朝食グルメへの道
そしてアヤシゲ新聞社のショクドーがやってきたのは糺の森の絶海の孤島に浮かぶ「朝飯島」だった。そこには理想的なフツウのメシがあるという。が、しかし、島に着くやいなやショクドーは直ちに捕えられ牢屋にぶちこまれてしまった。
「あああ、わたしは着いたばかりでなにもしていません」とショクドーがいうと、ナヨナヨニヤニヤ顔の島の役人の1人が言った「うるへえ、ここじゃ新聞社とテレビ局の人間は、食生活冒とく罪で牢屋へ入れることになっているのだ、だいたいおめえたち新聞記者は夜遅くまで飲んで、マットウに朝飯食べてないだろう、そのくせ、グルメ面して食べ歩きやがって」
朝食島では憲法によって、朝飯たべないものには人間的諸権利は、いっさい認められない。もちろんグルメたるもの、まず朝飯を食べなくてはならないのだ。ショクドーがぶちこまれたのは大きな木をくりぬいた独房だった。
そして一夜明けた朝、湯の入ったポットと茶の葉が入ったキュウスにチャワンが差し入れられた。ナヨナヨニヤニヤ顔の牢番がいった「ほら、朝食グルメの基本は、まず朝目覚めたら茶を飲むことだ」
ショクドーは朝のお茶が久しぶりだということに気づいた。一杯のんだ、じつにすがすがしい。馥郁たる茶の香りが、心地よく鼻腔をくすぐり、空気の味さえ違って感じられた。口に含んだ旨味は舌の感覚をやさしく刺激し喉へ落ちていく。こんなにおいしい味と気分を、どうして忘れていたのかと思った。なるほど朝茶は人間らしいフツウの生活の第一歩かと思った。
しかし、そのあとくると思っていためしは、いつまで待っても出てこない「あああ、めしはないのですかあー」ショクドーは怒鳴った。
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