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2011/07/19

おれとビッグ・エーのまったくもって妙な関係。全文。

スーパー業界誌の『食品商業』6月号に寄稿のタイトルがこれ「おれとビッグ・エーのまったくもって妙な関係」。サブには「オトコ67歳・酒飲みのにとってのHDS」とある。

「HDS」とは、ハードディスカントストア」の略だ。「ボックスストア」という呼び方でも知られている、スーパーの一つの業態。

編集部のリード。「キャベツから線香まで。普段の生活に必要な買物が小さな店ですんでしまう。しかも、ディスカウントストアよりも安い。ハードディスカウントストア(HDS)が元気だ。段ボール箱のまま陳列することから「ボックスストア」とも呼ばれるこの業態。日本での先駆者であるビッグ・エーを中心に研究したい。」

ということで、関東の「ビッグ・エー(BigA)」を中心に、西のHDS成長株「サンディ」を、この特集では扱っている。

で、カタイ記事ばかりじゃツマラナイから、ビッグ・エーのヘビーユーザー歴を持つおれのエッセーをという依頼だった。4月発売の5月号に掲載の予定だったが、大地震のため特集が繰り延べになり、5月発売の6月号になった。

関連、こちらも、ご覧いただけると、よいかも。
2011/05/22
おれとビッグ・エーのまったくもって妙な関係。

以下、全文を掲載します。小見出しは省略しました。

 いまウチには、ビッグ・エーで買った、ビッグ・エーブランドの醤油と使いかけの小松菜が、冷蔵庫にある。テーブルの上には、バナナの最後の一本がのっている。2日ほど前には、伊予柑もあった。
 11日に発生した大地震で、時間帯と売り場によっては、棚がガラガラのときもあるのだが、数日前、津波の被害が大きかった宮城・気仙沼の〆鯖を見つけたので、ただちに買った。それをブログで紹介したら、ツイッター仲間が同じものを買っていることがわかった。ほかにもビッグ・エーユーザーとつながった。いずれも男で、住んでいる地域はばらばらだが、ツイッターで「ロハスの敵、庶民の味方、ビッグ・エー」などと冗談をとばして、盛り上がった。
 ほかでも話題になると、けっこうオランダ産あじの開きなんぞを食べている人がいる。あれは、見た目は貧相だけど、骨まで火が通りやすくてよいといった、マニアックな話をしたり。お互いビッグ・エーを利用しているだけで、話がはずむ。おもしろく不思議なことだ。これは、なんだろう、ビッグ・エーをあいだにして、ワンランク上だのという生活や上等を気取らずに付き合える親近感というか。それに「安い」ということは、ある種の楽しさでもある。
 おれが住んでいるところは、さいたま市見沼区東大宮。ここに引っ越してきたのは、2008年の秋だった。ビッグ・エーは東大宮駅東口近くにある。ウチは駅をはさんで反対側なので、駅の階段を上がり下りし15分ほどかかる。しかし、そこにビッグ・エーを見つけたときはうれしかった。「おお、おれのビッグ・エーがある」という安堵感があった。
 ビッグ・エーとの出合いは、ここに引っ越す前だ。それは、そこの最寄り駅へ向かうのとは反対方向の、5分とかからないところにあった。ほぼ毎日通った。なぜかというと、おれは「酒飲み妖怪」という異名をとるほど、酒が好きだ。酒が切れると、ただちに買いに行くのである。もちろん安い。酒飲みにとっては、じつに危険な関係だった。そして、家で仕事していることが多いことから、また料理は好きだし半ば仕事と無縁ではないし、食事の仕度はよくやるのであり、おかずや材料を調達するようになった。
 そのころ利用するスーパーは、駅に近い3店を使いわけていた。そこにビッグ・エーが加わったのだが、ずいぶん買い物が楽になった。というのも、ビッグ・エーには、基本的な食品が、種類は多くはないけど、PBを中心に、普通に品質が安定していて安いものが揃っているからだ。
 毎日の食事の仕度で悩ましいのは、メニューに変化をつけながら予算のうちにおさめることだろう。それが、ビッグ・エーで基本的なものを揃え、あと変化をつけるのに必要な、それなりの鮮度や産地やブランドのものなどが欲しいときは、ほかのスーパーで買うというミックスで、ずいぶんやりやすくなった。なんていうのかな、下支えがある安心感とでもいうか。
 しかし、それだけではない。おれは、大雑把でズボラな男なので、一つのアイテムに何種類もあって、やたらPOPも多く、情報が氾濫している中から選ぶのが面倒であり、好きではない。もっと、絞り込んで、ウチの店は、これについてはこれを責任持って販売しますというものだけを、そのまま並べている店があるとうれしい。それとも関係するのだが、人間を圧倒するように商品を積み上げ並べた大きな空間が、どうもおれの感覚になじまない。見ているだけで疲れて、買い物が面倒になり、買わないで出てしまうこともある。
 実際、いまの東大宮のビッグ・エーの前には、やはり24時間営業の、数百坪はあろうかと思われる某ナショナル・チェーンのスーパーがあって、ときどき意を決して入っても、途中ですごすご退散し、ビッグ・エーで買い物して帰ることがある。これは、67歳というトシのせいなのだろうか。あの、制服を着たレジの女性が、ばか丁寧な挨拶を早口でしたり、厨房と出入りするたびに店内に向かってお辞儀をする姿まで、わずらわしく思える。
 そこへいくと、ビッグ・エーは気楽である。店舗の大きさといい、素っ気ない即物的な陳列といい、あまり圧迫感も情報的干渉もない中にほっておかれるのである。すると、気分も大らかに、店内をフラフラできる。急いでいるときは、すぐコンビニ並の早さで、めざす商品を手に入れられる。そして、制服で固められてない、私服にエプロンという店員さんの姿が、そのへんのまちの店まちの人という感じで、個人商店にいるような親しみを覚えるのだ。
 いまでは駅の向こう側までとなると、チョイと毎日とはいかないし、近所には酒を安く売るドラッグストアがあるから、週に2回程度である。それでも助かるし、なにしろ、時々行かないと気になり、ふらふら足が向くのである。こういう店があると、貧乏でも安堵し向上意欲が失せる危険があるなと思ったり、しかし、とくに野菜は賞味にギリギリのものが少なくなく、それをうまく使った料理の工夫は向上するにちがいないと思ったり、いろいろ楽しいのである。 まったくもって妙な関係になったものだが、かといって、ビッグ・エーさえあればよいという生活は、想像したくない。

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