ハンバーグとハンバーカ
料理の歴史は「何をどう食べてきたか」つまり「生活の技術の歴史」というのが、おれの考えだ。いうのは簡単、実際は、かなりめんどうが多い。まず、料理は食べるとなくなり、まったくカタチを残さない。だから歴史をとらえるのは、かなり難しい。さらに、名前はおなじでも違う料理は、めずらしいことではない。名前は、料理の実態、つまり技術に関係なくイメージで呼ばれるからだ。
たとえばハンバーグだ。大雑把な話、刻んだタマネギをゆっくり炒める→炒めてドロドロになったタマネギとミンチの肉ほか材料を混ぜ合わせる→焼く、これがハンバーグである。しかし、実際は、ミンチの肉ほか材料を混ぜあわせる→焼く、という例が少なからずある。とくに、いわしハンバーグや豆腐ハンバーグは、ほとんどこの類だし、ミンチ肉を使用する場合でも、ま、ようするに料理としては「つくね」をフライパンで焼くようなものが少なくない。だけどハンバーグというのである。いま、後者をハンバーカと呼ぶとしよう。
ハンバーカは、刻んだタマネギを炒めベースに使うことをしない。ハンバーグは、刻んだタマネギをドロドロになるほどゆっくり炒める。この技術は、日本になかったものだ。習慣的にないものは、習得するか、めんどうなら、今までの方法のバリエーションでやろうとする。で、つくねをフライパンで焼く方法でハンバーカができたのだが、これはハンバーグではない。ソースも含めれば、さらにずいぶん違う料理である。技術的にも味覚的にも、まったく違う。
ハンバーグは新しい技術の獲得であり、ハンバーカは従来の技術の系譜なのだ。
いまならハンバーグの歴史は、かなりリアルタイムでわかるから、こういう話ができる。しかし、すでにカレーライスの場合は、インスタントカレールウ以前が、わかりにくい。わかりにくいのだが、そもそもカレーライスが歴史になったのは、あの黄色いカレーライスが「国民食」といわれるほど普及したからである。もし、これがなかったら、たとえばハヤシライスと比較してみればわかるが、歴史にはならなかったかもしれない。
料理の歴史は、料理はつくって食べればなくなるものだから、その複製復元のくりかえしが歴史なのだ。もっと本質的な言い方をすれば復元複製の技術が料理の歴史なのである。料理書にあるレシピでも、それが繰り返し復元されないかぎり、料理の歴史にはならない。はたして、
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