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2018/08/23

晩節。

知り合いの葬式に出席したら、ひさしぶりの知人と会った。10数年ぶりぐらいだろう。おれより10歳ぐらいは若いはずで、70年代後半から80年代、よく一緒に仕事をしたり飲んだりした。飲んでることのほうが多かったな。

自然に2人の共通の知り合いの話になった。

その一人に日本の最高学府の頂点と見られている大学の総長になった人がいる。おれたちは彼が助教授の頃からの付き合いだった。仕事上の付き合いで始まったのだが、偶然、彼の高校時代の友人たちと飲み友達だったこともあり、けっこう親しく付き合うことになった。気軽に研究室へ遊びに行くこともあったし、彼もときどき、おれたちの事務所に遊びに来た。

その先生は、専門の先端的なテクノロジーの分野でも実力が評価されていたし、専門分野以外にも見識があり注目を浴びていた。エラぶることもなく権威や権力に迎合することなく、人柄も風貌も爽やかで、人望があった。やがて教授になり学部長になった。

おれたちは、そりゃ当然だろう、あの人が学部長になるぐらいなら、あの権力と権威のかたまりのような大学も少しはまっとうなところがあるな、とか話あっていた。ところが、それどころか、総長になったのだ。

おれは先生が学部長になった頃には、それまでの仕事から離れていたし、東京からも離れることが多かったし、人脈に執着するほうではないので、付き合いは無くなっていたが、ほかの人たちは、まだいろいろ仕事をしていたようだ。

先生の方は、総長を無事に勤めあげたのちも、学術関係のさまざまな要職について活躍していた。学術畑ひとすじという感じだった。

ところが、ある日、世間で論議注目の的になっている、政府の有識者会議の責任者になったのだ。これには、おどろいた。まったく専門分野とも学術とも関係ないテーマなのだ。なんであの先生が?という感じだった。

しかも、いろいろな権力や権威が絡み合ってウサンクサイ政治的欲望が渦巻いていそうな会議なのだ。あの先生には、もっとも縁がない世界という感じだった。しかし、それだからこそ、責任者にされたのかもしれないとも考えられた。それにしても、断ることはできなかったのか。

葬式で会った知人は、まだ年賀状のやりとりぐらいはあるようだったが、あれこれ話した最後に、「晩節を汚したなあ」と、いった。

2人で、無言のまま「残念」という感じで酒を口に運んだのだった。

ま、こちらの思い入れが過剰だったのかもしれないし、晩節を「汚す」までにはいたっていないだろうとは思うが。先生の経歴のなかで、それだけが「異色」なのはたしかだ。

おれの人生は汚しっぱなしだから、晩節だからといって気にすることは一つもない。なさすぎるか。

思い切り高い評価を受けたのち、アカンベーと裏切るようなことをしてみたいものだと思ったが、もう無理だ。

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