アリガタミといふこと
男「日本にはさ、といっても、外国のことは知らないけど、”有難味”つまり”アリガタミ”という”味”があるのだよね」
女「そうよ、あなた知らなかったの、アリガタミのある男がモテルのよ」
男「いや、ま、そういうこともあるかも知れないけど、男女の問題じゃなくて。このあいだ、カレーライスは、かりに”伝来モノ”でもよいとしよう、しかし、日本の食文化においては汁かけめしであることには違いないのだという話を、あるひとにしたら、それはわかるけどそれでは”アリガタミがないね”といわれたのさ」
女「だから、そのことよ。あなたみたいに、実体だのなんだのと、本質的なことばかり言っていると、しらけてアリガタミがなくなるの。ウソでもイイカゲンでもいいから、アリガタミのある話をすると、みんなはよろこぶのよ。イイカゲンな低脳なヤラセのテレビ番組を少しはみならいなさい。カレーライスにかぎらないけど、ルーツや先祖や元祖を日本人がよろこぶのはね、アリガタミのためなのよ。それが汁かけめしじゃ、アリガタミがないでしょ」
男「しかし、オカシイことはオカシイだろ」
女「なんでもいいのよ、ウソでもいいのよ、アリガタミがあれば」
男「しかし、それじゃ歴史はゆがむし、だいいち正しい自己認識や社会認識ができないではないか」
女「だから、いいのよ、正しい歴史や自己認識や社会認識など、そんなにアリガタイものじゃないの、日本人にとってはね。そんなことどうでもいいの」
男「しかし、では、あの紙の箱に入った酒が、あんなにスーパーに並んでいるのは、どうしたわけ。紙の箱じゃ、さっぱりアリガタミがないと思うけど、売れているじゃないか」
女「だから、あなたはアリガタミがわかってないというの、箱にはね、いろいろな能書きが印刷されていて、アリガタミをつけているでしょ。そういうふうに、アリガタミが大事なのよ。中味、実体なんか、どうでもいいの」
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