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2014/04/17

3月15日の大盛堂書店@渋谷での速水健朗さんとのトーク。

春の風が心地よくボンヤリしていても、なにかと気ぜわしくしていても、時はさっさと過ぎていく。時が過ぎていくあいだに、出産予定が近付いている夫婦や、進行しすぎて手術も不可能な癌が見つかった知人もいる。まさに、世の中は、メシくってクソして、産まれたり死んだりだ。

ってことで、ひと月以上すぎてしまったが、3月15日に行われた、大盛堂書店@渋谷における速水健朗さんとのトークについて、メモを残しておこう。

すでに、その日のうちに、ツイッターという便利なものでつぶやいてくれた方がいるので、それを中心に補足しておきたい。

たかやましんいち ‏@shinichi_takaさん。存じ上げない方で、このツイートが縁でフォローさせていただいた。

たかやましんいち ‏@shinichi_taka 3月15日
https://twitter.com/shinichi_taka/status/444809112040538112

①これから本日渋谷大盛堂書店にて行われました遠藤哲夫氏(「大衆めし 激動の戦後史(ちくま新書)」著者)×速水健朗氏(「フード左翼とフード右翼(朝日新書)」著者)による対談で印象に残った話をいくつか連投します。鬱陶しい方はリムるなりミュートするなりしてください。

②速水「遠藤さんとは今日が初対面だが、ツイッター上では2年ほど前に私の著書「ラーメンと愛国(講談社新書)」を巡って議論をしたことがある。遠藤さんの著書「ぶっかけめしの悦楽(四谷ラウンド)」は「ラーメンと愛国」を書く際に参考にした。」

③速水「遠藤さんの「ぶっかけめしの悦楽」の中で、「カレーライスは日本の汁かけご飯の延長として考えるべき」という論が展開してあり自分の中でパラダイムシフトが起こった。」遠藤「日本の食文化を辿ると、元々はご飯と汁は分離していなかった。今でも雑炊という食べ方がある。」

④速水「「フード左翼とフード右翼」は主にフード左翼について書いているが、「ラーメンと愛国」はチキンラーメンを作った安藤百福など食品産業について書いていて、フード右翼本としても読める。」

⑤遠藤「私は60~70年代にはレトルト食品や冷凍食品産業に関わってきたし、80年代後半以降は反対に自然食に関わってきた。この両者に分断が起きているが、突き詰めれば「日々の食事をどうするか?」というところに行きつく。生活の中には選択肢が多い方がいい。」

⑥速水「日本のジャーナリズムではその業界にいた人が社会を正す目的で書いた内部告発のような記事や本が多いが、外の業界から眺めて書いた本の方が業界の常識に縛られていなくて面白い。ジョシュ・シェーンヴァルド著「未来の食卓(講談社)」は食業界の外からの視点で書かれた食の本。」

⑦遠藤「最近の読者の傾向は結論まで最短距離の文章を求める。あちこちに寄り道をするような文章は好まれなくなっている。」

⑧速水「TV、ラジオ、出版社の人が言うには、最近はドキュメンタリ作品の見られ方は新しい知識を得るためではなく、知っていることを確認する作業になっている、と。知らないことには興味を示さない。「あるある」ということにしか興味を示さなくなっている。」

⑨遠藤「最近の食の本で面白かったのは「かつお節と日本人(岩波新書)」。」速水「「ファッションフード、あります。(紀伊國屋書店)」、「雑食動物のジレンマ(東洋経済新報社)」、「うちのご飯の60年(筑摩書房)」も面白かった。」

⑩速水「次に書きたいのはキッチンの話。住居内のキッチンの位置は時代と共に変遷している。戦後の生活改善運動でキッチンも近代化された。藤原辰史さんの「ナチスのキッチン(水声社)」も面白かった。」

⑪以上です。長々と失礼しました。このまとめ読んで興味の出た方は遠藤さんの著書「大衆めし 激動の戦後史(ちくま新書)」、速水さんの「フード左翼とフード右翼(朝日新書)」をご覧ください。

以上。番号は、おれがつけた。おれと速水さんは、トークが始まる30分ほど前に大盛堂書店さんの控室で、初対面の挨拶をして話し合っているので、そのときの話と会場での話がごちゃまぜになっているのだが。

②について。『ラーメンと愛国』(講談社新書)が2011年10月に発売になった直後ぐらいに、ツイッターで議論になったことがある。これは、おれがこの本を買って、パラパラと見ただけで、ツイートしたことに始まったのだが、『ラーメンと愛国』では戦後のアメリカの小麦戦略にラーメンの普及の原因を求めている印象があったので、それは食文化的に見たらおかしい、アメリカの小麦戦略以前の日本における粉食や麺食を見なかったら、食文化史としては片手落ちになる、という趣旨だった。

すると、そのツイートが速水さんに見られて、反論というか、いやそうじゃないという話になった。これは、戦後の産業史のことで、食文化史のことではない、というようなことを速水さんはツイートしたと思う。

おれも、パラパラと見た印象でツイートしたことなので、そういえば、この本は食文化を論じているわけじゃないなと思い当たり、お騒がせしたことを謝った。ま、3ストロークぐらいで、おれが、ごめんなさいした。自分がうかつだと思ったことは、さっさと謝るのが当然だからね。

約、そのようなことだった。そのとき、③、速水さんは、おれの『ぶっかけめしの悦楽』から着想を得たというようなことも、ツイートしていた。『フード左翼とフード右翼』の「あとがき」でも触発された本に『大衆めし 激動の戦後史』をあげているのだが、速水さんは『ぶっかけめしの悦楽』を何人かの友人にすすめられたといい、「あの本、売れたでしょう」と。いやいや、とんでもない、おれの本は簡単には売れません。速水さんや友人たちのような読者が、じわじわ増えればうれしい。

