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2015/03/13

食料自給率問題はどうなる。『大衆めし 激動の戦後史』ですなあ。

今月になって初めてのブログ更新か。本の原稿書きにボットウしていて、その割にはあまり進んでいないのだが、脇道へ入って調べだすと興味がそちらに移り…といった調子のボットウが続いている。

昨日は、サラリとだが、大きなニュースが流れた。これは、まさに『大衆めし 激動の戦後史』に関係すること、「「いいモノ」食ってりゃ幸せか?」問題なのだ。

ネットに掲載のニュースから拾うと、産経新聞 3月12日(木)12時8分配信では、「食料自給率の目標を45%に引き下げへ 農水省、実態踏まえ5割断念」の見出しで、本文は以下の通り。

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 農林水産省がカロリーベースで50%を目指す食料自給率目標を現在の50%から45%に引き下げる方向で調整していることが12日、分かった。今後10年間の農業政策指針とする「食料・農業・農村基本計画」に明記する。実現可能な目標に見直すことで、自給率の向上を追求する政策から収益力重視へと転換を図る。

小麦製品や肉類が浸透した日本人の食生活は多くの食料を輸入に頼っており、食料自給率は平成25年度まで4年連続で39%と目標を大幅に下回っている。農水省はこうした実態を踏まえ、先月まとめた食料・農業・農村基本計画の骨子案で現行目標から引き下げる方針を示していた。

 農水省は新たな指標として食料の輸入が途絶えた際に、国内でどれだけ食料を自給できるかを示す「食料自給力」を設置する方針。補助金で生産力を高め自給率向上を目指す現在の農政から脱却し、付加価値の高い農作物の生産を促し、収益力の高い農家を育てる政策に切り替えていく。
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毎日新聞 3月12日(木)21時47分配信では、「<食料自給率>45%に目標引き下げ…財政難でてこ入れ困難」の見出しで、本文は以下の通り。

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 農林水産省は、食料自給率(カロリーベース)の目標を現行の50%から45%に引き下げる。財政難で大型補助金によるてこ入れが難しい中、2013年度で39%にとどまる自給率を現行目標まで引き上げるのは困難と判断した。

 食料自給率は、国内の食料消費が国産でどのくらい賄えているかを示す指標。1965年度に73%あった自給率は、89年度に50%を切り、2010~13年度は4年連続で39%だった。背景には、国民の食生活の変化で、自給率の高いコメの消費量が減り、自給率の低い肉類など畜産物の消費が増えていることがある。

 農水省は10年、自給率目標を45%から50%に引き上げた。ほとんどを輸入に頼る小麦の国内生産拡大を自給率向上策の柱に据えたが、目立った成果はなし。昨年10月には財務省の審議会が「財政負担に依存した国内生産への助成措置のみで自給率を引き上げるのは困難」と批判していた。

 政府は、3月末にも新たな自給率目標などを盛り込んだ「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定する。生産額ベースの自給率をより重視していくことや、国内農林水産業の潜在的な生産能力を示す「食料自給力」を新たな指標に加えることも打ち出す。自給力では、凶作や輸入の急激な減少などの有事に備えるため、農地面積や農業従業者などを最大限に活用した時の生産量を示すという。「いざという時に生産できれば、自給率が高くなくてもかまわない」との考えとも言え、自給率向上を軸としてきた日本の農政が大きく変わる可能性がある。【田口雅士】
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読売新聞 3月12日(木)14時36分配信は、「食料自給率目標「45%」に…初めて引き下げ」の見出しで、「「2020年度までに50%」としていた目標を、「25年度までに45%」にする。食料自給率の目標を下げるのは初めて。食料自給率は39%で低迷しており、現実的な路線に転換する」と。

ようするに、実態に即した現実路線に転換ということだが、単に数値目標を下げたのではなく、「小麦製品や肉類が浸透した日本人の食生活」を実態として容認する含みを読み取ることができる。これは、『大衆めし 激動の戦後史』にも書いた、かつて江原恵が指摘した「日本料理の二重構造」と「日本料理は敗北した」実態を認めることにも、つながるだろう。

『大衆めし 激動の戦後史』で述べた実態に即した「生活料理」を軽視あるいは無視してきた、「食文化」や「グルメ」と無関係ではない。

食料自給率政策をカロリーベースだけで考えることの問題は、このブログでも指摘してきたが、『大衆めし 激動の戦後史』の「食料自給率「四〇パーセント」は危機か」では、「日本人の食生活は、すでに「国土」を超越したグローバルな関係のなかにある。食料自給率を危機にしてしまわない方策を、つねに追求すべきだろう」とアレコレ書いた。

「自給率向上を軸としてきた日本の農政が大きく変わる可能性がある」と毎日新聞は書いているが、そうなれば、まさに「激動」だろう。

カロリーベース固執の背景には、食育基本法や「和食」世界文化遺産登録などで活躍した、偏狭な「愛国思想」や「ナショナリズム」も見られる。これは「日本料理の二重構造」の問題ともからみ、単純ではない。

今回は、「財政難で大型補助金によるてこ入れが難しい中」という事情があるので、財務省の押しで変わらざるを得ないという感じでもあるが、「健全なナショナリズム」が育つのかどうかも関係しそうだ。そう考えると、昨今の「右傾化」など、困難のほうが大きいようで、複雑な激動になりそう。それはそれで、めんどうなことだ。

ま、多くの人々の実態である生活料理のことを、長い間ないがしろにして、「いいモノ」やらグルメやら食料政策やら農政やら食育基本法やらとやってきたのだから、しかたない。

それにしても、いわゆる「農協改革」との関連を考えると、じつにウサンクサイ動きが気になる。

それにしても、カロリーベースの食料自給率を錦の御旗に、ずいぶん無駄なカネをつぎこんできたものだ。もし「財政難」でなかったら、実態に即さない政策が許され続いてしまう実態も大いに問題だな。「健康」「安全」「安心」「グルメ」ばかりでなく、自分たちの食と食文化について、もっとちゃんと考えられるようになりたいものだ。

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