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2013/04/28

悩ましいプレスハムとチョップドハム。

東京新聞「大衆食堂ランチ」7回目、稲荷町・田中食堂に、「1970年代ごろまでは「ハム」といえば外側が赤い「プレスハム」が普通だった。近年は「チョップドハム」に分類されるようだが、昔の人間にとっては「ハムカツ」といえばこれでなくてはならない」と書いて、「チョップドハム」という呼び方を初めて使った。

しかし、これが悩ましい。自分では、実際には、見分けも、味も、区別がつかないのだ。いやいや違うか。見分けは、なんとなくわかる。チョップドハムは、つなぎが多いから、切ったときに、のっぺりとした面積が多い感じである。食べたときも、舌触りに、のっぺりした感じが残る。それは、スライスして、過熱する前の状態の場合だ。

焼いたり、揚げたりで、これに熱を加えると、脂が溶けて広がるから、つなぎとの境目が化学的にも物理的にもアイマイ化がすすむ。この状態で出されると、判別の自信がない。もちろん、焼いたのだろうと、ハムカツだろうと、プレスハムとチョップドハムを一度に食べ比べれば、わかるのだろうが、やってみたことがない。

チョップドハム自体が、もう一つはっきりしないこともある。プレスハムは農水省の日本農林規格にあって、次のように定義されている。
http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000996.html

プレスハム 次に掲げるものをいう。
1 肉塊を塩漬したもの又はこれにつなぎを加えたもの(つなぎの占める割合が20%を超えるものを除く。)に調味料及び香辛料で調味し、結着補強剤、酸化防止剤、保存料等を加え、又は加えないで混合し、ケーシングに充てんした後、くん煙し、及び湯煮し、若しくは蒸煮したもの又はくん煙しないで、湯煮し、若しくは蒸煮したもの
2 1をブロック、スライス又はその他の形状に切断したもの

チョップドハムの規格はない。この規格に合わないものがチョップドハムなのだ。

播州ハムの「ハム・ソーセージなんでも相談室」には、こういうQ&Aがある。
http://www.ham.co.jp/un4-b.htm

Q) チョップドハムとはどんなハムですか?(木曽様ほか)
A) 昭和20年代に、畜肉(当時はマトンや馬肉)をつなぎでくっつけたハムとソーセージの中間的な製品・プレスハムが誕生しました。(日本のプレスハムは欧米のPressed hamとは別の我が国独特の製品です)
その後、プレスハムの規格より肉塊が小さく、つなぎの割合が多い商品がでて来るようになり、これをチョップドハムと称するようになりました。(欧米にもチョップドハムという名前のハムがありますが日本のものとは別のものです)

ようするに、チョップドハムは、プレスハムの規格外製品ということなのだ。近いけど違うもの。どちらも、魚肉ソーセージのようにフイルムのケーシングによる製法。混ぜ合わせ調味した材料をフイルムのケーシングに詰め、過熱し固めたもの。

こういうのは、なかなか区別が難しくて、困る。規格で数値化できるのは、つなぎの占める割合と、肉塊の大きさだ。これで、味に特徴が出やすければよいのだが、味は肉塊の種類や品質にもよるから、その混ざり方で違いがあるだろう。だけど、製法上は、その違いがあまり出ないように、調整しているはずだ。つまり、味は調整によって決まる。合成された味だ。

これはもう、加工食品の宿命で、「生ハム」のほうが上等だし旨いといったところで、塩分が強すぎて、それほど肉の味がしないものだってある。ロースハムにしても、そう。

とにかく、調理したチョップドハムとプレスハムの味の違いを、一度シッカリ確かめたいものだと思っている。自分で区別が、ちゃんとできないまま、取材で聞いて、「これチョップです」といわれて、「そうですか」で書くのは、どうも面白くない。

ま、加工製品の味を全部判別するのは至難のことだとしても。この二つの違いは、どうも気になる。

チョップドハムだろうとプレスハムだろうと、いわゆるいまどきの「ハム」と違って、「かむほどに、塩気を含んだ、何の肉とはいえない混合の味と衣が混ざり合い複合し、不思議なうまい味わいを生む」。そこが面白い。これはこれの旨さで、なかなか捨てがたい。ジャンクといえば、ジャンクな味わい。

そして、味覚的には、どちらも「プレスハム」でよいではないかと思ったりもする。

はっきり区別がついて、判断できるひともいるだろうが、おれは、こんなぐあいに、悩ましい状態なのだ。

料理人でも、チョップドハムは知らないで、どれもプレスハムと思い込んでいるひとも少なくない。さて、このハムエッグのハムは、チョップドハムとプレスハムのどちらでしょうか。

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