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2013/04/12

ミーツ5月号「街的生活空間」特集が投げかけたこと。脱「理想のライフスタイル」を考える。

『Meets Regional』5月号は、これまでの街と飲食をメインにした特集と大いにちがう。ミーツらしい意欲にあふれた挑戦をしている。

これが一言で表現するのが難しい。表紙と特集大扉には、「LIFE is BEAUTIFUL!」という文字が大きくデザインされ、「特集 街暮らしが変わる、関西の店、モノ、ひと。」とあるのだが、いまいちピンとこない。

藤本和剛さんが書いている編集前記のタイトルが「生活空間が思考を育てる。"読んで感じる"街的生活特集」。気持はわかるが、ムズカシイ。

そのあたりに、テーマをこなしきるのに苦労した様子を感じる。ようするに、街にはいろいろな人が暮らしているけど、その暮らしぶりは、生活の基地である家の中にまで入ってみないとわからない。そこにホントウの街的生活の姿を発見できるのではないか。というあたりが、「テーマ意識」だったのだろうと、勝手に解釈できる。

ここが、かなり重要なポイントだろうと思った。編集前記本文に、「職場と自宅を往復する平日、モールやメガストアに金と時間をはたく休日。タフな胃腸と厚い財布が必要な街場の店遊びより、不可欠な生活空間の充実に向かうのは道理としても、それが世の中で喧伝されている"理想のライフスタイル"なのか。」

テーマは十分にこなれ切れなかったにせよ、こういう投げかけをやったことそのものが、素晴らしいと思う。

おれは、かねてから、この「ライフスタイル」ってのが曲者だと思っている。ちょうどおれがマーケティングの仕事に関わった1970年代から盛んになり、「ライフサイクル論」と抱き合わせでマーケティングの主柱になった。自分で推進し、批判されるべきと思っていたから、間違いない。80年前後からの「売れる」メディア、つまり「生活情報誌(あるいは生活カタログ誌)」のほとんどは、理想とするライフスタイル・モデルの喧伝につとめ、読者に支持されていた。

それは、それぞれのライフストーリーにもとづくものではなく、大メーカーやビッグストアが喧伝する理想のライフスタイル・モデルだった。住まい空間にあっては、「DKスタイル」から「LDKスタイル」をモデルとし、食生活にあっては、いわゆる「洋風」がそこにはまった。

大メーカーやビッグストアは、理想のライフスタイル・モデルを街全体に広げてきたし、いまも広げようとしている。「都会的な洗練されたライフスタイル」をモデルに。そのことに、少なくない人たちが何の疑いを持たずに暮らすようになった。どころか、文化的で人間らしい生活として推進され歓迎されている傾向にある。

そこに一石を投じた。そういう心意気を編集前記に感じる。

おれは、これまで「ライフストーリー」という言葉をあまり使ってこなかったが、五十嵐泰正さんとのトークから積極的に使うようにしている。これだけ蔓延したライフスタイルを否定するでもなく、批判をすることはあっても、それ以上にライフストーリーを組み上げて行くことだろうと思っている。

おれが自著で、「体験と主観による」といってきたのは、言い換えれば自分のライフストーリーにもとづくものだということなのだ。それを、そのまま書けば、出来の悪い「私語り」になってしまう。ある空間と時間や歴史と社会に位置づける作業が必要になる。それが、おれが「書いたこと」なのだ。ある種のライフスタイル・モデルにこだわる人たちには受け入れられにくいだろう。

今回のミーツの特集は、どちらかといえば、ライフストーリーへの踏み込みとはちがう方法でとらえているようだ。なんてのかな、ライフスタイルのとらえかたの違いというか。

それは無理もないことで、ライフストーリーの方法は、おれの経験ではリサーチの分野で部分的に行われてきたぐらいで、十分に確立された方法ではない。それに、方法としてオーソライズされていないものは、権威のバックアップはなく支持を得にくい。商業メディアの方法にもなりにくい。おれも、自著の範囲で、手探り状態だった。

なんにせよ、与えられた理想のライフスタイルを生きているうちに、(画一化ではなく)自分のライフストーリーを多様かつ柔軟に生きているかのような錯覚に陥りやすい環境が続いている。チェーンの飲食店のオペレーションあるいはユニクロの製品ラインなどに見られるように、ライフスタイル・モデルは次第にきめ細かな対応に「進化」するし、それを無批判に歓迎する土壌も十分だ。

ミーツが挑んだのは、必然のような気がする。なぜなら、街には、ビッグビジネスやビッグストアが次々に仕掛けてくる理想のライフスタイル・モデルではなく、手探りで自分のライフストーリーを生きようとする動きがある。それをキャッチする感覚こそ大事だと思う。

しかし、こういう特集で、どれぐらい売れるものなのか、気になるね。売れてほしい。

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