おれは、『ラーメンと愛国』と昨年12月発行の『フード左翼とフード右翼』(朝日新書)を読み返し、さらに昨年11月ちくま新書から発行の『1995年』を読んでいた。ついでながら、おれの『大衆食堂パラダイス!』は2011年9月発行で、『大衆めし 激動の戦後史』は、昨年10月の発行だった。

『ラーメンと愛国』と『フード左翼とフード右翼』を続けて読むと、二つのことが気になった。一つは、政治や思想について、もっと身近な、というか、いかにも政治であり思想であるようなことではなく、なんにでも政治や思想は関係しているということから議論になってほしいという、速水さんの「願い」のようなものを感じたことだった。

もう一つは、『ラーメンと愛国』は食文化の話ではないけれど、あらためて読みなおすと、たとえば第五章ラーメンとナショナリズムには「反グローバリズムとしてのスローフード運動」など、『フード左翼とフード右翼』に通じる話が出ている。これは連続する二冊として読める。ということだった。速水さんに聞くと、どちらもその通りで、後者は④に関係する。

⑥⑦⑧に関連しては。近年ますますの傾向として、ライターはインサイダー化しているし、読者も安直にインサイダー情報を求めるようになっていることについてだ。あるカテゴリーの業界、企業、あるいは飲食店の内側に入り、あるときは「礼讃」あるときは「告発」、どのみち業界や企業や店の顔色を気にしている。

これは、⑦⑧とも関係する。速水さん、自分は「あきっぽいから」と言っていたが、『ラーメンと愛国』『フード左翼とフード右翼』に『1995年』を合わせて読むと、外側から横断的に見た、「現代風俗批評」「現代文明批評」といったおもむきでもあり、これだけ幅広く論じられるひとは少ないだろう。

いろいろな現象と文脈と位相をつなぎあわせ、対象を読み解いていく。その方法は、おれにも共通するところがあって、おれは「三題噺」のようによりあわせるといったが、とにかく、いくつもの関係なさそうな文脈と位相をつなぎあわせて「考える」。そこでは、安直な「結論」より「考え」て発見することが重視されている。文脈や位相を読み解くことは、「考える」ことにつながるのだ。

ところが、近頃の読者は、コンビニやスーパーで買い物をするように「結論まで最短距離の文章」を求める。速水さんは、価値観の異なることや新しい知識を本に求めるより、本の中に自分と同じものを見つけ確認し安心したがる傾向がある、というようなことも言っていた。なるほど。

控室の打ち合わせでは、本屋さんでやるトークだから、本の話をしようということだったが、トークが始まってみれば、そのことを忘れて、どんどん話がはずみ、終わり近くなって本の話になった。⑨⑩

トークの予定時間は1時間で短かったが、おれは雑談的なトークが好きなので、けっこう楽しかった。

もう一人、碇本学 ‏@manaviewさんのツイートから。

碇本学 ‏@manaview 3月15日
https://twitter.com/manaview/status/444769995810029568

①大盛堂書店さんで遠藤哲夫×速水健朗トークイベント「食の周辺を語る」行ってきた。食の周辺の真ん中にいて大衆めしについて書かれた遠藤さんと真ん中ではなく周辺に関することを書かれている速水さんの対談。

②速水さんは『ラーメンと愛国』に続いて『フード左翼とフード右翼』と食に関するものが二冊出たのはたまたまらしく、どちらにも入れようと思って書かなかったキッチンについての話は興味深かった。GHQが田舎の家の台所を調査して生活改善として今に繋がるキッチンを日本に入れたとか。

③『ラーメンと愛国』では阿部和重著『シンセミア』同様に戦後日本における小麦食がGHQから、日米の関係から普及したことを戦後日本の縮図のひとつとして書かれていたけど、そうかまずはキッチンが台所が変えられたのか。『奥様は魔女』とかでテレビによってアメリカ式生活に憧れを持たしたのも繋がる

以上。トークのお題は「「食」の周辺を語る」だったが、速水さんは、食の外側や周辺から広く横断的に見ている、おれは食の真ん中つまり料理、料理のさらに真ん中「生活料理」から全体を見て考える。その二人のトークだった。

飲食も料理も、政治や思想が深く関係している。という点については、不十分なトークだったな。「日本料理」なんぞは、じつに政治と思想そのものなのだが。

打ち上げの飲み会でも面白い話があったが、省略。

速水健朗 ‏@gotanda6さんは、碇本さんのツイート①に対して、このようにリツートしていた。
https://twitter.com/gotanda6/status/444787963847667712

アットホームで世界に冠たらないいいイベントでした。RT @manaview: 大盛堂書店さんで遠藤哲夫×速水健朗トークイベント「食の周辺を語る」行ってきた。食の周辺の真ん中にいて大衆めしについて書かれた遠藤さんと真ん中ではなく周辺に関 pic.twitter.com/EdNIzP1dFo

「世界に冠たらない」は、トークのときにおれが「鰹節を削る音は日本の台所特有の世界に冠たるものだというようなことを言っている料理研究家がいるのだけど」といったら会場がドッと笑ったことからで、なにかというと、鰹節の削る音にまで「世界に冠たる」をつける、おかしさ。

とりあえず、こんなところで。

『ラーメンと愛国』と『フード左翼とフード右翼』を一緒に読むことを、おすすめします。

(4月18日追記。速水さんは、本(出版?)は変わるし、変わらなくてはならない、というようなことをいっていたが、そのことについて、もっと話したかった)

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