「日本料理は敗北した」か?
「日本料理は敗北した」と江原恵さんは、その著書『庖丁文化論』で述べた。1974年のことである。「外からは、西洋料理や中華料理のチャレンジに負け、内にあっては、味覚のシュンを失うという決定的な事実がそれを証明している」
当時、日本料理に対し疑問と危機感を抱いて江原さんと会ったおれは、たしかにそうだ、と思った。でも、まだ、カレーライスがあるラーメンがあるカツ丼があるサバ味噌煮定食だってあるじゃないか、とも思った。
つづいて江原さんは書く。「それでは、日本料理の未来史はどうあるべきか。……結論的にひとことでいうなら、特殊な料理屋料理(とその料理人)を権威の頂点とするピラミッド型の価値体系を御破算にすることである。家庭料理を料理屋料理に隷属させる食事文化の形態をうちこわして、根本的に作り変えることである。……料理屋料理を、家庭料理の根本に還すことである。その方向以外に、日本料理を敗北から救うてだてはないだろう」
チト納得できないところもあるのだが、ま、おおむね了であり、つぎの提言には、文句なしに賛成だった。
「このへんで、料理を通人ごっこの話題にまかせっぱなしにしておく態度を改めて、われわれはもう少しまじめに問題をとりあげてもいいのではないかと提言したい。」
あれから30年たとうとしている。すでにカレーライスまでがラーメンまでが、「通人ごっこ」の、いまふうには「グルメごっこ」ということになるだろうがその、餌食になってしまった。
「グルメ」とは、食や料理を「まじめ」に考えないひとのことだったのか?
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