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2017/04/07

「コクというのもどうやら韓国系で」。

昨日のエントリーの四方田犬彦さんで、思い出したのがコレだ。以前、コレを読んで、ぶっかけめしの話のとき、大いにヒントになった。

古い資料でも忘れていけないものがある。とくに、いまどきの、飲食ネタなら売れるからとメディアにあふれかえるヨタ話などに耳目をうばわれているより、ゆっくりコツコツ基本的なことを忘れないように集積しなくては、けっきょく歴史となる記録を破棄しながら一見新しそうで先進そうなことにむしゃぶりついて、そして荒野が残った、ということになりかねない。

ま、近頃は、政府が率先して記録を改ざんしたり破棄したりしているようなんですがね。そんな政府を支持して真似するなんて、とんでもないことなんですね。

『現代思想』1988年9月号は「特集 料理 食のエステティーク」だ。たくさんの問題提起やヒントがあって、いまになって、それ以後の「グルメブーム」を経た30年近くをふりかえってみると、ほったらかしになっている大事なことがたくさんあるのに気づく。

で、タイトルの「コクというのもどうやら韓国系で」というのは、ストレンジャー四方田さんが、玉村豊男さんとの対談「味の記憶、あるいは絶頂の瞬間」で述べていることなのだ。

「コクというのもどうやら韓国系で、クッパの「クッ」です」と。この「クッ」の後にはハングル表記もあるのだけど、ここでは略。

この場合の「コク」は、「旨味とコク」という場合の「コク」とビミョーにずれているところがある感じなんだけど、拙著『汁かけめし快食學』でも書いたようにコクそのものがアイマイなものだから、「質量感のあるうまさ」と考えればよいと思う。つまり、この対談が行われた頃には流行っていた、新発売のアサヒスーパードライの「コクがあるのにキレがある」の「コク」と同じものだろう。

それが「どうやら韓国系で」というのは、とても面白いと思ったのだった。『汁かけめし快食學』ではクッパのこともふれているが、その後、韓国の飲食に詳しい方といまでも付き合いがあるのだが、「旨味」や「ダシ」についても、韓国料理の味覚の大事なところを占めているようで、なかなか興味深いと思いながら、探求をほったらかしていた。

ところで、この対談は、読み返してみたら、いろいろ面白い。

とくに「食のエクリチュール」についての対話は、このころ以後のほうが、「食のエクリチュール」の氾濫が増大したわけで、いまでは食べログなんてのも生まれ、食や食の本について文章を書いたことがない大人のほうが少ないのではないかと思われるほどだから、なかなかタメになる。

とくに、トートロジーの吉田健一と北大路魯山人流の独断、それから「職人仕事の批評」をめぐるあれこれ、もちろん山本益博さんも俎上にあがり、飲食や料理などの批評の構造や可能性などが、ヨタ話も含めて、いま読む価値は大きい。

「イデオロギーとしての食物」も「「おふくろの味」の不気味」も、いまのご時世だからこそ、もっと考えねばなあ。

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