アリガタミといふこと
男「開高健の『新しい天体』だけど、最後、パンツをおろしてかがみこむと、瞬間的、しかも全容において完璧な雪崩が音をたててほとばしりはじめた、というふうになるよね」
女「そうそう、あの終わり方、すごい。ブウ助にプウ太郎、びちゃ右衛門にビチ左衛門……」
男「そして食べまくったもの一切合財が喊声をあげて流出する」
女「有楽町のたこ焼き。神戸のたこ焼き。道頓堀のドテ焼き。たこ梅のサエズリ。ゴウボウ巻き。ひろうす。トリガイ。カマボコ。コンニャク。タコ。松江のスズキの奉書焼き。シラウオの踊り。アカガイ。イカ。津田カブ。出雲そば。カモの貝焼。コイの糸づくり。出雲ウナギ。めのはめし。アマエビ。四ツ谷の丸梅のウズラめし。シラカワ。マロン・シャンティ。北海道のホッケ。チュ。キンキン。メンメン。カジカ鍋。メフン。ジャガイモ。トウモロコシ。オヒョウ。サケ。毛ガニ。ホッキガイ。ホタテガイ。シシャモ。タラ。秋田のキリタンポ。十和田のヒメマス。とんぶり。八戸のキク。盛岡のドッコイジャンジャンのわんこそば……ああ、もう、いくつ並ぶの」
男「その調子で、あれって、ほとんど能書きのあるアリガタミのものなのだけど、アリガタミの言葉をあげてみてください」
女「とにかくね、アリガタミといったらね、本家、本場、本物、これ御三家でしょ。ヘヘェでしょ、あれは、それを食べ歩いて、最後クソにしてしまうという、もうこれは風刺といいましょうか皮肉といいましょうか」
男「アリガタミ言葉クソクラエ」
女「だから、それじゃあ、クリスマスだっていうのに、わたしをアリガタミのあるホテルへ連れて行けないでしょ」
男「クソクラエ言葉をあなたにプレゼントしたい」
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