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2003/03/06

平成のはじまり

昭和天皇が死んで平成になったのは、1989年1月7日だから、ほぼ昭和は1988年におわった。その年に、江原恵さんの『家庭料理を美味しくしたい』が刊行された。バブルという「超景気」が、いつまでも続くかのごとく錯覚するバブリーな世相は、このころから色濃くなっていく。

で、人びとはバブルのカネを握って、家庭料理から解放された。家庭でうまいものを食べようというより、「外食」に走ったのである。

カネを持ったときに本性があらわれる。日本人の家庭料理に対する本音があらわれたと見てよいだろう。家庭料理は貧しい生活、貧しい生活のしのぎの手段、という深層にあった意識が露呈した。と、みることができる。

食事を家庭でするか否かは、さまざまな歴史条件や環境条件によるのであって、いちがいにどちらであるべきだ、食事は家庭ですべきだとは言い切れない。戦前、日本でも、とくに大都会で、食事を家庭でするのは非効率という議論があった。香港やタイの朝食の外食風景は有名である。

しかし、そういうことは関係なく、日本では家庭料理は愛されていなかった、バカにされていたのではないだろうか。カネがないからガマンして、そこに甘んじていただけだから、カネを手にしたとき、まずそこから解放されたいと思った。「一億総グルメ」は、自ら愛する生活、充足や楽しみを自ら発見できなくなっていた結果であるように思う。

新宿のゴールデン街の地上げが活発になったのは、平成になってからだと思う。そのころ新宿のションベン横丁もかつてないほど衰退し、深夜、歌舞伎町の靖国通りは人であふれているのに、そこは閑散とし、そのうち板を打ち付けたままの店がふえた。人がいなくなると、本当にバラックなのだなあ、と、しみじみ思った。

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