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2014/11/10

いま、森を見よ。「日田きこりめし」の巻。

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北九州での『雲のうえ』の取材のあと11月1日に日田へ行ったのは、「ヤブクグリ」の企画による、「ヤブクグリ弁当部 寶屋謹製」の「日田きこりめし」と「見隈川かっぱめし」の2種類の弁当を食べ、9月に発売になったばかりの「かっぱめし完成祝賀会」に参加するためだった。

それがとんでもなく面白い展開になるのだが、今回は、あとから発売の「かっぱめし」は後日にして、最初に発売になった「きこりめし」についてのみ書く。

画家の牧野伊三夫さんが日田に通い「ヤブクグリ」なるものをやっていると知ったとき、最初は、ヤブのなかを歩きまわる活動をしているのかと思った。牧野さんなら、そういうミョーなことをしていてもおかしくはない。

ところが「ヤブクグリ」とは、「日田杉」で有名な杉の学名だった。それを名前にした、集団というか団体というか群れというか、アメーバのようなグループなのだ。

冊子『ヤブクグリ』「日田」創刊準備号に載っている、ヤブクグリ会員規約によると、スローガンは「いま、森を見よ!」、趣旨は「森を愛する仲間が集い、日田の林業を中心に何か愉快なことをやっていく会」、活動目的は「日田らしい未来の構築」というもので、活動内容や会員資格、「一、人の悪口を言わないこと」といった会則まである。会員は、日田だけでなく、福岡や長崎や京都や東京…各地にいて、「目黒のさんま係」だの「市長係」だの、なにがしかの係を受け持っている。

日田へは北九州市の小倉から、日田彦山線の各駅停車で行くと2時間弱だが、久留米周りの特急を乗り継いで行くと30分早く着くそうだ。牧野さんとおれは各駅停車を選んだ。

197001「きこりめし」は、昨年の東京ADC(アートディレクターズクラブ)賞やグッドデザイン賞まで受賞した弁当だ。

11時ごろ着いて、駅前の大きな食堂、寶屋さんのテーブルに座ると、早速「日田きこりめし」が出てきた。

弁当は、牧野伊三夫さんの絵の包装紙に包まれ、上にのった箸袋には「いま、森を見よ。」の言葉が見える。その箸袋を横に置き、弁当の包装を開くと同時に、杉の香がたった。おお、なんとよい杉の香りだ、いまこの香りを知っている人がどれぐらいいるのだろう。まず、この匂いがよい、食欲がそそられる、うまそうだ。

弁当は、ヘギほど薄くはないが薄いシッカリした日田杉の板でつくられている。形が幕の内弁当のように、四角ではなく丸いのは、ヤブクグリの特徴である木のネバリと、それを丸く加工する技術の誇りか。どことなく不定形で、手づくり感にあふれている。

198ふたをとる。すると、ごはんの上に丸太が一本のっている。いや、これは、杉の丸太に見たてたごぼうだ。これだけ太いままのごぼうだと、見るからに堅そうだ、おれの入れ歯でかじれるか気になる。

箸袋のなかには、やはり日田杉の薄い板で作ったノコギリと箸が入っている。箸は飛騨杉だ。飛騨と日田の関係について書くのも、後日のことにしよう。これらが、出揃うと、なかなか楽しい。しばらく眺めていたくなる。

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のこぎりは、丸太をひくときの大きなノコギリを模したもので、歯が付いている。これで、ごぼうを切るのだという。ごぼうは堅かろう、この薄い木のノコギリで切れるのか、と思いながら歯をあて、ノコギリをひくと、意外にやわらかく、やわらかい木をノコギリでをひくように、歯が入っていく。おお、これは面白い、楽しい。

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こうして食べたごぼうは、これまでに食べたことがないほど、やわらかで風味があって、うまかった。もしかすると、一本の切り立てを食えるから、風味がとばずに生きているのかも知れない。それに、日田の土が関係しているのか、あとで町を歩いているとき八百屋で聞いたら、このあたりのごぼうはやわらかで風味がよいのだそうだ。これはなかなかよい。

おかずは、鶏肉、椎茸、煮たまご、コンニャク、ニンジン、栗など、すべて日田産。色も鮮やかで、正月のおせちのようだった。高菜などの漬物も、いい役をこなしていた。それに、ごはんもうまく炊けていたし、たっぷりあって、お腹いっぱいの大満足だった。

箸袋の表を見たら、「ヤブクグリ新聞」になっている。1991年9月27日に九州北部を襲った台風19号の被害と「林業再生」の話しが載っていた。

この台風は、おれも忘れられない。その日その時、おれは知人の運転する車で、日田から南へ直線距離で50キロばかりの熊本県立野のあたりにいて、林業地帯に向かっていたのだが。白川に土砂ごと流れ込んだ大木が、土手まで破壊するようにぶつかりあいながら、雷が連続して落ちているような激しい音をたて、木の皮と皮がむけた大木で埋まって流れているのを見た。水の流れというより大木と土砂の津波という感じで、じつに恐ろしい光景だった。

30年50年100年かけて育てた木は、また同じような歳月をかけて再生するしかない。しかし、それをやる人が少なくなっている。林業も、こころもとない。この記事には、こうある。「あれから23年。日田市の山々にはすらりと杉が立ち並び、危機は乗り越えたかに見える。しかし、台風19号以降、未だに人が立ち入っていない場所は珍しくないという。木材価格の低迷や担い手不足には歯止めがかからず、林業を立て直す道筋は見えていない。」

そして、「この「日田きこりめし」の収益の一部は、間伐などの山林保全活動に役立てています。」ともある。

弁当は、「ヤブクグリ」の企画だが、作る人がいなくてはできない。そのために一肌脱いでくれたのが、日田駅前の立派な大衆食堂、寶屋の社長、佐々木美徳さんだった。お名前の「美徳」に嘘はない。

「日田」創刊準備号に、「日田きこりめし」が出来るまでが書かれている。「最大の難関は、ごはんの上にのせる杉丸太に見たてた牛蒡作りだった。まず、丸太に見えなくてはならない。そして、割れやすい杉板製のノコギリで切れるやわらかさでなくてはならない。さらに、とびきりおいしくなくてはならなかった。寶屋の佐々木さんに厳しい条件を伝える一方で、牛蒡自体、そんなにうまいものだろうかという懸念もあった。とはいえ牛蒡の丸太は、この弁当の主役。佐々木さんの腕にかかっていた。」

「厳しい条件」をつけられて、佐々木さんは大変だったろう。だけど、みごとにクリア、「面白いし、おいしいと評判」なのだ。

佐々木さんに、弁当をほめると、「うちはチャンポンが自慢だからね」という。大きな店内は、昼飯どきには、うれしそうにチャンポンを食べる客で一杯だった。宴会のときに食べた、ほかの料理もうまかった。

日田きこりめしを食べて、いま、森を見よ。わざわざでも日田を訪ねて、「日田きこりめし」を食べる人が増えますように。1個880円、要予約。

そうそう、食べたあと、ひもでとめてある器をばらせば持ち帰れたのに、バタバタして忘れてしまった。この残骸からも、杉の可能性が見えてくる気がする。もっと杉を使えたら。

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日本初!のこぎり付「きこりめし弁当」の案内はこちら。
http://prefab.jp/post/646

ヤブクグリのフェイスブックページはこちら。いまのところ、おれの写真が続いて載っているけど。
https://www.facebook.com/Yabukuguri

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