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2002/12/20

フレーバー系

「日本料理は敗北した」と江原恵さんは、その著書『庖丁文化論』で述べた。1974年のことである。「外からは、西洋料理や中華料理のチャレンジに負け、内にあっては、味覚のシュンを失うという決定的な事実がそれを証明している」

一面あたっているが、見落としていることがある。もっとも、それはもうちょっとあとにならないとわからないのだが。いまとなっては、はっきりしている。

1970年代は、まだ大衆食堂がたくさんあった。おれが仕事をしていた市ヶ谷の事務所の近所、五番町の交差点の近くにも、「ことぶき」や「すずめ」といった大衆食堂があって、昼も夜も利用していた。

そのころファミレスやマクドナルドやシェーキーズができて、ま、食品のマーケティングをオシゴトにしている関係もあって、ときどき食べにいった。そこには大衆食堂にはない味覚があった。

どれも、うまくはないのだが、まずいとは言い切れない。そういうものだった。これはいったいなんなのか。疑問におもった。その仲間にやがて、麻婆豆腐やエビチリなどが加わる。

しばらくしてから、80年ごろになってから気がついた、それは西洋料理でもなく中華料理でもなく、あえてカテゴライズするなら「フレーバー系料理」ともいうべきものだった。

それふうに、ある種のフレーバーを魅力にした料理群が、この時期に市場を拡大したとみると、じつにわかりやすい。やはり、おなじころから市場を拡大する、インスタント食品やスナック菓子も含めてみると、なおはっきりするだろう。

つまりはアジノモトをベースに、なんらかのフレーバーを効かしたというところに本質がある料理や食品である。そういうものが70年代から、どんどん市場を広げた。

そうみれば、こんにち、カレーやラーメンの分野で、グルメに支持されているらしい、「有名人ブランド」や「有名店ブランド」のインスタントモノが受け入れられる状況も理解できるし、また「有名人」や「有名店」が誇らしげに、そういうインスタントモノに手をだせる事情もわかる。

「日本料理はフレーバー系に敗北した」のである。

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