ありふれたものを美味しく
7月2日に書いた1983年江原恵さんの『台所の美味学』は、「ありふれたものを美味しく食べる」がテーマだ。「台所の美味学」は「料理屋の美味学」「料理人の美味学」に対している。「料理屋の美味学」や「料理人の美味学」は台所の範にならないし、そういうものを範にしていては、日本料理つまり家庭料理は成り立たないというのが江原さんの主張だった。
「料理屋の美味学」や「料理人の美味学」は、よく聞かれるお題目「シュンの選び抜かれた新鮮な素材」に美味学の根本がある。しかし家庭の日常においては、それは不可能だ。ありふれたものを使って料理する。家庭の日常どころか、日常の外食店の料理においても、そうであるはずだ。
であるかぎり、「ありふれたものを美味しく食べる」が「台所の美味学」の根本にならなくてはならない。
が、しかし、80年代の「一億総グルメ」は、江原さんの主張とはまったく逆に、「料理屋の美味学」や「料理人の美味学」を範にし崇拝する方向へむかった。そして江原さんは86年『料理の消えた台所』88年『家庭料理をおいしくしたい』というぐあいだったが、ときすでに遅し。
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