イラストは、もちろん太田尻家のヨメ、智子さん。デザイン、三浦樹人さん。製本に井上容子さん。が、名を連ね、印刷は株式会社JAMと奥付にある。それぞれ、モチ屋はモチに力を発揮している。

おれとしては、やはり文章に注目したい。よこ組のよこ書きは、家長によるもので、レシピと解説を主に書いている。たて書きは、今村亮太さんによるもので、そのレシピとなった料理に、寄せた、あるいは料理から発した、文章である。

レシピと、その料理に寄せた文あるいは料理から発した文という構成は、おれは前からやってみたくて、きょねん、小学館のWEBサイト「わははめし」の連載で、料理研究家の瀬尾幸子さんの料理に文章を添えるカタチで、あるていど試みることができた。『みんなの大衆めし』では、あまりにも短いコラムに変更になって、うまくやれたとはいえないが、「わははめし」では、それなりの感触がつかめた。

Otajirike_recipe6_2料理本がレシピだけで終わるのでなく、レシピから料理の世界、料理の世界から生きている世界にイメージが広がり、ようするに生きている世界に料理はあって、その世界にレシピはあるのであるという、「つながり」が、いわゆる料理本としてあってもよいのではないかという考えは変わらない。料理の楽しさは、生きる楽しさの大きな部分を占めるはずだ。働くのも「食べる」ためとあらば、なおのこと。

その一つの、よいカタチが、ここにあると思う。ただ、おれが考えていたものより、かなり「詩的」ではある。それは、2人の書き手の詩心が、強いからだろう。これは、これで、一つのよいカタチだと思う。

それに、とかく「料理研究家」などから「エッセイスト」になった著者の料理本にあるレシピとエッセイというのは、アアあこがれの中流生活、なんと素敵な知的生活、といったニオイが、料理という生活からかけはなれているのだが、この2人の書き手の「詩心」は、そういうものではない。ときにはポテトサラダと回文で遊び、ときには、ラーメンとシメサバの相場を思う。

Otajirike_recipe5家長のレシピと解説は、簡潔かつリズミカルで、文章の調子に、料理をするときの身体の動きと、味付けをするような心配りを感じる。これが、ま、さすがだね、と思ったほど、素晴らしい。なにしろ、かつて彼の自作の詩と曲と演奏を何度か聴いて、いいねえと思った、あの感じである。

こういう文章は、いわゆる料理本では実現できない残念がある。料理本のレシピというのは、こうでなくてはならないという、おれからみると、あまり根拠のない確固たる業界的思い込みが編集の中心にあって、なかなか難しい。

料理は、エスプリとインスピレーションとイマジネーションが大事だと、かねてから思っている。たいがいの料理本のレシピは、そこをむしろ封じ込めるように、マニュアル化する。まるで寸分の狂いがあってはいけない「指示書」か「仕様書」のように。そうなったには、読者側の料理に対する認識の問題もあるのはもちろんだ。それらには、いくつか根深い問題が含まれているのだが、そのことは置いておこう。

とにかく、家長のレシピと解説は、料理に必要なエスプリやインスピレーションやイマジネーションを、無限大に向かって開放する。そして、今村さんの文章は、さらにそれを膨らませるように、料理の世界から生きる世界へ向かって料理を開放する。そして、料理とレシピに、もどる。

Otajirike_recipe3きょうは、これぐらいにしておこう。表紙を開くと、うすい紙にローレルが一葉、香りを漂わせる。最後のレシピは、「トマトチーズ焼き」で、「恋のレシピ」という歌までついている。

2人の文章は、リズムがとてもよい。1ページだけ、「柴犬のシバ」というタイトルのよこ書き家長の文章の組版レイアウトが、文章のリズムとチグハグな感じがした。とくに韻のある日本文のよこ組は、むずかしい。

収録レシピ、14点。1500円。一緒に入っていた「請求書」?まで楽しめる。
そういえば、きょねん、酔っ払って、Tシャツを注文したはずだが、あれは、どうなったのだろう。ま、暑くなってからでよいのだが。

Otajirike_recipe7

当方のモニターがやや不正常の発色をしているようなので、掲載の画像の色は、本物と少し違っているかもしれません。

Otajirike_recipe8

関連
2010/09/18
経堂、太田尻家のち、さばの湯ギョニソ・シンポ、泥酔帰宅。

| |

« 3月20日、木村衣有子×遠藤哲夫トークショー。 | トップページ | これが木村衣有子『あのとき食べた、海老の尻尾』だ。と、発刊記念トーク×エンテツ。 »

コメント

いい本ができましたねえ。
商売やりながら、こういう本がつくれるなんて、
最高に楽しいですね。

進呈、ありがとうございます。
遠慮なく、いただいておきます。
よく見たら「請求書」ではなく「チラシ」でしょうか。
でも、こういう請求書もよいですね。
楽しくて抵抗なくカネを出してしまいそう。

一段落したら、遊びに行きます。
今村さんたちにも、ナイス! とお伝えください。

投稿: エンテツ | 2011/03/10 18:59

何だか勿体なくてこそばゆい…
有り難う御座います、
請求書は入ってませんよ!進呈本です。

投稿: タジリ | 2011/03/10 14:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 素晴らしい料理の世界。太田尻出版、『レシピとそのレシピ』。:

« 3月20日、木村衣有子×遠藤哲夫トークショー。 | トップページ | これが木村衣有子『あのとき食べた、海老の尻尾』だ。と、発刊記念トーク×エンテツ。 »