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2020/11/12

画家のノート『四月と十月』43号、「理解フノー」連載24回目「生活の質」。

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「理解フノー」連載24回目が載っている『四月と十月』43号が届いてから一か月が過ぎた。

半年に一回の発行だから紹介が少々遅れてもかまわないだろう、とおもっているとドンドン遅れそうだ。そろそろ。

4月に発行された前の号の原稿の締め切りは2月10日だった。新型コロナはニュースにはなっていたが、「大騒ぎ」にはなっていなかったし、誌面には「コ」の字もなかった。

今回の締め切りは、「緊急事態宣言」下の暮らしを経過し、「新しい生活様式」が喧伝されている最中の8月11日だった。

あいかわらずいい味わいの、「四月と十月」同人の皆さんの文章にも、その反映が見られる。

同人の方が順次担当する表紙の作品は、山﨑杉夫さん。「表紙の作品について」で、「この春の自粛期間は、世の中の動きが一斉に止まり、なんとも非現実的に感じる時間でした」と書き出し「当たり前のように思っていた日常も、ちょっとした事ですぐに無くなってしまう事を忘れないようにと、自分にとって最も身近な日常の象徴である画材を切り絵で描いてみました」と。デザインは、毎度の内藤昇さん。

おれはといえば、まだ癌の気配も感じることなく、「生活の質」と題した今回、文章の最初のほうで2月上旬の頃を「新型コロナのことも自分の先行きもほとんど気にしていなかった」とふりかえっている。

けっこう目にすることが増えた「QOL=quality of life」つまり「生活の質」という言葉が、もとの使われ方とはずいぶん違ってきていることを知ったのは、癌のおかげだった。

とくにその治療法を決めるときには「QOL」が関係するし、癌に限らず「医療」と深い関りのある言葉だと知った。

それについては、まだまだオベンキョウ中で、知ったかぶりはできないのだが、知って思った範囲で原稿にした。

いまちょろっとツイッターを検索しただけでも、今日のツイートに「保温してくれるマグカップ買ったらQOL爆上がりした」というのがあった。おれが多く目にしてきた「QOL」は、だいたいこんな使い方をされていたし、一般的にもそうではないかと思う。

「より「上質」なイメージの消費を意味することが多く、クダラネエーと思っていた」

「ところが、いくつかある癌の治療法の選択のとき、QOLがものをいう。それは生産や消費の質のことではなく、「人間の尊厳」だと知った」

ま、だいたい、「質」などというと、「人間としてどうか」というより、生産や消費の場面でのことがほとんどになっている。それほど、「生活の質」は、「人間」から乖離し、産業やマーケティングに取り込まれているともいえる。

ところが「医療」は、そうはいかない。扱うのが人間の身体や生命そのものだ。

ほんとうは、産業だって、政治だって、たいがいのことは人間の身体や生命と関係あるのだが、認識は必ずしもそのようにならない。

とにかく、そういうことで、「生活の質」と向かいあい「人間の尊厳」について、よく考えることになった。

「苦痛や不安や抑圧などを取り除く/与えないことによる、生活の質の維持や向上だ」と書いたのだが、考えれば考えるほど難しい。

「言葉」の使い方ひとつで、それが損なわれる事態は日常ふんだんにあるし、事件になることも少ないが、むしろ表面に出ない人びとの中に蓄積されていくことがコワイ。

「健康のためなら死んでもいい健康主義」などは、そういう典型だろうが、飲食の分野では「よいこと」「おすすめ」として使われている表現が、苦痛や不安や抑圧をもたらすこともある。

いま展開されている「GoTo」キャンペーンなどは、その税金の使い方や経済効果やコロナ対策としての問題も多いが、消費を煽ることそのものが、ほんらいの「生活の質」にかなっているかどうかの問題があるだろう。

「経済か命か」なんていう言い方も、「健康のためなら死んでもいい健康主義」のようにタチが悪い。(「生活の質」を無視した医療については「病気は治ったが死んでしまった」という警句があるらしい)

まずは、そういうことに鈍感にならないように気をつけよう。

この連載には、キャプションをつけた写真を一点載せることになっている。下の写真を選び、次のキャプションをつけた。

「雲のように、あるときは抽象、あるときは具象。「人間の尊厳」は難しいが求めがいがある。」

2020/07/30
QOLとコロナ禍と癌。
http://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/07/post-ca4a86.html

2020/05/27
画家のノート『四月と十月』42号、「理解フノー」連載23回目「気分」。
http://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/05/post-db9a43.html

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