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2018/02/12

虚しい「話題づくり」。

「ま、政府が旗を振るほうへついていればまちがいないし、それに、一見すると、「ものづくり日本」は正しそうだ、ということで、空虚な「ものづくり日本」伝説は続いている。もうだいぶメッキがはがれ批判も増えているが。」と書いたのは、2018/01/28「貧せざれば鈍す。」でだ。

そしたら、最近またメッキがはがれるようなことがあった。

「下町ボブスレー」の件だ。

ジャマイカ「不採用」 下町ボブスレー関係者に落胆広がる
2/6(火) 22:39配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180206-00010001-tokyomxv-soci
最終更新:2/6(火) 22:39
TOKYO MX

では、このように報じている。……………

 2011年に東京・大田区などの町工場が中心となって、世界に誇る技術を使い、国産のそりを造ろうと「下町ボブスレー」のプロジェクトが始まりました。

 そして2016年1月、ジャマイカ代表がテスト走行の末に「下町ボブスレー」の採用を決定し、オリンピックで使用するための契約を交わしました。

 ジャマイカ代表のジャズミン選手は2017年4月の会見で「下町ボブスレーを造っている大田区と日本の皆さんの協力で、五輪に向かって勝ち抜くだけでなく、新しい歴史をつくっていけることに興奮している」と語っていました。

 しかしジャマイカ代表は、平昌オリンピック開幕直前になって「ラトビア製のそりの方が良いタイムが出る」として「下町ボブスレー」を使わないと連絡してきたのです。

……………

TOKYO MXの報道はジャマイカに非があるようなニュアンスが見られるが、ようするに、契約のことがあったとしても、最終的に性能が問題でラトビア製が採用されたらしい。

このプロジェクトでは、なにかとお騒がせな安倍首相も一役かっていたことから、ツイッターでは、いろいろに取り沙汰されて、問題の核心がどのあたりにあるのか、わかりにくい。

とにかく、NHKが2014年に「下町ボブスレー」のテレビドラマまで作って放映するなど、「話題づくり」が先行していただけに、この結末はセツナイ。

「ものづくり」は、ものをつくる方法や技術がものをいうのであり、「話題づくり」が盛り上がれば成功するというものではないことぐらい、誰でも知っているはずだ。だけど、ただ話題になりさえすればよい、という人たちがいるのも確かだ。

日本の製造業が問題を抱えていて、それを何とかしなくてはならないのだが、1999年の「ものづくり基盤技術振興基本法」以来、「ものづくり」が盛んにいわれるようになってからとくに、「日本人気質作興運動」のようなことに傾斜しているように見える。

「ものづくり」は「大和言葉」であるとか、「日本人気質」たとえば「日本人の特徴として、もうひとつ重要なことがひとつ。日本人は、美意識が高いということが上げられます。自分が作り上げるものがひとつの部品であっても、美しく作り上げればそこには満足感と充足感を覚える人種でもあるのです。部品とは限りませんが、ものづくりにもっとも必要なのは、多くの日本人がもともと持っている美意識のような気がします」というような主張も見られるが、「日本独自」の「職人気質」なるものが盛んに称賛されている。それが、日本人ほど器用で繊細な民族はいないといった話しにまでなっている。

そういう「話題」だけが、先行しているように見える。食育基本法制定後もそうだったが、政府がそういう法律を制定すると予算がつく。それにのっかる「話題づくり」の人びとがうごめく。「ものづくり」もそういう感じで、「ものづくり日本」を錦の御旗のようにふりまわし、自己宣伝に励むような人たちが跋扈しているわけだ。ま、これは「定番」の現象といえるけど。

しかし、「基盤技術振興」は、そういうことなのだろうか。

技術や方法は、つねに具体的な課題を抱えていて、具体的に解決されなければならない。それが、「日本人気質」「職人気質」のことに還元されてしまい、日本人の優秀さみたいな話しになる。あとは「がんばろう」だ。浮ついた「話題づくり」ばかりが多い。

もちろん「ものづくり日本大賞」みたいなもので、現場で努力されている方を応援する必要はあるだろうけど、「基盤技術」の課題と「伝統」だの「日本人気質」だのとは分けて考えなくてはならないと思う。

「話題づくり」にのっかり、予算を取りやすい話しや予算の動くところへ動く「論者」「識者」たちの話などは、用心して扱わなくてはならないと思う。とかく「日本人がもともと持っている美意識」の話などは、いい気分になりやすいものだ。

おれの周囲にも、「ものづくり」に熱心な技術者や、その製品を応援して、日本の産業基盤をなんとかしなくてはならないと働いている人もいるけど、現場の抱えている問題と「美意識」などの「話題づくり」とのギャップは激しい。

2018/02/02「方法よりツキ。」は、そのあたりのことが気になって書いた。

「下町ボブスレー」の実態は詳しく知らないが、現場と「話題づくり」のギャップが気になるところだ。

「地域創生」でも、同じようなことがある。

「話題づくり」の人たちと彼らがふりまくキレイゴトの話しばかりが注目され、その人たちは、こんなイベントをやった、こんなシンポジウムをやった、それがメディアでこんなふうに話題になったとよろこんでいるのであるが、当核事業は「激励」や「称賛」をいただいているだけで、現場の負担は解決しないということはめずらしくない。こうなるとあとはツキしかない。

時間と金はそういうところに使うのではなく、地味に現場を支えている人たちの課題の解決のために使うべきだと思うが、それがなかなかできないのはなぜなんだろう。

終わってみれば、「話題づくり」の人たちが得しているだけで、そして「話題づくり」の人たちは、注目されているネタのほうへ流れていく。

もういいかげん、そういうことはやめにできないか。「話題づくり」の人たちには用心しよう。

それはそうと、昨今のグローバルな技術の課題は、「職人気質」で対処するようなレベルではないと思う。そのあたりのギャップも激しい。トラクターを使った農業経営と盆栽づくりのちがいとギャップ以上のものがある。それを同じ感覚で語っているのだ。

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