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2019/05/13

自分の本が載っているからではない、食の「知」のための一歩、『フードスタディーズ・ガイドブック』。

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食の話は好みや趣味に偏りやすい。どう知識を身につけるか考えよう。その一歩。安井大輔編『フードスタディーズ・ガイドブック』ナカニシヤ出版 →「食と文化・社会、食の歴史、食の思想、食をめぐる現代の危機を知るための、初の総合的ブックガイド。食について考えるうえで欠かせない49冊を徹底紹介」。

ある編集さんから、『フードスタディーズ・ガイドブック』(ナカニシヤ出版)という本に『大衆食堂の研究』が載っていますよ、というメールがあったので、なんだろうと思いながら、大宮ジュンク堂へ行ったら一冊だけあった。

買って、とりあえず近くのいづみやに入ってビールを飲み、パラパラ見た。驚いた、これは、まじ学術的な「フードスタディーズ」つまり「食研究」のための本のガイドブックなのだ。

だってさあ、第1章の最初に登場するのが、クロード・レヴィ=ストロース様の『神話論理Ⅰ 生のものと火を通したもの』なんですよ。

表紙の腰巻には「食をめぐるブックガイド」「食と文化・社会、食の歴史、食の思想、食をめぐる危機を知るための49冊」」とある。本文は4章にわかれ、『大衆食堂の研究』は3章の「食の思想」のところにあるのだ。

おお、あのジャンクな『大衆食堂の研究』が、「食の思想」だと。しかも、評者が、藤原辰史さんだ。

ビールを飲みながら、自分のところだけ読んだ。藤原辰史さんのレヴューが、すごくおもしろい。『大衆食堂の研究』本書を読まずに、これだけ読んどいたほうがよい、という感じ。「読みこなす」って、こういうことか。自分が資料を読み評価するときの反省にもなった。

以前、『汁かけめし快食學』が出たあと、玉川大学の学生から、リベラル・アーツの授業で『汁かけめし快食學』がテキストになっているのだが内容について質問があるというメールがあった。

なんでだ。おれの本を大学の授業のテキストにするなんて間違ってるだろと思ったが、著した本人が想像もしてなかったことが起きるんだなあ。そうそう、おれはそのとき「リベラル・アーツ」って言葉を知らなかったから、なんじゃそりゃ、と思ったものだ。

『大衆食堂の研究』は出版したばかりのころ、本屋で中身を見て買ったのだが読むうちに自分の書斎に置くのもけがらわしくなったと怒って送り返してきた人もいた。同封されていた手紙から、プライドの高いインテリさんのようだった。

本も味覚も、本人の好みや興味と学習しだいということもあるからねえ。

それにしても、おれの書き方は、自分で「ラーメン構造」と名付けているもので、怒らないまでも忌避する人が多いだろうことは承知して書いている。嫌いな人は怒りが増す作用がある。

それに、学術関係の洗練された「専門知」と違い、おれは野良猫や野良犬と同じ「野良知」+「野暮知」なのだ。街の雑菌が書いていることですよ。

「はじめに」では、「本書の切り口」が三つあげられているが、その一つに「食研究の範囲自体をひろげる  必ずしも研究だけに収まらないものも広く含んで読みこなしていく」とあるから、そのあたりで、街の雑菌が書いたものも読みこなしていただけたのだろう。

『大衆食堂の研究』は1995年の発行で、遠い昔のことになったが、20年以上が過ぎて、こんなにおもしろいレヴューをいただけるとは、書いてよかったと、へそ曲がりのおれだが素直にそう思った。

ところで、このブックガイド、まだ全部を読んでないのだが、安井大輔さん編著で、24名の方が執筆している。パラパラと見たところ、49冊の選書は大変だったろうと思われる。

このブログにも時々書いているが、近年はインターネットで大学の紀要などに載った論文や卒論などが見られるし、食についてはいろいろな分野で研究がすすんでいる様子がわかる。一方、とにかく、飲食については、飲み食いして文章を書ければ誰にでも書けることもあって、インターネットも含め供給過剰気味に多いし、野放図状態で玉石混交のカオスだ。

「食」と簡単にいうが、体外の宇宙と体内の宇宙の接点にあり、もちろんウンコまで食の一環であり、幅広い研究分野が関係する。

研究者でなくても、食に関わっている人たち、もっといろいろな「専門知」や「野良知」が入り混じりながら食について考えていかなければならない現実だ。なにしろ「生活」の根本に関わることなのだ。そして、近年は食の様々な場面で、課題・難題が多い。狭い「学術村」や「出版村」などで権威・権力争いや派閥争いをしている場合じゃなく、まさに「知のネットワーク」が必要なんだなあ。

こういうガイドブックが出ることで、さまざまな「知」が混ざりあい、これからの食に関する見識の基礎が積み重なっていくのだろう。そういう出発点のような気がする。「あとがき」によれば増改訂もあるようだ。

こちら、安井大輔さんの「日記」に目次などの案内があります。『フードスタディーズ・ガイドブック』(ナカニシヤ出版、2019年3月)
https://daisukey.hatenadiary.jp/entry/2019/03/26/164525?fbclid=IwAR3qXnlcFzSs9ivJ-R2qKCD55E3NaIuW2o230-fpbnh9jiqA-CL11XPmmcY

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